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地方誘客促進へ「地域観光新発見事業」の公募迫る、事業担当者が語る本事業の狙いは?

  • 2024年2月9日

 地方誘客促進を目的とした観光庁による「地域観光新発見事業」の公募開始が1か月後に控える。昨年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画では、「地方誘客促進」を1つのテーマとして対応を進めてきたほか、観光庁も今年の重要課題として同テーマを挙げるなど対応が急がれる。

 「地域観光新発見事業」は、令和4年補正予算の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」のいわゆる後継事業の位置づけだが、今回はインバウンドに限らず国内観光客向けの観光コンテンツ造成も対象とした一方で、事業予算は約半分の50億円となっている。

 今月1日に実施された本事業に関する特別対談では、前回事業の反省も踏まえた本事業のポイントなどについて語られた。

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(左から)観光庁 豊重氏、跡見学園女子大学 篠原氏
【登壇者】
● 豊重巨之(観光庁観光資源課新コンテンツ開発推進室長)
早稲田大学大学院理工学研究科修了、同大学院商学研究科修了、博士(技術経営)、2005年総務省入省後、情報通信政策、電波政策等に従事、2020年総務省情報通信作品振興課課長補佐、2022年デジタル庁参事官補佐を経て、2023年7月より現職。

● 篠原靖(内閣府地域活性化伝道師 跡見学園女子大学観光コミュニテイ学部准教授)
30年間の旅行会社勤務を経て現職、全国の観光政策に精通し内閣府、観光庁、総務省、文化庁を始め各省庁の観光政策関連委員を多数歴任。観光地の再生から観光人材育成を手掛けている。


 対談の冒頭、豊重氏は「東京のインバウンド宿泊者数はインバウンド宿泊者数全体の4割弱、東京、京都、大阪では6割程度で、いかに地方に誘客するかが喫緊の課題」との見解を示し、本事業を通して「全国に埋もれる地域の観光資源を掘り起こし、観光コンテンツを磨き上げる」必要性を説いた。

 地方誘客を進めるうえでのポイントとして、篠原氏は「現状では、地域に多くの方が来ても販売するものがなく、お金を収受できていない地域が多々見受けられる」と、誘客とともに消費へと繋げる重要性を指摘すると同時に、「価格も今までの地域消費の3倍程でも十分勝負ができる」と高単価へのシフトを提案した。

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 これに対し、豊重氏は「まさにこれから求められるのは稼ぐ観光。そのために付加価値をどう見出すか」と回答し、本事業のコンセプトを考えるにあたって重要とした3つのポイントを明かした。

 それによると、1点目が「インバウンドのみならず国内観光客も含めた観光コンテンツ造成」、2点目が「マーケティングデータを活かしたマーケットインの視点」、そして3点目が「時期、時間の分散を含めた販路開拓と情報発信」だ。

 これに対し篠原氏は「(コロナ禍を振り返ると)インバウンド専業で取り組んでいた地域は非常に行き詰った」と国内との両輪で取り組む重要性を示すとともに、「これまでの観光は一部勘に頼っていた部分もあるのではないか。マーケティングとマネジメントの2つをしっかり繋げる必要がある」と地域でのデータ活用を求めた。

 また、3点目に関しては「オーバーツーリズムの観点から、ずらし旅、ナイトタイムエコノミーの推進や朝の時間帯への分散化が求められる」(篠原氏)。

 新たに国内観光客向けの観光コンテンツ造成も対象とした狙いについて豊重氏は「いろいろな切り口から観光コンテンツを磨き上げるプロセスを充実化していきたい」と述べており、間口を広げることで多様な事業者の参加を促す方針だ。