富良野に開業「ノゾ ホテル」、地域一体となった体験プログラムで通年の集客図る
昨年12月北海道富良野にマレーシア資本のパークウッドホテルズ富良野が「ノゾ ホテル(Nozo Hotel)」をオープンした。旭川空港から車で約1時間、JR富良野駅から車で約7分の立地で、78の客室にレストラン、バーラウンジ、ベーカリー、ショップ、ジム、キッズスペース、大浴場、イベントスペースなどを有する。また、スキー場へは徒歩3分のため館内にはスキーロッカーも設置されている。
同じく道内のスキーリゾートと言えば「ニセコ」の印象が強いなか、何故富良野に開業したか、その狙いや今後の展開について運営するNJWインターナショナル代表のナタリア・ウィルソン氏にお伺いした。
"ポテンシャル秘める"富良野
パークウッドホテルズ富良野代表取締役のリン・チン・ショーン氏は開業に伴うプレスイベントで、富良野の魅力について「夏は十勝岳を背景とした鮮やかなラベンダー畑、冬は2つの峰を結ぶ富良野スキー場が賑わうなど、色とりどりな体験が楽しめる」と評価。同時に「まだまだ数多くの隠れた魅力が眠っており、数年前のニセコのように富良野にもユニークで豊かなライフスタイルを過ごせるデスティネーションへと進化する準備が整っている」と、そのポテンシャルの高さについて触れている。
ウィルソン氏も同様に富良野を「今後観光分野での成長が期待できる」エリアと見ている。富良野市が公開している観光客入込推移によれば、23年度の宿泊者数はコロナ前最多を記録した17年度比87.8%の48万2413人と復活には至っていないものの、その内外国人宿泊客数は最多を記録した18年度比122.7%の13万479人と最多数を大きく更新している。
ウィルソン氏によると同ホテルのターゲットとなるのは、冬期はスキー・スノーボードを目的に来訪する近隣アジア諸国やオーストラリア、アメリカ、ヨーロッパからのインバウンド旅行者、冬期以外はインバウンドに加え北海道や日本各地からの国内旅行者で、今後も訪日市場の活況が予想されるなか、同エリアにて日帰り(=宿泊しない)旅行者の多い7月8月の時期に宿泊してもらうために、デスティネーションとしての魅力や、季節ごとの楽しみ方をアピールできるかがカギとなりそうだ。
また、訪日国内ともに訴求するのは団体ではなくFIT。同ホテルは21年12月に閉館した「ニュー富良野ホテル」を改修したものだが、ファミリー、カップル、一人旅、友人グループなど多様な宿泊客がくつろげるよう暖炉のあるラウンジ、男女別のスパ、キッズルームを設置するなど、新築ホテルのようにリノベーションを行った。
同氏は「(富良野は)北海道屈指の農産地としても魅力」とも語っており、館内のレストランでは富良野・美瑛の旬の食材を使用した各国の料理や鮨、鉄板焼きなどを提供しているという。
"地域一体"となった魅力訴求
プレスイベントでショーン氏が富良野の魅力とともに強調したのが地域への協力や貢献。「地元コミュニティや関係者と緊密に協力して富良野全体の価値を高めていきたい」と話しており、地域に根ざしたホテル経営を進める考えを示した。
ウィルソン氏も、主にウィンターシーズン以外の魅力訴求を目的とした各種アクティビティの展開について、地域との連携の重要性を示しており、実際に同ホテルでは先月末に「夏のデジタルデトックスプログラム」を発表。地域サプライヤーとの協力により、宿泊者に対しサイクリングやラフティング、カヌー、ハイキングなど多様な体験プログラムを提供する。
また、今年9月には同エリアで音楽やグルメ、キャンプ、アクティビティなど地域の魅力を伝える新たなイベント「bonchi fes. FURANO 2024 meets FEELD GOOD FES.」が開催を控える。観光客を呼び込むため、同ホテルだけでなく地元の複数団体が協力するなど盛り上がりを見せており、年間を通した観光客の獲得と"日帰りさせない"地域一体となった取り組みを通し、更なる活況を見せるか注目したい。