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海外医療通信2015年7月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2015年7月29日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

【リンク】
東京医科大学病院・渡航者医療センター

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(1)MERS(中東呼吸器症候群)の流行

韓国では5月中旬からMERSの流行が発生していましたが、7月初旬以降、新たな患者発生はみられていません。今回の韓国での流行による患者数は186人で、うち36人が死亡しました(WHO GAR 2015-7/21)。このまま新しい患者の発生がなければ、8月初旬には流行の終息が発表される予定です。

一方、中東のサウジアラビアではMERSの流行が続いており、最近1カ月で12人の患者が確認されました(WHO GAR 2015-7/3, 24)。サウジアラビアでは今年になり200人以上の患者が報告されていますが、このうちの44人は同国東部にあるHofufの医療機関での集団感染によるものです(国立感染症研究所 2015-7/17)。サウジアラビアなど中東諸国では医療機関内での感染とともに、このウイルスを保有するラクダからの感染も発生しています。現地に滞在する際はラクダに接触しないようにしましょう。


(2)中国での鳥インフルエンザH7N9型の流行

5月下旬から6月中旬にかけて中国で鳥インフルエンザH7N9型の患者が5人確認されました。このうち3人が死亡しています(WHO GAR 2015-7/18)。中国では昨年11月から第3波の流行が発生しており、患者数は200人以上にのぼっています。患者発生の多い地域は南部の広東省、浙江省、福建省などですが、こうした地域では生きたニワトリの販売されている市場などに立ち入らないようにしましょう。


(3)東南アジアでのデング熱流行

東南アジア諸国は雨季を迎えており、デング熱の患者数が増加傾向にあります(WHO西太平洋事務局 2015-7/1)。今年はマレーシアやベトナムで昨年よりも患者数が多くなっています。また、タイ南部でも患者数が増加している模様です(英国Fit For Travel 2015-6/25)。


(4)アジアの熱帯地域で季節性インフルエンザが流行

7月になりシンガポール、香港などで季節性インフルエンザの流行がみられています(WHO Influenza Update 2015-7/14)。流行しているウイルスの種類はA香港型(H3N2)が中心です。また南半球のオーストラリアやニュージーランドでもインフルエンザが流行レベルに入っています。こうした地域に滞在する際には、手洗いや“うがい"などを心がけてください。


(5)西アフリカでのエボラ熱流行

西アフリカのエボラ熱流行は鎮静化傾向にありますが、ギニア、シェラレオネでは7月も患者の発生が続いています。最近1か月間では、ギニアで65人、シェラレオネで30人の患者が確認されました(WHO GAR 2015-7/1 8, 15, 22,)。また、リベリアでは5月に流行終息が宣言されていましたが、6月下旬以降、6人の患者発生が報告されています。

ギニア、シェラレオネについては現在も外務省から渡航自粛勧告が出されており、不要不急の渡航は避ける必要があります(外務省海外安全ホームページ 2015-7/10)。


(6)黄熱ワクチンの追加接種が不要に

黄熱ワクチンは接種してから10年間有効とされており、その接種証明書(イエローカード)の有効期間もWHOにより10年と規定されています。しかし、米国CDCは黄熱ワクチン接種者の92%が10年以上免疫を保持するとのデータを発表し、このワクチンの追加接種は必要ないとの見解を示しました(Morbidity and Mortality Weekly Report 2015-6/19)。WHOも2016年6月までに国際保健規則(IHR)の改訂を行い、イエローカードの有効期間に関する規定を撤廃する予定です。

http://www.who.int/ith/updates/20140605/en/


・日本国内での輸入感染症の発生状況(2015年6月8日~2015年7月5日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.html


1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢7例、腸管出血性大腸菌2例、腸・パラチフス6例、アメーバ赤痢7例、A型肝炎3例、ジアルジア2例、クリプトスポリジウム1例が報告されています。腸・パラチフスは6例のうち5例がインドなど南アジアでの感染でした。


2)蚊が媒介する感染症:デング熱は輸入例が18例で、前月(17例)とほぼ同数でした。感染国はマレイシア(5例)とフィリピン(4例)が多くなっています。チクングニア熱が2例報告されており、感染国はソロモンと中米のホンジェラスでした。マラリアは4例で、3例がアフリカ(ガーナ、コートジボアール、ナイジェリア)、1例がパプアニューギニアでの感染でした。


3)その他の感染症:麻疹が1例報告されており、マレーシアでの感染でした。レジオネラ症が4例報告されており、感染国は中国、台湾、インドネシア、フィリピンでした。 この病気はシャワーを浴びる時などに病原体を吸い込んで感染し、肺炎をおこします。衛生状態の悪いホテルなどに宿泊する際は、注意が必要です。


・今月の海外医療トピックス

メッカ巡礼の予防接種

イスラム教徒のメッカ巡礼の際、サウジアラビア入国時に要求されるワクチンとして近頃日本でも承認された髄膜炎菌性髄膜炎ワクチンが有名です。以下のサイトの情報では日本からサウジアラビアへ入国する場合は適応されませんが、ポリオや黄熱ワクチンも流行国から入国する際には、要求されることになっています。また日本渡航医学会のメーリングリストでも話題となったインフルエンザワクチンは強く推奨されています。その他、英国のFit for Travelのサイトでは、イスラム教徒は巡礼の終わりに頭髪を剃るためB型やC型肝炎、HIV感染にも注意が必要であることに加え、旅行者下痢症、熱中症に対するアドバイなどが記載されていました。

トラベルメディスンは旅行者の文化や生活背景も含めて対応が必要であるということが分かります。 兼任講師 古賀才博

http://www.fitfortravel.nhs.uk/advice/general-travel-health-advice/hajj-and-umrah-pilgrimage.aspx


・渡航者医療センターからのお知らせ

1)第20回海外勤務者健康管理研修会(海外勤務健康管理全国協議会主催)

標記研修会が下記の日程で開催されます。今回は「デング熱」と「海外出張者の健康管理」に関する講演を行います。

・開催日:2015年8月8日(土) 午後2時半~4時半

・会場:東京医科大学病院・臨床講堂(新宿区)

・詳細は下記ホームページをご参照ください。

http://www.sigma-k4.jp/img/kenshu_20.pdf


2)第28回トラベラーズワクチンフォーラム研修会(バイオメデイカルサイエンス研究会主催)

標記研修会が下記の日程で開催されます。今回は「ウイルス肝炎の最新情報」に関する講演と「海外派遣企業でのワクチン接種」のパネルディスカッションがあります。

・日時:2015年9月26日(土)午後1時半~6時

・会場:日本教育会館 9階 第五会議室(千代田区) 

・詳細はバイオメデイカルサイエンス研究会のホームページをご参照ください。http://www.npo-bmsa.org/28th_travelvaccine.htm

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