インタビュー:JTB中部 海外旅行仕入販売部仕入計画課長の大野真氏

  • 2012年4月23日

中部地域全体の需要の底上げはかる
中部国際空港の近距離線増便のチャンスを活用

 中部国際空港によると、2012年度上期スケジュールで、同空港発着の近距離路線は北京、ソウル、台北などアジア方面を中心に前年同月ピークと比較して7便増加した。レガシーキャリアに加え、韓国LCCのチェジュ航空(7C)も路線を増やしている。このほか、中部圏ではチャイナエアライン(CI)が3月に静岡/台北線、4月に富山/台北線の運航を開始するなど増便に向けた動きが活性化しており、座席増による需要拡大に期待がかかるところだ。愛知、岐阜、三重、静岡、長野、福井、石川、富山を合わせた中部8県のマーケット動向と、JTB中部の今年の展開について、海外旅行仕入販売部仕入計画課長の大野真氏に聞いた。


-中部地域の海外旅行マーケットについて、ここ数年の動向をお聞かせください

中部国際空港の増便で需要増に期待がかかる  中部地域(中部8県)の日本人出国者数は2006年の257万8000人をピークに減少傾向にある。2011年は東日本震災の影響もあったが夏以降から回復。特に個人需要の回復が牽引し、2010年の234万4000人を若干上回る見込みだ。

 総務省の2010年の国勢調査人口速報によると、人口に占める出国者割合は全国平均で約13%。トップは東京(24.3%)で、4人に1人が出国している。次いで神奈川(19.7%)、千葉(16.6%)。関西地域は大阪、京都、神戸、奈良が全て14%台だった。一方、中部地域は愛知が14.8%だったが、それ以外は10%前後で、中部8県でも11.5%と全国平均を下回っているのが現状だ。

 中部地域の海外旅行者の場合、中部国際空港の利用がメインだ。各航空会社のヒアリングに基づいた中部国際空港発の提供座席数によると、2007年度が約400万席とピークだったが、11年度は300万席強。今年の上期は前年比約9%増となり、アジア線を中心に若干回復した。一方、地方空港ではチャイナエアライン(CI)が3月に静岡/台北線、4月に富山/台北線の運航を開始など増便の動きがみられる。


-中部地域の海外旅行マーケットの特徴をお聞かせください

 レジャー需要は都市部と農村部で繁忙期が分かれている。都市部は夏休みや年末に旅行需要がピークを迎えるが、農村部では農閑期をねらって旅行し、お盆や年末に家族が帰省するため旅行しない、というケースもある。

 また、中部地域では自動車関連産業の長期休暇期日が販売に影響する傾向がある。ゴールデンウィークやお盆、年末年始の休業日に加え、9月のシルバーウィークも自動関連産業の休業日次第で販売実績が変わる。

 一方、業務渡航では以前は中国一辺倒だったが、中国の経済発展にともない中国の労働単価の上昇で、その他アジアへの進出が盛んになってきている。増加しているのはベトナムやインドネシア、インド、タイだ。

 中部地域では中部国際空港に加え、関空利用、成田での乗り継ぎや、小松や富山、静岡空港など地元の地方空港の利用者も多い。地方空港では旅行代金が高くなる傾向がある。たとえば小松空港は大韓航空(KE)がソウル線を週4便で運航しているのみだが、需要と供給のバランスがよく、値崩れが起きない。また、パッケージツアーで関空発着と比較した場合、小松発着が高めの設定でも、関空までの地上交通費分程度の差額であれば、受け入れられる傾向があるようだ。