トップインタビュー:ピーチ代表取締役CEOの井上慎一氏

潜在需要の開拓順調
まずは「LCCとして一人前」めざす

客室乗務員とも気軽に談笑

-他社との競争に臨む上でどのような戦略を立てていますか

井上 ポイントは3つ。1つめは安全だ。安全であるということは何がなんでも確保しなければならない。2つめは安い運賃を出し続けること。シーズナリティで変えるのでなく、またプロモーション運賃だけに頼るのでなく、お手軽な通常運賃を提供する。

 そして3つめは日本ブランドだ。ジャパニーズクオリティを前面に打ち出すことで、外国系LCCとの差別化もできる。今後は、日本の現代風の強みを押し出していきたい。キュート&クールというか、“かわいい”“かっこいい”をどのように発信していくか。ただし、元気でありさえすればいいのかというとそうではなく、ある程度日本人らしい品のある元気の良さをめざしている。とても難しいことではあるが。

 最低価格保証をする会社もあるが、MMとしてはお客様が何を求めているかにこだわっている。例えば我々が3580円で福岡線を販売する時に、他社がそれよりも数百円安い運賃を出したとして、それにどれだけの価値があるのかということだ。我々も安い運賃は365日出しており、数百円の差であればデザイン性など付加価値で差別化し、ご納得いただけるのではないか。ただし、お客様がお望みであれば運賃の値下げももちろんしていく。


-今後の目標やそれに向けた展開をお聞かせください

井上 2016年度に16機から20機、旅客数で600万人程度をお運びしたい。現在は4機で1日30便を飛んでいるが、来年の8月までには10機を受納予定だ。路線については、関空からの飛行距離を基準にしており、国内、国際という考え方はしていない。例えば韓国は札幌よりも近く、国内感覚だ。


-流通戦略について、旅行会社との関係をどのようにお考えでしょうか

井上 旅行会社との取引はHISとの契約が始まったばかりで、今のところはほぼ100%が直販だ。95%が自社サイトで3%がコールセンター、1%が空港カウンター。

 HISとは排他的な契約をしているわけではなく、こういった関係は今後も広げていきたい。他社とも話は進んでおり、もう間もなく販売していただくことになる。どうしても営業スタッフのマンパワーが限られており、大手からアプローチし始めているが、大手以外でも連絡をいただければお伺いしたい。

 インターネットは便利なものであり、その便利さを知っている世代がどんどん増えていくとすれば、直販が減っていくことはないのではないか。親族訪問や里帰りなどVFRの単純往復では旅行会社は必要ないだろう。

 しかし、“旅行”ということになった時に、もう一つの価値をお客様が求め始めるように思う。将来的には新しい関係性も含めて旅行会社の取扱分が増えていくはずで、7、8割の直販比率が保てればまずまずではないかと考えている。

 ただし、現在は路線網を広げることが最優先。ユニットコストを含めてLCCとして一人前になるにはまだ時間がかかる。まずはMMのウェブサイトで販売することでブランドや会社についてご理解いただき、お乗りいただいた後に、クチコミで評判が広がっていく。そうした動きが進んでいけば、旅行会社のウェブサイトで販売していただくような施策も考えられる。


-ありがとうございました