いまとこれから-MATCH 松宮英範氏

  • 2024年12月24日

 MATCHの松宮英範です。旅⾏会社に26年勤めた後、脱サラ・起業し、旅⾏業3種と宿泊施設のプロデュースをやっております。1年続いたコラムも今回が12回⽬、いよいよ最終回です。書く、という⾏為は本当に⼤変なことだと⾝を持って経験しました。貴重な機会を与えて頂き、⼼から感謝します。

 11⽉のインバウンド数が318万⼈(前年同⽉⽐30.6%増、2019年同⽉⽐30.5%増)と発表され、同⽉として過去最⾼を記録し、1⽉から11⽉までの累計が3337万⼈で、これまでの過去最⾼であった2019年の年間累計数を上回り、過去最多となりました。12⽉も300万⼈前後が⾒込まれている為、本年の年間訪⽇外国⼈の数は3600万⼈強となりそうです。

 コロナ前に⽴てた政府⽬標が東京オリンピック開催予定年であった2020年に4000万⼈、2030年は6000万⼈という数値ですが、⼤阪万博のある来年2025年は4000万⼈を軽く突破し、2030年の6000万⼈も視野に⼊ってきました。今年のアウトバウンドが1300万前後の⾒込みですので、その差は開く⼀⽅、⼤インバウンド時代の本格到来の年となりました。

 先⽇、とある⼤学でゲスト講師として招かれ、成⻑産業としてのインバウンド業界のことを話して来ましたが、失われた30年間しか知らない学⽣たちには、右肩上がりで勢いのあるこの数値は輝かしく映ったことでしょう。海外に⾏ったことのない若者も多く、⽇本のパスポート保有率17%は、英国の86%は別としても、お隣の韓国42%、台湾60%と⽐べて圧倒的に低く、⽶国も50%あるという事実に驚きつつその現実を複雑な⾯持ちでメモをとっていた最前列の⼥学⽣は何を思ったでしょう。

 実際、私の経営するインバウンド向けの宿泊施設もこの秋以降、さらに活況となり東京の施設は軒並み稼働率90%を超えており、⽀援している新規開業の施設も、オープンしたばかりでほぼ満室が続く状況になっています。そんな好環境を聞きつけ、ホテルに興味を持ち開業したい⽅々が増え続けています。当社にもプロデュースやコンサル依頼が多く寄せられますし、既存オーナー達が2棟⽬、3棟⽬へとプロジェクトを進めている状況ですので、今後どんどんホテルは増え続け、近い将来、飽和状態になることも案じられていますが、インバウンドはまだまだ伸び、8000万⼈いや1億⼈もあり得ると夢あるも都合のいい数字で、周囲は盛り上がり続けています。

 1⼈社⻑で会社規模の拡⼤をそこまで望んでいない私としては、この活況にどこまで乗っていけばいいのか⼤いに悩んでおります。正直、せっかくのご依頼を断わざるを得ない状況がこんなにすぐやって来るなんて想定は全くなく、コロナ禍のあの苦境を思えば、仕事を断るなどあっていいのか、と忸怩たる思いに駆られておりますが、創業5年も経たない当社でこの事態、いかにインバウンド関連と宿泊業が⼤盛況なのかがお分かり頂けると思います。

 そうは⾔っても、好奇⼼旺盛な私としては、来年取り組みたい新規事業として、数百年続く古⺠家再⽣プロジェクトと街おこしや南国リゾート地での体験プログラムなどがあり、井の中の蛙にならない様、他業種との経営者の会やコミュニティへの参加も怠らないように、そしてまだ早いかと思いながら来年55を数える年齢を考えると事業承継の問題も徐々に考えていかないとならず、年の瀬に⾊々思い巡らせる訳であります。

 皆さんも年末、とんでもなくお忙しい⽇々かと思います。やりたいことが出来ず、やりたくないことをしなくてはならない気持ちは26年サラリーマン続けた⾝としてよく理解できます。まぁ、でもとにかく今年も終わります。新しい 1年が必ず来るというは素晴らしい世の仕組み。今年は⽇の並びが良く⻑い休暇が取れる⼈も多いと思います。⼼⾝ともにリフレッシュして、どなたも良い年をお迎えください。


松宮英範
株式会社MATCH代表。大学卒業後、大手旅行会社で26年勤務。主に富裕層向けの海外ツアーを手掛ける。50歳を機に、コロナ禍の2021年に独立起業し、ニッチなホテルのプロデュースと集客支援を行う。インバウンド向けのミニホテルや長期滞在型のコンドミニアムホテル、関東近郊のリゾート地で展開する一棟貸切タイプのラグジュアリーヴィラなど現在12施設の運営や集客に携わる。その他、集客にお困りの施設の宿泊コンサルタントや、神奈川県で第3種の旅行業登録、中小機構のアドバイザー、各種講演や大学の講師なども務める。大阪出身、横浜市在住。