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なぜ今、旅行にビッグデータが必要か、新時代のマーケティングとは

  • 2014年10月14日

ツーリズムEXPOジャパン業界日セミナーより
節目迎えたアウトバウンド活性化へ、ビッグデータの活用を

マーケティングの2つの罠に注意

 ビッグデータを活用する前に、江藤氏はマーケティングにおける2つの注意点を指摘する。

 その一つが「ロングテール」の罠。量が求められていたマスの時代は、多様な消費者に幅広い商品で対応する必要から「テールを作ること」が求められていた。しかし、現在の商品構成について江藤氏は「似た様な商品が多すぎる」と説明。「選択肢が多いとストレスが増えて、購買意欲が下がる」との行動経済学の根拠を踏まえ、「絞り込んだ商品提供が必要。データ部門が検証すれば利益の低い市場から撤退しやすい」と、ビッグデータの活用で解決できることを提案した。

 もう一つが、手段であるはずのマーケティング自体を目的と錯覚する「手段目的化の罠」だ。マーケティングの目的は顧客と企業の距離を縮めること。その際の対象は「物理的距離」「経済的距離」ではなく、操作が可能な「心理的距離」だ。それを「SNS、スマートフォン、GISの武器で攻めていく」と説明。SNSで顧客視点での旅情を促し、オウンドメディアで顧客視点を保ちつつ旅行のノウハウを発信する。江藤氏は「心理的距離に寄り添った広報戦略がうまく絡まった時に、潜在客が顕在化する」とアドバイスした。


旅行業界に必要なビッグデータとは

 スマートフォンやSNS、GIS、POSなどで流動性人口データがとれるが、旅行業界にはどのようなビッグデータが必要か。江藤氏は、「購入頻度の少ない旅行では日常データは不要。旅人の行動パターンデータを集めることが必要」と説明する。

 そこで江藤氏は、旅人の渡航歴(過去)と興味のある渡航先(渡航計画:未来)をデータベース化できるSNSアプリ「Buzzport.jp」を開発。ベータ版の提供を開始した。旅人同士の情報交換を可能にして旅行意欲の喚起をはかるとともに、旅行業界関係者がビッグデータを利用できるようにしたもの。自社サイトへの集客力が少ない中小の旅行会社などでも、ビッグデータを収集できる機会になる。

 また、日本人旅行者の少ないマーケットに対して国やテーマ別のSNSを作成し、顧客をサポーター化することも提案。ラオスの「ラオス・トラベル・サポーターズ(http://laos.ts.buzzport.jp/)」から取り組みを開始している。

 江藤氏は「100万人のネットワークがあれば3000万人のマーケットを作れる」と述べ、旅行業界のビッグデータ構想として、旅行会社や関係機関とのパートナーシップを結び、アウトバウンドを変える活動としていく意欲を示した。


取材:山田紀子