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カナディアン・ロッキーの魅力を見つめ直し滞在型リゾートとして新たなマーケットへ

カナダ西部のアルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州にかけて連なるカナダディアン・ロッキーはこれまで、多くの日本人観光客が周遊型の観光としてこの地域を訪ねてきた。さらに、東部と組み合わせた急ぎ足のツアーは、カナダの定番商品として知られている。しかし、このエリアを訪れる欧米人の多くは、滞在型のリゾートを目的とする旅行者が多い。それは、心身ともにリラックスできる新鮮な空気や、ダイナミックなアクティビティを経験させてくれる自然環境がそろっているからだろう。「リゾート＝ビーチ」と捉えがちの日本には、これまでとは異なるマーケットに向けた可能性がある。（取材協力：フェアモント・ホテルズ・アンド・リゾーツ、エア・カナダ）

日本人マーケットへの期待感、リゾート滞在をアピール

フェアモント・ジャスパー・パーク・ロッジ（JPL）のディレクター・オブ・セールス＆マーケティングのルーク・サンダーランド氏は、「近年、アジアからの旅行者の動向に変化があると感じる。モノステイとしてのリゾートの提案も可能では」と提案。「家で過ごすような感覚でリラックスしながら、国立公園のなかで過ごす貴重な経験をして欲しい」と語る。

フェアモント・ホテルズ・アンド・リゾーツ（フェアモント）のディレクター、グローバル・セールスである井原宏治氏は最近の日本人旅行者の傾向として、グループの規模が縮小しつつあることとFITが増加していることをあげる。ただし、日本人の平均宿泊数は約1.5泊で、リゾートホテルであるものの滞在型とはいえないのが現状だ。

　しかし、フェアモントでジャスパー、バンフ、レイクルイーズの3軒のホテルを担当するPRディレクターのロリー・グランド氏は、バンフ・スプリングスについて豊富なレストラン、ショップなどに加え、「夏はハイキング、ゴルフ、スパなどのアクティビティが充実し、冬はクロスカントリーや犬ぞり、ショッピングなどが楽しめる」と、滞在に事欠かない施設とアクティビティをアピールし、3軒のホテルを組み合わせたリゾート滞在を提案する。最大の特徴は、一人ひとりの要望に答える過ごし方ができるホテルであることを強調し、コンシェルジュがきめ細かいニーズに応え、ゲストの要望を実現するよう努めていることを紹介。また、館内の言語は日本語を含む多数の言語に対応している。同3軒のホテルを担当するセールス・マネージャーのサベロ・マカリマ氏は「2005年以降、宿泊数は下降しているものの、日本人はアジアで最大のマーケット。将来への期待は高い」として、今後もFITに対応する日本人ガイドの新サービスをはじめ、最善のサービスを提供していく考えで、日本市場に対する期待が随所で感じられる。

広大なロッキーエリア、楽しみ方はさまざま

JPLのサンダーランド氏は、特にアジアからのファミリー層を含む旅行者に対し、ビーチリゾートのように、ゆっくり過ごして欲しいと訴える。ただし、遠方から訪れる日本人であれば、「現実的には最低3泊程度しながら、他のロッキー内の都市や列車、ドライブの旅と組み合わせてはどうか」と提案する。ロッキーのハイライトである「アイスフィールド・パークウェイ」など、周遊旅行でも利用される地域の観光素材の実力は折紙つき。これらの人気素材を組み込み、滞在型の旅行を十分にアレンジできる。

　特に、山岳地帯特有のすがすがしい癒しを強調したいなら、リゾート内のスパをすすめたい。フェアモント・バンフ・スプリングス内の「ウィロー・ストリーム・スパ」は、広さ3万8000平方フィートの施設内にバンフの山並みを望む屋外・屋内プールを備え、ハンガリーのミネラル分を含んだ温泉を利用。トリートメントのメニューは、アロマオイルのソフトなマッサージから、指圧、スポーツマッサージ、さらにバンフのミネラルを含んだスクラブ、野生植物、メープルシュガーなどのオイルを使ったカナダらしさを感じさせるものまで多様な種類が用意されている。壮大な自然に抱かれたスパ施設での滞在は、心と体を開放しリラックスさせてくれる。マッサージは、男女の施術師がいるため、この男女のリクエストもしておくと良いだろう

　また、アクティブ派には、リゾートのガイドツアーがお勧め。フェアモント・シャトー・レイクルイーズでは、日本語によるガイドツアーを実施しており、1時間程度で湖畔を案内するツアーから、終日のハイキングガイドまでコースはさまざま。特に、レイクルイーズを訪れるなら湖畔のガイドがおすすめ。カナダの開拓史に関連した山岳リゾートの歴史や、それにまつわる人々のエピソード、周辺の自然環境などがわかりやすく語られる。こうしたガイドをつけるだけで満足度が高まるだろう。同時に、旅行者に対して現地を説明する大切さを改めて感じた。リゾートとしての旅行商品を提案するなら、再度、カナディアン・ロッキーの魅力を見つめ直し「どんな過ごし方ができるか」を丁寧に伝えることが重要だ。

「憧れのホテルに泊まる」という要望にこたえるために必要なこと

アルバータ州観光公社アジア太平洋地域担当ディレクターのモリーン・ライリー氏は、「カナディアン・ロッキーには、何度来ても新しい発見がある」として、心を開放したリゾートエリアのアピールを続けていく方針だ。近年、アジア太平洋地区から訪れる観光客はオーストラリアからの需要が強いが、「日本人は重要なマーケットであることにかわりない」と語る。

　今後のプロモーションとしては、まずはアクティビティの豊富さを浸透させ、そのすばらしさを重点的にアピールしていく考えだ。さらに、ヨガやスパなど、心と体の健康やリラックスできる場所であることに加え、ホテル滞在やダイニングなど上質なサービスがあることを訴求する。こうした活動を通して、グループが多い現在の全体数に個々のニーズに応えることができるFIT型での満足度を高め、旅行者を増やしていく考えだ。

　ただし、日本の旅行会社に注意したいのが、リゾート施設の利用の仕方。特に日本人には「憧れのホテル」とイメージされるフェアモントには、同じカテゴリーの中にもさまざまなタイプの客室がある。同ホテルのマカリマ氏は、「ひとつのホテルに5ツ星から4ツ星の部屋があるようなもの。顧客の予算や滞在の目的、期間などによって、さまざまな過ごし方を提供できる」と、旅行者の個性に対応するさまざまな形態があることを強調し、日本の旅行会社にフェアモント・ホテルの特徴の活用を訴える。たとえばリゾートをホテルライフととらえる宿泊者には、景色の良いスイートを、屋外でのアクティビティをメインに楽しむ宿泊者には予算を抑えて滞在日数を増やせる価格の部屋も設定しているという。手配する旅行会社は、こうしたカテゴリーや部屋の特徴を理解した上で顧客の要望、企画商品の趣旨にあった詳細までのリクエストが必要だ。それが、「憧れのホテルに泊まる」という要望に的確に応えることなるし、逆にその配慮や説明が不足すると旅行者の満足を得られない結果になってしまうだろう。

日本人がロッキーエリアにMICEを目的にした旅行は、まだ少ない。直行便がないことや移動距離など、解決すべき課題が多いのは事実だが、大型の宿泊施設や旅行者の要望に応えるプログラムが豊富で、北米ではメジャーなMICEデスティネーションとなっている。現地でみつけた、MICE手配のヒントとなる素材を紹介しよう。