星野リゾート、都市観光ホテルに注力-星のやバリは16年夏開業へ

  • 2015年10月14日

星野リゾート代表取締役社長の星野佳路氏  星野リゾートが開催した2015年下期の定例記者発表会で、代表取締役社長の星野佳路氏は、都市観光を目的とした宿泊者が利用するビジネスホテルなどの「都市観光ホテル」を、同社の第4のカテゴリとして確立したい考えを示した。同社は7月、ANAクラウンプラザホテルの金沢、富山、広島、福岡の4施設を買収したところ。星野氏は「10年、15年の長期的なスパンで見て、都市観光市場は重要と考えている」と強調した。

 同氏は「昔は温泉地や周辺地域を観光する人が温泉旅館に宿泊していたが、今は完全に都市のビジネスホテルに奪われた」と説明。ビジネスホテルの宿泊客を同社で独自に調査したところ、地方に行けば行くほど観光客が多く、約6割が観光目的の利用者という結果が出たことを紹介した。

 星野リゾートでは温泉保養は「界」、ラグジュアリー市場は「星のや」、ファミリー市場は「リゾナーレ」とそれぞれのブランドで展開。ただし、星野氏は都市観光需要に対しては「現状としてサービスを提供できていない」とし、今後はチャンスを探りながら「長期的スパンのなかで、第4の大きな市場である都市観光分野に星野リゾートがサービスを提供していきたい」と意欲を示した。

界 鬼怒川の客室。栃木の伝統工芸作家とコラボレーションした  また、同氏は「界」ブランドについても言及。「稼働が安定し収益性が高まってきたため、新築が可能になるとともに、『地域らしさ』を表すために予算を費やせるようになった」と話した。新築については部屋数がコントロールできることや、サービススタッフの動線の効率化、顧客に最新の設備を提供できるメリットがあるという。特に部屋数については「40室から50室程度であると利益率が高い」ことから、今後は「(少ないホテルに対しては)増築などをおこない、40室のレベルにあわせていきたい」考えだ。また、現地の伝統工芸作家の作品をホテルに配し、特別室「ご当地部屋」を設けることや、現地の文化などを紹介するイベント「ご当地楽」をホテル内で開催するなどの取り組みをおこなっており、今後も継続していくとした。

 記者会見では、栃木県の鬼怒川温泉に11月10日に開業する予定の「界 鬼怒川」を紹介。「界 鬼怒川」は鬼怒川温泉駅から車で5分で、客室数は全48室。新築のリゾートで、益子焼や黒羽藍染、鹿沼組子など、栃木の伝統工芸品を随所にあしらった。また、12月10日には石川県の山代温泉にある「星野リゾート 界 加賀」がリニューアルオープン。1624年創業の老舗旅館「白銀屋」を改装したもので、全48室の内18室には温泉風呂を備えるという。

星のや 東京(イメージ)  このほかに星野氏は「星のや」ブランドについても紹介した。10月30日には「星のや富士」を、16年7月には「星のや 東京」を開業する予定だ。「星のや 富士」は自然のなかで快適に宿泊するキャンプ「グランピング」をテーマにしたリゾート施設で、客室数は40室とした。一方、「星のや 東京」は三菱地所が進める「丸の内再構築プロジェクト」の一環として開業するもので、客室数は84室。地下3階、地上18階の「塔の日本旅館」として、日本旅館ならではのおもてなしを提供していくという。

 当初は14年8月に開業する予定だった「星のや バリ」については、現地の工事が遅れていると説明。「前には進んできている。(16年7月に開業予定の)『星のや 東京』の前に開業することを、社内での重大な課題としている」と語った。