危機感を感じる訪日における「日本の価値」、観光立国実現に向け「体験」の深堀を-KYOTOyui 近藤芳彦氏

  • 2023年10月9日

 株式会社KYOTOyuiの近藤芳彦です。今回も前回に引き続き最近感じる事を書かせて頂きたいと思います。

 前回の寄稿にも触れさせて頂いたのですが、華僑の方と来年に向けた企画を打合せさせて頂いていた時に、素晴らしいなぁ~と感じた言葉があります。前回お会いした時には「遊学」という旅の提案をされているとお聞きしていたのですが、次は「研学」という旅の提案で進めるとの事でした。

 この様な旅を求められることは華僑の方に始まったわけではなく、インバウンド需要のニーズの高まりは「見学」ではなく研究、研鑽などの「研」にあると、つくづく感じております。またお話の中で何度も仰っておられた「日本の美意識が素晴らしい!」とのお言葉に、とても危機感を感じてしまいました。

 前回でも触れたので繰り返しの話になるので恐縮ですが、日本人の美意識は10年後や50年後、はたまた100年後まで持ち続けられているのか?を考えると、「美意識高い日本人」を求められる素晴らしい価値はこのままでは薄れていき、外国人からの期待やリスペクトされている事に応えられなくなるのでは?そして観光立国を目指す日本として、観光業を担う私たちとしては危機感でしかないと思うのです。

 その為にも各地の培ってきた文化や産業を守るべく、日本人として原点回帰で取り組むべき事業が「観光業」だと感じております。歴史を振り返り、祖先や過去の先人たちを敬い、そして「日本人としての誇り」をしっかり持ちながら日々の仕事に励むことだと思います。

 そこで具体的に皆さんに取り組んで頂きたい事は、先ずはご自身の生活されている地域や両親の生まれ育った地域、そして何よりも自分が生まれ育った地域を改めて観たり、過去を振り返り感じていた事の素晴らしい体験を書き出してみて下さい。恐らく溢れんばかりの経験や体験が蘇ってきて、少なくても10から20以上の内容は書き出せるのではないでしょうか?

 書き出せないと言われる方は、ぜひお父さんやお母さん、お爺ちゃんやお婆ちゃんからの昔話を聞き出し、そこで出た経験などを洗い出すと間違いなく10から20以上の「体験」が出てくるはずだと思います。その「体験」こそが日本人としての美意識高い、日本の素晴らしさがあり、インバウンド観光客から求められる商品になると思うのです。

 これは逆で考えれば簡単な事で、我々日本人が海外旅行に行くときに求める事って何でしょうか?「その地域ならではの料理が食べたい」や「そこに暮らす人との出逢いで思い出深い旅行がしたい」など、その地域ならではの旅を求められるのでは無いでしょうか?50歳を過ぎた私だからかも知れないのですが、旅の醍醐味はその地の方とのご縁(出逢い)だったり、自分の国や地域と、行った先の国や地域を見比べて五感で感じる事ではないでしょうか?

 なので観光事業者に係わる方々にお伝えしたい事は、「日本人としての誇り」「出身地の誇り」「家系の誇り」などを改めて考える時間をつくっていただき、お父さんやお母さん、お爺ちゃんやお婆ちゃんがご存命なら、お元気なうちに色々なお話を聞き出し、素晴らしい日本を感じてもらえると自ずと観光業としてやるべき事が見えてくるのではないでしょうか?

 私が初回で申し上げていた観光×地域、観光×産業、観光×文化という視点で、観光業としてやるべき使命をもって日本中の事業者が立ち上がれば、私が心配するような危機感はなくなり、明るく、素晴らしい、美意識高い日本を創り上げられる観光立国になると感じております。

 前回のコラムに対して頂いたコメントや、「業界ニュースを振り返る」でも取り上げて頂いた内容をみて「心の豊かさ」について再度皆さんと考え、「金銭的な豊かさと関係なく提供できるもの」これこそが付加価値高い体験であり、皆さんそれぞれが容易に提供できる体験だと思うのです。

 ぜひ皆様のご意見を頂ければ嬉しく思います。

近藤芳彦
株式会社KYOTOyui代表取締役。トラベル京都代表。京都観光サポーター。1972年3月生まれ、大阪トラベルジャーナル旅行専門学校卒業後、旅行会社に3年ほど勤めるが、結婚を機に退職し、その後は他業種に就いたものの2006年に旅行業を立上げ、2016年には法人の観光業を営んでいる。趣味は「旅×仕事」です。