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新春トップインタビュー:日本観光振興協会会長 山口範雄氏

裾野の広い業界で連携を強化し
観光でもグローバル競争に勝つ

─そのために貴会が取り組むべきことは何でしょうか

山口 観光による地域づくりの推進は、日観振でも活動の柱としている。シンポジウムや研究会、タウンミーティングなどは折に触れて各地で開催しており、小冊子などのツールも配布している。

 各地域で、個性的な観光資源や特産品を核にして企画を立ち上げ、それを人材によって磨き上げて、観光需要を作りだす。知恵を絞り出し、実行に移す優秀な人材が必要になるから、その養成のための研修会なども各地方と連携して開催している。

 地方創生に向けては、様々なインフラや環境の整備が必要になる。LCCなどを活用した各地へのアクセス強化や、OTAなどを活用した情報や商品の提供など、様々な活動が広がっていくだろう。訪日旅行についてはWiFiの普及も重要になる。2014年は各方面で対応を進めたが、以前は旅館などに浸透しておらず、旅行者からの不満が多かった。

 外国人旅行者にとって旅館は、日本の伝統文化を感じられる良い部分がある一方で、不便さを感じる部分もある。受け入れる側は、旅行者が不便さを感じそうな部分については、多少の手直しをすることが大事だと思う。伝統と利便性の両方に訴えることが必要だ。

─受け入れる側にマインドの変革が必要ということでしょうか

山口 グローバル化する市場経済の中では、観光も含めて全ての分野が競争力を磨かなくてはいけない。例えば最近、農業の世界では「6次産業化」という言葉が聞かれるようになった。味の素では何十年も前から取り組んできたことだが、ただ作物を売るだけではなく、製品化して加工度を上げて販売し、さらには国外にも輸出する。そのために必要な協力や連携は既に始まっているが、観光産業でも同じことはできるのではないだろうか。

 どの分野でも、新たに成長するために必要なことは、「価値の付加」と「海外への販売」だ。前者のためには新たな知恵や施策などが必要になる。そのためには他分野の人材の起用も必要になるだろう。後者のためにはとにかく攻めること。これまでは攻めの姿勢がなさ過ぎたが、もともと日本には、攻めるための武器となる高品質な産品やサービスは多い。人口が減少している日本国内だけでは市場は縮小していくのだから、新たな価値を付加して、海外に送り込み市場を広げなくてはいけない。