LCCの急拡大とその効果、日本版LCCの可能性も
▽LCCの与える影響-「運賃」
急速にLCCが拡大した市場で何が起きるか。まず航空運賃の値下がりが進む。前項(▽「LCC」とは何か)で触れた特徴の通り、LCCは徹底的にコスト削減と効率化を進め、それを運賃の引き下げにつなげようとする。
FSC側には、「実際に安い運賃は一部に限定されており、受託手荷物や機内食など、最低限必要なものを揃えると、FSCと同じ水準、もしくは高くなる場合すらある」と批判する論調もあるが、鷲津氏によると、例えばシンガポール/クアラルンプール線の運賃は、平均400シンガポール・ドルから100シンガポール・ドルに引き下がった。また、米国のサウスウェスト航空(WN)の運航路線について、その路線と条件が近く、WNが就航していない路線を比べると、就航している路線の運賃は46%割安であるとの研究結果もあるという。
JQでも、平均してFSCの運賃を約40%下回る。ブキャナン氏は「例えば、既存の日本の航空会社による今週の東京/札幌間の最安値は約3万4000円。同程度の距離のメルボルン/シドニー線と比較すると、JQの運賃は1万2000円から」と指摘した。ピーチの井上氏もかつて「大手航空会社の半分程度」をめざす考えを示し、エアアジア・ジャパンについても、全日空(NH)代表取締役社長の伊東信一郎氏が記者会見で「(既存航空会社の)半分なり3分の1なり」をめざすとしており、日本でも航空運賃が大幅に下がっていく可能性が十分にある。
なお、JQなど例外を除いて、一般的にLCCは長距離路線を得意としない。「長距離の旅行は高所得者層向き」(バトン氏)である点や、フィーダー路線の有無、レジャー、ビジネス、貨物の需要取り込みが重要性を増し、セカンダリー空港でない主要空港が望まれる点などが課題になるという。