好調インバウンド、風評がアジア市場影響 東南アジア市場は「別要因も」―村田観光庁長官会見

  • 2025年8月25日
村田茂樹観光庁長官

 観光庁の村田茂樹長官は22日の定例会見で、2025年7月の訪日外国人旅行者数が7月として過去最高を記録した一方、一部のアジア市場では地震に関する風評による影響で訪日客が大きく減少したことを明らかにしたほか、アウトバウンドの回復状況や宿泊予約サイト「Agoda(アゴダ)」を巡る問題、国内旅行消費の動向にも言及した。

 日本政府観光局(JNTO)の発表によると、7月の訪日外国人旅行者数が約344万人に達し、7月としては過去最高を更新。前年同月比では4.4%増となり、18カ月連続で同月比過去最高を記録するなど、インバウンド市場は引き続き堅調に推移している。とりわけ欧米や中東地域では高い伸びを示し、アジア市場でも全体としては微増となった。

 アジア市場の内訳では、香港で36.9%減、韓国で10.4%減と、一部の市場では大幅な落ち込みが確認された。観光庁では、SNS上で拡散された地震に関する根拠のない情報が、訪日旅行需要に悪影響を与えた可能性が高いと分析。こうした風評の拡大を防ぐため、今後も正確かつタイムリーな情報発信を海外向けに強化していく方針を示した。

 同様に、東南アジア諸国でも訪日客数が減少した国が複数見られたが、村田長官は別要因について言及。例として、タイ(9.1%減)では経済低迷による旅行需要の鈍化、シンガポール(13.6%減)ではLCCの減便と日本の猛暑、マレーシア(6.0%減)ではスクールホリデーの昨年からの時期のずれなど、国ごとの事情が影響したと分析した。一方、インドネシアやインドなど二桁以上の増加も見られており、全体としては回復基調が継続している。

 こうした訪日市場の動向と並行して、出国日本人数(アウトバウンド)も7月時点で約121万人となり、前年同月比で15%増となった。1月から7月までの累計でも781万人と、前年比14%増を記録している。ただし、コロナ前の2019年と比較すると回復率は約7割に留まっており、完全な回復には至っていない。村田長官は、物価高や為替の影響、さらには国際情勢の不安定さなどが回復の足かせとなっている可能性に言及。今後は「もっと!海外へ宣言」に基づいた啓発活動や、海外教育旅行の推進、若年層の国際交流支援を通じて、海外旅行への意識を高める取り組みを継続する方針を示した。

 国内旅行に転じると、2025年4~6月期の日本人国内旅行消費額は約6兆7988億円となり、前年同期比6.2%増と過去最高を記録した。旅行単価も4万6676万円と5.8%増で推移しており、特に日帰り旅行の消費が堅調だったことが全体を押し上げたかたちだ。宿泊旅行者数は微減となったが、観光・レジャー目的に限れば宿泊旅行も増加しており、物価上昇の中でも観光消費は底堅さを見せている。観光庁では、こうした消費の動きが地域経済への波及効果にもつながっているとして、引き続き地域振興と観光消費の拡大を連携して進めていく意向を示した。

 また、宿泊予約サイト「アゴダ」を巡る問題への進捗についても報告。同社では6月下旬以降、問題を起こしていた第三者サプライヤー経由の在庫取り扱いを停止し、AIによる事前監視体制を導入するなどの対策を講じている。村田長官は、改善策の公表後はトラブル件数が減少傾向にあるとする一方、販売停止以前の予約分に関しては引き続きトラブルの可能性が残ると指摘。今後も同社からの報告を受けながら、再発防止に向けた取り組み状況を注視していくとしている。