人と人、人と地域を結ぶインバウンド事業、復活に向けた準備を加速-ノットワールド代表取締役 佐々木文人氏
サブスクサービスでガイドのスキルアップを支援
国境が開けば、訪日客は一気に戻ってくる
自社ツアーの造成、ガイド育成・派遣、地域観光プロデュースなどインバウンド旅行市場で事業を展開するノットワールド。ノット(knot)とは「結び目」の意味。「結び目を創出することで、国内外の相互理解を促進し、世界平和に貢献する」をビジョンに、人と人、人と地域を結び、地域を幸せにすることを目指している。コロナ禍で投資リソースの配分も見直し、本格的な訪日再開に向けて着々と準備を進める同社の戦略とは。代表取締役の佐々木文人氏に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
佐々木文人氏(以下敬称略) 愛媛県松山市の生まれですが、父が転勤族で、3歳の時に横浜に移りました。父が宮城県、母が山口県の出身で、お盆と正月に宮城と山口へ車で帰省していたので、旅のワクワク感はそこで覚えたと思います。
大学卒業後、保険会社に就職。4年弱働いた後に外資コンサルティング会社に転職し、そこで約4年間勤めました。将来的には独立したいと思っていましたが、何をするべきか見つからず、結婚を機に退職し、1年間の世界旅行に出ました。旅の途中で中学校からの同級生の河野有と合流。彼も1年間の世界旅行に出ており、南米、トルコ、スペインを3ヶ月ほど一緒に旅しました。日本にいる時から彼とは頻繁に会い、互いにやりたいことを話していましたが、この旅でもそれを模索していました。そして帰国後の2014年に2人でノットワールドを立ち上げました。
佐々木 コロナ前は、訪日個人旅行者向けのガイド付きツアーを企画造成・催行していました。ガイドと一緒に巡ることで、より日本を楽しんでもらおうというもので、そのサービスが事業全体の8割ほどを占めていました。その内6割強はOTAから、3割が自社サイト、残り1割がホテルのコンシェルジュなどからの集客でした。他社より、ゲスト満足に拘ったツアーの企画・運営を行っていました。
このほか、ツアー事業での強みを活かし、地域の観光推進の支援を展開してきました。インバウンドが消滅した後は、この事業に力を入れています。また、現在、インバウンドの本格的な再開に備えて、ガイドの育成とネットワーク強化にも注力して取り組んでいるところです。
佐々木 2020年のコロナ初期、業績は急落しました。しかし、色々なご縁があり、1年経った頃には売上を増やすことができるようになりました。決算ベースだと、赤字を計上したのは1回だけ。ただ、その赤字額は大きいですが。
ガイドの人たちも仕事がない状況が続きました。6月10日からインバウンド観光客の受け入れが一部再開されましたが、先が見通せないなかで、気持ち的にも不安定な状況が続いているようです。
佐々木 創業当社は知り合いのエンジェル投資家からの投資を受け、コロナになってからは銀行から運転資金の調達はしましたが、基本的には自前で進めています。しかし、資本業務提携や外部投資家、ベンチャーキャピタルからの調達については、選択肢の1つとして、今後積極的に検討していきたいとは思っています。
会社の将来については、自分たちでIPOを行うのか、どこかの企業と合流するのか、どちらでもいいと思っています。その前に、自分たちが実現したい世界をどのように実現していくかを考えています。インバウンド市場はかなり疲弊していますが、資金が潤沢な会社は、再開した時に、ものすごいパワープレーを仕掛けてくるのではないかと思っています。それに対して、私たちが竹槍だけで戦っても潰される恐れがある。創りたい世界は実現できないのでは、という危機意識は持っています。そのなかで、世界観の近い他企業と一緒になることで、私たちのビジョンが早く実現できるかもしれません。幅広に検討していきたいと考えています。
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