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トップインタビュー:ドイツ観光局アジア豪州地区統括局長ケッテルハーケ氏

16年は都市と自然をアピール
周辺諸国と協調、欧州の魅力を訴求

-今年はパリのテロ事件の影響が長引くことが懸念されます

ケッテルハーケ 「欧州は安全です」と明言することは難しいことだ。しかし、ドイツを含む欧州全体で、国民や観光客を守るためにセキュリティが強化されていることを強調したい。我々は通常通りの日常生活を送り続けている。

 また、中東からの移民問題に対しては、旅行産業にポジティブな影響を与えると考えている。ドイツ人は他国の人々や宗教、文化に対しオープンで、移民に対し「ようこそ!」と出迎える姿勢を見せており、そうした姿勢は旅行者を歓迎する姿勢に通じるものがあるだろう。

 欧州は依然として旅行者にとって興味深い旅行先であり、支払った旅行代金以上の価値を得ることができる、高品質なデスティネーションであり続けている。今後は欧州の観光局が協力し、数年後を見据えた上で、欧州全体をさらに興味深い旅行先となるようプロモーションをおこなっていく必要があるだろう。

我々の日本市場における競合相手である他の欧州諸国は仲間でもあるので、他国の観光局と共同でプロモーションを展開していきたいと考えている。例えばオーストリアやスイスとは、周遊旅行の促進をはかり、合同でのプロモーションをおこなっていく予定だ。


-16年のプロモーション方針を教えて下さい

ケッテルハーケ ドイツを含む多くの国々は60歳以上のシニアを主要なターゲットにしている。シニア層は旅行する時間も予算もあり、今後も増加していくだろう。しかし、年金問題などで将来はどうなって行くのか不透明だ。そこで、我々は新しいターゲットとして、学生や仕事を始めたばかりの新社会人などの若者層と、女性層にドイツの魅力を訴求していきたいと考えている。

 若者層はシニア層ほど旅行費用に余裕が無いし、就職活動をはじめてしまうと十分に旅行する時間もなくなってしまうため、ターゲットとしては難しい。しかし、我々は将来を見据え、若者層に対し、ドイツを旅行先としてイメージ付ける方法を常に模索している。時間がない若者層に対しては特に、1ヶ国ではなく、他国と組み合わせた周遊旅行を訴求していきたい。

 女性層に対しては、伝統的な工芸品やドイツ独自の商品のショッピングに加え、彼らの関心が高い、歴史的な都市への訪問をアピールしていく。ドイツには中世からの石造りやレンガ造りの建物が数多く残っており、そうした建物をリノベーションして現在も人々が住み、レストランやショップなどに活用している。そうした歴史のある可愛らしい街が沢山残っている。

 例えば首都ベルリンの近くにあるポツダムは、オランダ人入植者による赤レンガの建物などがあり、他の都市とは異なる雰囲気が楽しめるほか、ユネスコの世界遺産に登録されたサンスーシ宮殿もある。東ドイツのエアフルトは小さな街だが、第2次世界大戦の爆撃を免れたことから14世紀からの中世の古い街並みが残されている。また、南ドイツのネルトリンゲンは隕石の衝突したクレーターの上にできた街で、円形の城壁に囲まれており興味深い。

 ローテンブルクなど、日本で有名なロマンチック街道の街も良いが、こうした中規模で歴史的な街にも足を運んで欲しい。