熱海市 ビジネス需要獲得へJTBと連携 需要平準化取り組む、宿泊税活用も

  • 2024年2月5日

 熱海市が、JTBとの連携によるビジネス需要の獲得を目指す。2003年~2010年および2012年~2019年の熱海の月別平均観光客数は、ピークとなる8月は35万7824人となる一方で、6月は19万6043人。また、休前日と平日では3倍以上の差があり大きな乖離が生じている状況だ。これに対しビジネスのほか、教育、訪日需要の取り込みで平準化を図り、交流人口、関係人口の拡大に取り組む。

 先月24日には、首都圏からのビジネス利用促進を目的とした意見交換会を実施。齊藤栄熱海市長や、JTBの法人営業個所長らが出席した。齊藤市長は冒頭、週末や長期休暇などに観光客が集中する熱海の現状について「昭和の観光モデルから脱していない」と述べ、需要平準化や旅行単価の引き上げによる給与水準の改善が進まない限り優秀な人材の確保が難しく「観光業の未来は先細りする」と危惧した。

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齊藤栄熱海市長

 ビジネス需要の獲得推進に至った経緯について、熱海市観光建設部の立見修司次長は2022年度の観光客数が約250万人に留まった点に触れ「行動制限もなく全国旅行支援があったなかで観光客数はコロナ前の約8割ぐらいで、これまでと同じモデルでは回復できない」と述べ、今後の取り組みを通しまずはコロナ前年間310万人が目標となる。

 昨今ではワーケーションの推進による個人客誘致に取り組む地域も見られるが、熱海では企業単位での研修やMICE、芸術祭や婚活等のイベントをメインターゲットに据え、「熱海で学ぶ。熱海で創る~Find innovative insights~」とのキャッチフレーズのもと、都心からのアクセスの良さや、ワークショップにも適する海や山などの自然環境を活かし、「いかに『ビジネス利用は熱海』というブランディングを進められるかが重要」(齊藤市長)となる。

 意見交換では、JTB側から「スタートアップ支援」「投資家、インキュベーターの誘致」「大型コンベンションセンターの新設」などの提案がされたほか、企業研修などでは1泊2食ではなく1泊朝食のみのニーズが高いため、旅館などでの1泊朝食実現へ支援を求めた。

 これに対し熱海市側は、「スタートアップ支援」は静岡銀行からも同様の提案があり積極的に推進したい考えを示した一方で、「大型コンベンションセンターの新設」に関しては「土地が限られる」とのことから難色を示した。ただ、500人規模のホール新設は検討されており、早ければ来年4月からの導入を予定する宿泊税を活用し建設を進める可能性があるという。また、1泊朝食の要望については、熱海市としても既に「泊食分離」の取り組みを進めていると回答した。

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JTB本社で実施された意見交換会

 今回の連携により既に実施されているものも含め、「運営事務局の開設運営」「都内大手企業向けセールス」「熱海ビジネス利用促進イベント「熱海DAY」の開催」「専用HPの制作」などが進められる予定だ。