【コロナに負けず】LGBTQ市場の可能性-アウト・ジャパン取締役会長の小泉氏

コロナ禍の今こそLGBTQへの取り組みを
旅行需要の回復速度に期待

COVID-19の影響からの需要回復についてどうお考えですか
IGLTAのロゴマーク。団体は1983年創立で、約80ヶ国から旅行会社やホテル、航空会社などが加盟している

小泉 ある程度状況が落ち着けば、LGBTQは率先して旅行するだろう。需要は比較的早く、大きく戻る可能性があると考えている。

 09年からSKトラベルコンサルティングでLGBTQ向けのランドオペレーター「アウトアジアトラベル」を、15年からアウト・ジャパンでLGBTQツーリズムのコンサルティングをしているが、お客様が言うのは「どんな状況でも行きたいときに旅行に行く」ということ。アウトアジアトラベルでは、今年の3月から5月に多くの予約があった。結局はCOVID-19の影響でキャンセルになったが、最後の最後まで「飛行機が飛ぶなら行きたい」と粘るお客様が多かった。今でも次にどこに行けるか提案してほしい、というお問い合わせをいただいいている。それだけ旅行したい方が多い。

 IGLTAが今年の4月中旬から5月中旬にかけて、世界中のLGBTQ約1万5000人を対象に旅行意欲の調査をしたところ、「20年度末までに快適な旅行ができるか?」という質問に対し、LGBTQの66%は「そう思う」と答えた。一方、同時期に実施した米国の別の旅行調査会社による調査をいくつか見ると、LGBTQ以外のストレートの方が「そう思う」と答えた割合は40%から60%程度だった。このことから、LGBTQの方が旅行意欲が強いことが見て取れる。

 LGBTQは比較的時間を自由に使える人が多く、お金に余裕があるため年に数回の海外旅行がライフスタイルになっている。そういう方々は世界各国の入国制限が緩めばすぐにでも旅行を開始すると確信している。

ポストコロナにおいて、LGBTQ市場はどのように変化するとお考えですか

小泉 しばらくは感染症対策に気をつけることが前提となり、LGBTQの全世界でのパレードや、数百万人が参加する大規模イベントはオンラインでの開催となるだろう。このためイベント需要は減少すると思うが、その一方でFITや小グループの旅行が増えるとみている。

 小グループについては、参加者が別々の国のケースが流行すると思う。例えばカナダの旅行会社が日本での12名のツアーを実施する場合、カナダ人に加えブラジルや英国など全世界から旅行者が日本に集まる。旅行会社としては世界中から参加者を募る方が集めやすいし、参加者としては同じセクシュアリティで楽しめ、新たな友人もできる。そういう10日から14日間くらいの旅行はすでにトレンドだが、COVID-19による旅行自粛の反動により、今後はものすごく増えると思う。

 デスティネーションとしては日本が選ばれ、LGBTQの訪日旅行者数が増えるとみている。LGBTQは安心して過ごせる旅行先を選ぶ傾向にあるが、日本については政府のCOVID-19対策が一定の評価を受けている。もともと衛生状況は良い国なので、「日本だったら平気」と思っている人はいるだろう。

 IGLTAが7月30日に全世界のメンバーや当事者に向けたオンラインイベントを開催し、各国の旅行情報を発信したが、今回日本も初めて招待された。日本政府観光局(JNTO)や大阪観光局の皆様とパネリストとして参加したが、聴講者からチャットやメールをたくさんいただき、日本への関心の深さを実感した。ポストコロナは日本にとってはチャンスとなる可能性は高い。