アメリカ、ホテルや物価、交通事情その2-MATCH 松宮英範氏

 MATCHの松宮英範です。旅行会社に26年勤めた後、脱サラ・起業し、旅行業3種と宿泊施設のプロデュースをやっております。前回から続きアメリカの話です。気候・交通・物価・ホテル情報など前回お伝えしました。

 ロサンゼルスの後、訪れたのがサンフランシスコ。アナハイムやナパのリゾートホテルも視察してきたが、楽しく勉強になったのが、サンフランシスコでのAirbnb宿泊体験。読者の中にはまだAirbnbを利用したことがない人の方が多いことでしょう。読み方はエアー・ビー・アンド・ビーで、皆、エアビーと略す。私は今から10年前、2015年に始めて体験した。鎌倉の一軒家で、老夫婦が普通に暮らしている家の、今は子供が巣立ち空いている1部屋をエアビーに掲載していた。当時は少し流行り始めた頃で試しに家族で利用。おばあちゃんの家に遊びに来た感じで歓迎され、朝食も出してもらい、楽しく過ごした記憶がある。そんなには安くない価格で、老夫婦には、いい小遣いになるなぁと思ったものだ。

 今は民泊も届け出や認可が必要な宿泊ビジネスとして定着したが、その発祥がサンフランシスコである。創業者が自分たちの家を、旅行者やビジネス客に宿として貸出し、自宅にあった折り畳める空気ベッド=Air Bedと朝食を出したことが由来で、Air Bed and Breakfastを略してAirbnbとなる。今や世界200か国近くでサービスが提供され、日本でもTVCMもやっていてお馴染みに。私が経営するインバウンド用のコンドミニアムホテルや、プール・サウナ付きのヴィラなどは、Booking.comやExpedia、じゃらん・楽天・一休とともに、OTAの1つとしてエアビーにも掲載していて、一定数の集客を得ている。コンドミニアムホテルでは、20%前後、ヴィラでも8%ほどのシェアで、エアビーからお客様を迎えていて、当社の大切な集客装置の1つでもある。今回、ご本家のサンフランシスコでエアビー体験ができることを今回の出張の最大の目的でもあり大いに期待していた。

 前編でもお伝えしたが、日本でもアメリカでも都市部のホテルは、家族や友人で3人以上が1台ずつベッドを使いながら1つの部屋に宿泊するのは困難で、トリプルやエキストラベッドが運よく使えても4名以上で1部屋だと最早スイートルームしか選択肢がなく、ほぼ2部屋以上を予約するしかない状況である。水回りも貧弱で、普通のホテルでは、忙しい朝はトイレ・洗面渋滞が出来てしまうのが常、アメニティも乏しく何でも持参しないといけない訳だが、エアビーは別世界。実に選択肢が豊富で、2ベッドルームは当たり前だし、トイレ・シャワーが2つ以上という宿もたくさんある。今回、敢えて連泊せず、1泊ずつ異なる宿を選んだが、どちらも部屋は広く実に快適であった。

 1泊目はフィッシャーマンズワーフの近くのアメリカンハウス。サンフランシスコでは、一軒家は皆、隣同士が隙間なく、壁がくっついている古い木造ばかり。実に絵になるアメリカンな感じでワクワクしながら入室した。下階がオーナーハウスで、4階がゲストルームという構成で、私が昔体験したような老夫婦の部屋の1室を借りる訳ではなく、広い空間を自分たちだけで貸切で使える。驚いたのは、3階の階段前で靴を脱ぎ、スリッパに履き替え4階へ行く。実は、翌日の宿でも同じく、玄関で靴を脱いだのだが、アメリカでも日本式の方が部屋は汚れにくく清掃しやすいと認知されているのか、靴を脱がせての入室であった。

 部屋は実に広く気持ちがよい。リビング、ダイニング、キッチン、2ベッドールームの構成で、寝室の1つは、寝室内にダブルシンク・トイレ・シャワーまである。別途、バスルームが1つ(洗面・トイレ・シャワー)。さらにランドリールームでは、洗濯機&乾燥機まであって、⾧期滞在こそが相応しい。トイレは、最新の自動で開閉されるTOTOのウォシュレットだった!これが嬉しく、アメリカでは、遂にこのエアビーの宿でしかお見かけしなかった。バルコニーは2つ、サンフランシスコの美しい景色が望める。アメリカのお菓子、コーヒーやティーバッグ、浄水ポットの他、暖炉まであり、大型テレビのNETFLIXではアカウント設定されていて無料で視聴可能と、まさに至れり尽くせりである。

