ニューヨーク市観光会議局ヒーリーSVP、日本市場回復予想は「2026年」 FIT苦戦も教育旅行に注力
ニューヨーク市の5つの行政区の観光推進などを担う機関「ニューヨーク市観光会議局」は先月28日~30日、現地パートナー11社や現在同局のオフィシャル航空会社パートナーを務めるユナイテッド航空(UA)を含む代表団が参加したセールス・ミッションを大阪と東京で開催。旅行業界関係者向けにセミナーや商談会を実施し、連携強化を図るとともに新たな商品造成へ魅力を訴求した。
国内・海外含め2019年に過去最高水準6660万人の旅行者を迎えていたニューヨーク市。2023年には6220万人(19年比93.4%)まで回復しており、今年2024年は6480万人(同97.3%)に達する見込みだ。
一方、日本人旅行者は2019年35万4000人、2023年19万7000人(19年比55.6%)で、今年も24万5000人(同69.2%)に留まると想定されている。インタビューに応じた同局ツーリズム・マーケット・ディベロップメント部門シニア・バイスプレジデントのマキコ・マツダ ヒーリー氏によると、日本人旅行者数は2025年に28万4000人(同80.2%)を見込んでおり、2026年にコロナ前の数字へ戻ると予想している。
海外では、メキシコやインド市場が既に完全回復を遂げており、日本市場の早期回復が期待されるところ。コロナ以降の旅行動向では「体験」がキーワードになっており、「昔からのスタンダードなニューヨーク観光ではなく、ローカル体験やより目的意識の高い旅行者が増えている」(ヒーリー氏)。また、全体として物価高などの影響をあまり考慮しない富裕層の回復が早いという。
教育旅行に注力、業界向けには視察旅行を来年開催
ヒーリー氏によると、日本市場で比較的回復が進んでいるセグメントの1つが「教育旅行」。円安などの懸念もあるなか、教育にはある程度お金を掛けたいとの考えが影響しているようだ。また、長期のリピーター獲得に繋げることを目的に、ニューヨーク全体としても教育旅行には注力している。今年8月には、学生旅行に特化した団体「SYTA(Student & Youth Travel Association)」のカンファレンスを10年ぶりにニューヨークで開催。
現地では、アメリカ自然史博物館に昨年新設された「ギルダー・センター」やハドソンヤード、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ディズニーなど様々なサプライヤーが教育旅行向けのプログラムを展開している。
一方、日本市場で苦戦しているのはFIT。例として、教育旅行は回復が進むものの、1月~3月頃に期待される大学生らの卒業旅行の動きが鈍いという。
一部メディアでは、ニューヨーク市内のホテル代が高騰しているとの情報も見受けられるが、これに対しヒーリー氏はマンハッタン以外のエリアへの宿泊分散を訴えており、その他の観光素材も含めたデスティネーションとしての魅力を発信していく考えだ。また、レジャーにおける対策としては、1月~2月頃のオフシーズンや日曜日INなどの渡航をオススメした。
同局ではtoC向けに、グローバル観光キャンペーン「With Love+ Liberty, New York City」をスタート。日本市場では今年10月から来年3月までを期間に、屋外デジタル広告などを活用して観光促進を図る。
toB向けには、オンライン・トレーニングプログラム「トラベル・トレード・アカデミー」の日本語提供を続けるほか、現地での商談会などを含めた視察旅行を来年開催に向けて計画を進めている。ヒーリー氏は「来日は叶わないものの、光る素材を提供する小規模事業者が沢山いる」と述べ、「ニューヨーク市に本来ある観光素材のダイバーシティを商品に取り込んでいただけるようにしていきたい」と語った。