専門性で生き残る:寺院参拝と「アショカツアーズ」のビーエス観光

国内の団体参拝からインド旅行へ拡大
手配旅行に注力、めざすは「中堅優良企業」

-現在のビーエス観光の事業規模や売上高などをお聞かせ下さい。

水野氏 水野 東京本社のほかには、北は札幌から南は広島まで6つの営業所があり、このうち東京本社と大阪営業所が団体参拝に加えてアショカツアーズの商品を扱っている。社員は45名で、そのうち5名がインドを担当している。

 年間の総取扱高は約17億円で、人員ベースでの内訳は国内の参拝旅行が75%、海外が25%程度となっている。海外の25%のうち15%はインド、残り10%はその他の仏教にゆかりがある国への団体旅行で、インドについてはパッケージツアーとオーダーメイド型の手配旅行が半々という状況だが、近年はオーダーメイド型の割合が増えている。

-利用者の年齢層や傾向などは

水野 国内の参拝旅行は圧倒的に60代と70代のシニア中心で、大半がリピーターとなっている。一方でインドは、30代や40代のカップルに女性同士など、比較的若い層が多く、50代も珍しくない。勿論、国内の団体参拝の顧客の一部はインドの仏跡も訪れる。国内の寺院参拝の延長線上にあるものとして「一生に1度はお釈迦様の聖地を見に行きませんか」と呼びかけている。

-長年に渡り事業を継続できている理由は何でしょうか

水野 国内の団体参拝については、営業マンがそのまま添乗員として同行することが大きく、添乗した旅行はそのまま次の旅行の営業の場となる。また、営業マンは寺院に詳しく、寺院の方々とも綿密にコミュニケーションを取っているため、参拝をスムーズに運ぶことに長けており、寺院とお客様の両方に喜ばれている。

 インドに関しては、私自身がインドに詳しいことと、アショカツアーズ担当の5名もインド好きが揃っていることが強みだ。一般の旅行者については、近年は旅の目的を「コト消費」に置く方が多いので、例えば「ヨガの道場に滞在したい」「アーユルヴェーダを体験したい」といった相談にしっかりと応えることができる。そのほかにも紅茶や鉄道、ハイキングなど、テーマ性のある旅をオーダーメイドでいくつも造成することができる。

-新規の顧客はどのように開拓していますか

水野 基本的には国内の参拝もインド旅行も、リピーターの口コミによる新規客が多い。インドなど海外の仏跡巡礼を数年おき、あるいは毎年実施するグループも多いので、無闇に営業の手を広げる必要はないと考えている。

-インド以外の国へのツアーや、インドからの訪日旅行を取り扱う考えはありますか

水野 団体旅行では、仏教にゆかりのあるスリランカやネパール、中国などを少しは取り扱っているが、アショカツアーズについてはインドに特化したブランドと考えているし、その方が戦略的に良いと思っている。訪日客の受け入れは負担が大きいので、取り組む予定はない。

 アショカツアーズでは、社員にはパッケージツアーではなくオーダーメイド型の手配旅行に注力するよう求めている。その方が、手間はかかるが利益率は高いし、「複雑で細かい要望にも応えられるインド専門の旅行会社」というブランディングにつなげることができる。ちなみにパッケージツアーはあくまでも「モデル商品」と考えているので、無闇に料金を下げる気はない。