【フランス現地レポート】ソフトモビリティがパリの風景を変える サイクリングブームとSDGs
サイクリングブームと、欧州にまたがる雄大なサイクリングルート
わずか数年前まで、フランスでサイクリング休暇を過ごす人の数は限られていた。最近、自然や地元の人々により近づけるディスティネーション、環境に配慮したオーセンティックな体験を求める人々が増えており、コロナ禍によってこの傾向が一層加熱し、フランス全土でサイクリングが爆発的に普及した。ミシュランも「スロー・ツーリズム」をテーマに、週末を楽しむための52のディスティネーションを紹介する自転車用のロードマップをリリース。結果として、フランスを今や世界一の自転車王国ドイツを凌ぐようなサイクリング観光大国に押し上げたという。
それを裏付けるかのように、フランス自転車環境協会のパートナーである4社:ラ・スカンディベリック(La Scandibérique)、ラ・ヴェロディセー(La Vélodyssée)、ラ・フロー・ヴェロ(La Flow Vélo)、ラ・ヴェロマリティム(La Vélomaritime)のルート委員会が共同アプローチを開始し、国内および欧州を縦断あるいは横断するスケールの大きい4つのサイクリングルートを発表している。
La Scandibérique:北から南へ縦断する1700km
ベルギー・フランス北部の草原や森林・牧草地の風景から南部のランド地方の魅力的な中世の村へ、パリやボルドーを経由してスペイン国境の大西洋沿の町まで、都市、田園、山の合間を縫うように多彩な風景を満喫できる。豊かな自然と文化遺産を360°のパノラマで堪能できるのが、このスカンジベリクの特徴。
La Vélodyssée:大西洋沿いの1300km
ノルウェーからポルトガルまで1万1000kmを結ぶ、大西洋岸ルートのフランス側ルート。英仏海峡に臨むブルターニュの港町ロスコフからスペイン国境の町アンダイに至る道筋で、ヴァンデ地方のブルトン湿原、ランド地方の森、大西洋の島々を経由する限りなく海に近いルート。陸と海の狭間に素晴らしい風景が繰り広げられる。
La Flow Vélo:南西部の美しさを発見できる290km
緑豊かなペリゴール、コニャック、ロシュフォールを経て、エクス島の海岸まで、南西部の「フランスで最も美しい村々」、ブドウ畑が点在する緑豊かな田園が何キロメートルも続く風景を堪能できるルート。
La Vélomaritime:英仏海峡から北海まで1500km
ブルターニュの港町ロスコフからベルギー国境に近い港町ダンケルクに至る、フランス北部の海沿いのルート。世界遺産モンサンミッシェルやエトルタ、D-Dayビーチなど、思わず息を呑むようなパノラマが待っている。
ツール・ド・フランス2022とツール・ド・フランス・ファム
今年の夏はヨーロッパ各地で記録的な高温が続き、異常な干ばつ状態と相まって熱波や火災が続く極端な夏となったが、27カ国から総勢176名のサイクリストが参加し、7月1日から24日、ツール・ド・フランス2022が開催された。大会史上初めてデンマークで開幕し、4日目にフランスに到着。前半にアルプス、後半にピレネーを超え、デンマーク、ベルギー、フランス、スイスの4ヶ国を24日間全21ステージに渡って走り抜けた。今年の総合優勝は、昨年総合2位と新人賞に輝いたデンマークのヨナス・ヴィンゲゴー・ラスムッセン(Jonas Vingegaard Rasmussen)。山岳賞(le maillot à pois)もあわせて獲得した。
一方、7月24日に男子と入れ替わりで、33年振りに復活したツール・ド・フランス・ファム(女子)2022が開幕。144人が参加し、7月31日まで8日間にわたって熱い女の戦いが繰り広げられた。エッフェル塔をスタートし、未舗装道路、山岳ステージ、石畳セクター、スプリントと様々な見どころが用意され、シャンゼリゼでフィニッシュした。優勝は第7ステージから圧倒的な独走で首位を守ったオランダのアネミエク・ファン・フルーテン(Annemiek van Vleuten)。フランスでは、最終日のTVの視聴者数は約330万人(瞬間最大視聴数約510万人)を記録。きわめて高い視聴率を残した。
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