 エアビーの宿ではほとんど食事は提供されないので、地元のレストランへ行くことになる。フィッシャーマンズワーフで美味しいシーフードを頂戴した後、話題の「Waymo one」アプリで無人タクシーを呼んでみた。すぐに配車され、エアビー宿泊場所の住所を入力するだけで、完全な自動運転で送ってくれる。運転技術は素晴らしく、安全で快適、モニターに往来する車と人間も全部感知して写っているので、安全性も視認できる。エアコンの温度調節や音楽の選曲も自由に変更可能で、もっともっと乗っていたかったほど。10分の距離で24ドルだったが、ウーバーでは12ドル前後だったので、無人タクシーはまだ値段は少し高いようだ。現在は街中だけ走っているが、もうすぐハイウェイもOKとなり、いずれSFOまで送迎可能になるとのこと。台数も多く、数分で配車されるので本当に便利だった。こんな体験ができたのも、エアビー住宅に泊まって地元気分を味わおうとしたから。ホテルに宿泊していれば、無人タクシーも見るだけだったような気がする。色んな体験をしてみたい、と思わせる空気感がエアビーの魅力でもある。冒険心が出ちゃうのだ。

 2泊目のエアビーは、高級住宅地ノブヒルにあり、目の前がサンフランシスコ随一のラグジュアリーホテル「フェアモント」がある地域で、ロケーションもとてもよい。こちらも同様に、オーナーが下に住んでゲストルームを管理していて、かつ充実の施設は同じ。ユニークだったのは、地下室があり螺旋階段で降りると、寝室が現れること。アメリカ映画でよく出るあの地下室体験もできてしまう。フロントがないので、何かあったら困るのでは?と思うかもしれないが、今回の2つの宿に関しては、質問をエアビーアプリのチャットで投げかけると、全て数分で答えが返って来て簡単に問題解決。しかも自動翻訳で日本語でOKである。2泊目など、前のゲストが早くチェックアウトしたから午前中にチェックインしてもいいと、という親切ぶり。どちらもオーナーに直接会うことはなく、無人ホテルには違いないが、久しぶりに日本食が食べたくなったのでそれも尋ねると徒歩圏内の居酒屋を紹介してくれ、コンシェルジュ機能もバッチリなので、これは無人とも表現しにくい。きちんと肌感が伝わってくる。

 ついでに、アメリカのレストラン予約事情も少しご紹介すると、どこでもHPから簡単に予約が可能だ。クレジットカードを登録する必要もなく、キャンセルポリシーもない。名前・メアド・電話の登録だけで簡単に予約できるので、是非、試してみて欲しい。予約システムが搭載されているとさらに便利で、1日前に確認のメールが届き、「確かに行きます」とタップしたり、「やっぱり行きません」とキャンセルしたり出来る。日本ではノーショー問題など話題になったこともあるが、アメリカでは別に来なくても、他に客はいるから気にしない、という感じであった。まだまだ伝えきれないが、西海岸は他にもサンディエゴやシアトルなど魅力的な場所がたくさんあるので、またすぐにでも訪問したい。


松宮英範
株式会社MATCH代表。大学卒業後、大手旅行会社で26年勤務。主に富裕層向けの海外ツアーを手掛ける。50歳を機に、コロナ禍の2021年に独立起業し、ニッチなホテルのプロデュースと集客支援を行う。インバウンド向けのミニホテルや長期滞在型のコンドミニアムホテル、関東近郊のリゾート地で展開する一棟貸切タイプのラグジュアリーヴィラなど現在12施設の運営や集客に携わる。その他、集客にお困りの施設の宿泊コンサルタントや、神奈川県で第3種の旅行業登録、中小機構のアドバイザー、各種講演や大学の講師なども務める。大阪出身、横浜市在住。