Trip.com グローバルカンファレンス開催、テック・カスタマーサービス強化へ注力
Trip.com Groupは5月末、上海にて「Envision 2024」グローバル・パートナー・カンファレンスを開催した。「Charting the Next Chapter of Our Growth Together(さらなる成長へ、次のチャプターを共に描く)」とのテーマで開かれた同イベントには日本を含む50以上の国・地域から1600人以上のサプライヤーが参加した。
同イベントにはジェーン・スンCEOら経営陣が登壇。同日にはスンCEOによるメディアインタビューも実施され、今後の戦略を明らかにした。
業績は好調をキープも
インバウンドに成長の余地
スンCEOがカンファレンスで示した同社の昨年の業績によると、GMVは1600億米ドル、グローバルでの成長率は前年比100%、アウトバウンドのホテル及び航空券の予約・収益は前年比300%増を記録。
今年の第一四半期も勢いそのままに、昨年同期比でGMVは56%増、ホテル・航空券の予約数約100%増、APAC成長率80%増で、欧州では鉄道部門が大きく伸長したことを受け成長率900%増を記録するなど好調ぶりが窺える。
続けて登壇したブーン・シアン・チャイ副社長も、航空券予約の実績が既にコロナ前の状況に戻っていると復活をアピール。更に、今年上期の航空便検索データによる目的地トップ10では、日本がトップを記録し、以降タイ、韓国、香港、シンガポール、マレーシア、米国、マカオ、豪州、英国と続いたと発信した。
一方で、成長の余地を残すのが中国へのインバウンド観光。今年初めの同社の中国インバウンドの予約数は昨年同期比226%増と回復基調にあることは間違いないが、現地メディアによると今年1月~2月の訪中外国人数はコロナ前の約半数に留まっている。要因の一つとなるのがビザの問題だが、昨年以降制限緩和の動きが出てきている。日本については未だ制限は解かれていないが、スンCEOは72/144時間トランジットビザ免除制度の活用について触れるとともに、「(同社が)中国と世界の架け橋となることで、訪中増加に注力する」姿勢を示した。
テック領域と
カスタマーサービス強化に注力
スンCEOが今後の戦略のポイントとしたのが、「テック分野への投資」や「カスタマーサービスの強化」。
特に同社においてはAI活用が顕著。AI旅行プランナー「TripGenie」では、旅行者の要望に沿ってオススメの宿泊先や旅程を提案することでカスタマーエクスペリエンスの向上を図っている。
昨今では、一部サプライヤーによる直販強化の動きも見られるが、スンCEOは「引き続き包括的な旅行サービスをワンストップで提供する。この便利さは大きな利点」と自信を見せたが、その上でポイントとしたのがTripGenieなど、ビッグデータとAIを活用したパーソナライズされた旅行提案。同社によると、昨年第4半期と比較し同サービスの日次アクティブユーザーは70%以上増加し、質問数も約50%増加、導入以来既に100万件以上の問い合わせに対応するなど活用が進んでいることが示された。
なお、現在TripGenieの対応言語は日本語を含む9言語だが、6月までにイタリア語、オランダ語、マレー語への対応を予定する。
続いてカスタマーサービスでは、AIにより初回問い合わせの内60%を解決することができており、従業員への負担軽減に貢献している。一方で、スンCEOはAIのみに頼ることなく「リアル対応」によるサービス強化を約束。現在同社は世界中でカスタマーサービス担当者を1万人以上確保しており、「(ユーザーからの)質問は通常AIにて対応するが、通話でのサポートを希望する場合はコールから30秒以内に対応する」と強調した。
その他、20年の開始以降これまででGMV14億ドルを記録している「ライブコマース」分野では、ホテルなどのパートナー企業の紹介に使用するコンテンツにAIを活用。提供される施設写真などの素材から簡単にクオリティの高い紹介映像を作成している。
新興市場拡大へ
"ローカライズ"が鍵
グローバルOTAとしてそのプレゼンスを着実に高めている同社だが、今後の成長戦略の一つとして、スンCEOは中東、アフリカ、中南米などの新興市場での拡大に注目していると明かし、これらの市場は「潜在的な成長力を秘める」ことと「新しいイノベーションの可能性がある」ため魅力的だが、同時に不確実性からリスクも高いと懸念する。
新興市場での拡大で鍵としたのが「ローカライズ」。これまでもプラットフォーム上に各市場毎独自の機能を追加するなど、特有のニーズに応える姿勢を見せており、今後注力する中東ではドバイに新しいオフィスを開設。同地域のニーズに応えるべく製品及びサービスのローカライズを進める。
加えて、カタールやサウジアラビアの政府観光局らとグローバル協定を結ぶなど、現地パートナーシップも積極的に進めており、スンCEOはこれらの取り組みを「同地域への国際観光を促進するという私たちのコミットメントを表している」と語った。