HIS、22年度決算は売上2.2倍、新年度は「全社一丸で黒字化」へ-士気高揚へパーパスやロゴ刷新も
エイチ・アイ・エス(HIS)の2022年10月期(2021年11月1日~2022年10月31日、2022年度)の決算で、売上高は1427億9400万円、営業損失は479億3400万円などとなった。
これらは2022年度から採用した新会計基準をもとにした数値で、旧会計基準で算出すると売上高は前年比119%増の2603億5000万円、営業損失は154億6500万円改善の485億9200万円の赤字、経常損失は136億3900万円改善の496億6000万円、純損失は398億4900万円改善の102億円となる。
この増収は渡航制限の解除や全国旅行支援などが追い風となったもので、旅行事業だけで1375億円(320%)増。ただし旅行事業の営業損益は、主力の日本発海外旅行が停滞しているため、コスト削減も進めたものの90億円改善の292億円の赤字となった。
海外旅行の取扱高は第1四半期で88%増だったが、第2四半期以降は276%増、770%増、1001%増と改善してきているところ。HIS代表取締役会長・グループCEOの澤田秀雄氏は、「先月ヨーロッパに旅行してきたが、ヨーロッパではすでに欧米の方がたくさん旅行されているというのが実感。大体欧米から6ヶ月前後遅れて日本の海外旅行が増えてくるのではないか」とコメント。
実際同社のなかでも海外の旅行子会社は2019年水準に戻しつつあり、Group Miki Holdingsのみ57.8%減となったものの、Red Label Vacation、Merit Travel、Jonviewの3社22.4%減、28.1%減、20.1%減と大きく回復しているといい、澤田氏は「(日本発の海外旅行も)来年には本格的に戻ってくると感じている。全社一丸となって黒字化を目指していきたい」と意欲を語った。
旅行以外の事業の売上高は前年比でテーマパークが69億円増、ホテルが44億円増、九州産交が26億円増。ホテルは1年間でソウル、ニューヨーク、タシケント、宮古島に新規開業して合計施設数を40軒とした。
グループ全体の従業員数は、コロナ前の2019年度に1万8393人、2021年度に1万2450人、1万849人と今年度も数を減らした。また旅行業の営業拠点数も2019年度には529だったが、2021年度に328、2022年度に289となっている。
「事業構造・マインド・財務」を改革
今後については、事業構造、マインド、財務の3つの改革に取り組む。このうち事業構造では、HISでしか体験できない旅と持続可能な観光に焦点を当てた「旅行事業の深掘り」のほか、自治体からの事業受託や事業領域の拡大などによる「非旅行事業の開拓」、さらに「DX深化」、「店舗の多機能化」、「組織のスリム化」を掲げる。旅行事業と非旅行事業の利益比率はコロナ前で8対2だったが、中長期的には1対1を目指す。
また、マインド改革では、創業の原点を再確認するとともにグループ全体の意識を統一するためパーパスとして「『心躍る』を解き放つ」を設定。反映した新しいロゴも来週発表する。この狙いについて代表取締役社長・COOの矢田素史氏は、「コロナ禍の社外出向や特別休業で社員がバラバラに勤務することになり、原点の42年前を思い出し再確認して1万人超のグループ社員の気持ちを一つにしてアフターコロナに向かう」ことだと説明した。
2023年度の海外旅行売上高はコロナ前の5割に
海外旅行と国内旅行の売上高は、2019年度で海外が3953億円、国内が520億円だったが、2023年度にはそれぞれ2000億円と900億円を目指し、2024年度に2900億円と1100億円、2025年度に3600億円と1200億円へと伸ばしていく。なお、2025年度の合計4800億円のうち店頭での販売比率は20%程度を見ており、法人が25%、残りの55%はサイト経由の電話やビデオチャット接客を含むオンラインとなる想定だ。
海外・国内以外では、訪日は2019年度が296億円、2023年度から2025年までが66億円、150億円、300億円とした。また海外での旅行事業も、2019年度が2965億円、2023年度以降が2000億円、2400億円、2700億円としている。
なお、説明資料では、非旅行事業を含めて現状と今後の見通し、取り組みのポイントなども細かく示されている。