アイルランド、MICEの新素材
MICEデスティネーションとしてのアイルランド
2010年9月、ダブリン市内のリフィ川沿いに「コンベンション・センター・ダブリン」が完成する。5階建ての建物は、中央に総ガラス張りのアトリウムを配した斬新なデザインが特徴。アイリッシュの建築家ケビン・ローチが手がけたもので、2755平方メートルのスペースのある大型フォーラムや、2000席ある吹き抜けの劇場をはじめ、多数のホール、ミーティングルーム、ボードルームを擁している。スタッフやサービスなどのソフトにも力を入れ、国際レベルのイベントを手がけていく予定で、これによりダブリンはビジネス・デスティネーションとしてのイメージを高めることになると期待を集めている。
アイルランドは日本から遠く、冬は寒いというイメージを抱いている人も多いだろう。しかし、アイルランドは治安、気候、アクセスともに、ヨーロッパの中でもMICEデスティネーションとしての条件をかね揃えている。日本からは、ヨーロッパの主要都市を経由して同日にアクセスすることが可能。治安の良さもヨーロッパ随一で、質の高いアイリッシュ・ホスピタリティによる環境が旅行先としての付加価値を高めている。また、海洋性気候により年間を通じて温暖であり、かつシャワーのような霧雨によって常に美しい緑を湛えている“エメラルドの島”なのだ。
ユニークなグループ向け施設とプログラム
グループ向けのイベント会場となる施設も各地に点在している。いわゆるイベント施設やホテルの付帯施設のみならず、中世の城やオペラハウス、邸宅や庭園、名門校のキャンパスといったユニークな場所も多く、随所でアイルランドらしさを演出できる。
例えば、1425年に建てられた古城バンラッティ城では、当時の食事やエンターテイメントが楽しめる中世の晩餐会が人気だ。アイルランドを代表する黒ビール、ギネスの博物館「ギネス・ストアハウス」でビールを片手にダブリン市内を一望したり、トリニティ・カレッジの由緒あるライブラリーでパーティを開いたりと、バリエーションも豊富。アイリッシュ・オープンの開催地でもあるアデア・マナー・ホテル&ゴルフ・リゾートで、ゴルフやクレー射撃、アーチェリーといった屋外アクティビティを取り入れるのもユニークだろう。また、小さなグループなら、郊外のマナーハウスでクッキング、ワイン・テイスティング、アイリッシュ・ダンスといったプログラムをアレンジするのもお勧めだ。
独特の自然景観と文化でオリジナリティを
アイルランドといえば、観光でもビジネスでも外せないのは、独特の自然景観とそこに根付いたケルト文化の遺跡だろう。六角柱の石柱が創り出す奇観ジャイアンツ・コーズウェイや先史時代の古墳が残るボイン渓谷の両世界遺産をはじめ、迫力の断崖絶壁が8キロメートルに渡って続くモハーの断崖、石灰岩の丘陵バレンなど見どころは尽きない。
また、ケルト文化と融合したキリスト文化の遺跡も数多い。3つの島からなるアラン諸島は先史時代の遺跡が島中に残るケルト文化の中心地の1つ。モナスターボイスやグレンダロッホなど、教会跡や修道院遺跡には、4メートルから5メートルもの高さを誇るハイクロス(円環付きの石造十字架)やラウンドタワーと呼ばれる尖塔などを見ることができる。
また、黒ビールやアイリッシュ・ウィスキーに代表されるアイリッシュ・フード、リバーダンスに代表されるアイルランドの伝統音楽やダンスなど、独特の文化で個性的なプログラムを組むことも可能だ。利便性、オリジナリティともに優れたアイルランドは、新たなMICEデスティネーションとして注目に値する。
▽コンベンション・センター・ダブリン
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