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髙橋会長「旅行業が発展・成長するため」の5点発信、旅行業更新の救済措置廃止で注意喚起-JATA定時総会

  • 2024年6月20日

 日本旅行業協会(JATA)は19日、第68回定時総会を開催した。髙橋広行会長は冒頭で会員企業で不正事案が相次いだことに対し謝罪するとともに、「社長自らが先頭に立ち、コンプライアンスはすべての業務に優先するんだいう姿勢を社内の皆様に示し続けていただきたい」と発信した。

 続けて髙橋会長は今後「旅行業が発展・成長するため」とした下記5つのポイントを語った。

JATA髙橋広行会長

海外旅行の復活なくして
旅行業界の復活なし

 これは髙橋会長が昨年から再三にわたり訴えてきたこと。同氏は、一部旅行会社による航空座席の長期買い取りや他業種からの富裕層戦略エキスパート招聘といった創意工夫を評価しつつも、「海外旅行の復活は個社や業界だけの力では成し得ない」と述べ、総会に出席していた観光庁髙橋一郎長官に対し継続的な支援を求めた。

 発表された今期のJATA事業計画では、パスポート所持率の向上、若者の海外旅行促進、地方空港における国際定期路線就航に向けたチャーター支援など、官民連携したアウトバウンド拡大を国策に反映させるとともに、翌年度以降の政府予算計上に繋げるべく政府・与党への提言を継続する方針で、「海外旅行の復活に向けて全員で邁進していきたい」(髙橋会長)と、その意気込みを語った。

高付加価値化とSDGs

 「新たな出会いや感動を提供できるのは我々旅行会社」と発言した髙橋会長は、高付加価値化は収益性の改善のみならず旅行会社の存在価値向上に繋がると発信した。

 一例としたアドベンチャートラベルは「日本の文化・自然を生かし収益性に加えつつ、地域のサステナビリティと収益性を実現できる非常に大きなポテンシャルを決めたビジネスモデル」と評価。また、SDGsへの取り組みも欠かせないとし、昨年度から開始した「JATA SDGs アワード」は継続して行い、これらを通し好事例を周知するとともに、業界内での取り組みを強化する。

協調と共創

 3点目は、JATAが昨年度に運用を開始した「観光産業共通プラットフォーム」や「JATAビジネスマッチングサイト」に見られる業界内での協調と共創の促進。

 髙橋会長は、これらの取り組みにより会員間での協業に繋がった事例も出てきたと述べ、協調・共創の促進が人手不足で苦しむ業界内の生産性や付加価値向上に寄与すると話した。

休み方改革

 国内マーケットの活性化、総需要拡大を目的に髙橋会長が重要と話すのが休み方改革。具体には、愛知県が全国で初めて導入した「ラーケーション」の取り組みだ。学び(ラーニング)と休暇(バケーション)を組み合わせた造語で、保護者等とともに行う校外学習が目的であれば年間3日まで学校を休んでも欠席扱いとならないもの。

 髙橋会長は、同制度が広がれば旅行会社にとっては需要拡大のメリットが、宿泊施設などの観光事業に対しては需要平準化による稼働率向上・雇用安定化をもたらし、引いてはオーバーツーリズムの解消にも繋がるとの考えを示し「是非それぞれの立場でご協力をいただきたい」と集まった会員らへ呼びかけた。

人手不足対策
将来の担い手育成

 最後は人手不足への対策。髙橋会長は「(旅行業は)国の成長戦略の柱である観光産業を支える大きな一翼を担っている」と示したうえで、「多くの優秀な人材を確保していくためには、旅行業が魅力あるビジネスであるということを発信し、賃金や労働環境などの改善を図ることが必要」と訴えた。

 今後は、会員各社に対し経験者採用サポートの継続や就職マッチングを実施するほか、日本観光振興協会との連携による大学・専門学校へ進学する前の学生に向けた観光教育を通じ、将来の担い手づくりにも着手する方針を示しており、「将来の業界の発展に向けて、諸課題の解決に果敢に取り組んでまいりたい」と締めくくった。

"旅行業更新の救済措置廃止で注意喚起
不正に対する再発防止策 取り組み進む"

 総会にて行われた昨年度の事業報告では、池畑孝治事務局長が旅行業更新手続きの弾力的運用が間もなく終わることを受け、改めて注意喚起を行った。旅行業登録の更新の要件となっている基準資産額をコロナ禍前の決算書で算定するもので、観光庁は来年3月にてこの救済措置を廃止することを既に通達している。

 JATAは今年3月に開催した会見で、相次いだ不正事案を受け再発防止策を示していたが、本総会では各種取り組みの実施予定時期を明らかにした。まず、青森市でのコロナ関連事業にて談合の温床となった「地区委員会の廃止」は7月1日以降に実施する。

 続けて、意識改革を目的とした各種研修については、受託事業契約に特化した研修を7月31日に、階層別のコンプライアンス研修は9月に行う。また、旅行業取扱管理者研修へは7月実施分よりコンプライアンス科目を導入する予定だ。なお、新たな不正事案に対する除名処分等含めた懲戒規定は、既に5月10日の理事会で承認され施行済みとなっている。

 これらのJATAによる取り組みに対し、観光庁髙橋長官は「再発防止策が厳正に順守されているかどうか、今後しっかりと監督していく」と同日開催の定例会見でコメントしている。