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現地レポート:韓国・京畿道、歴史に触れられるソウル郊外

  • 2016年8月18日

韓流ドラマなどフックに観光をアピール
「ソウル+α」の魅力を発信

世界遺産巡りで歴史を知る
ウォーキングやトレッキングも

水原華城の城壁沿いはウォーキングコースとしても人気。すべてを徒歩で見て回ると約2時間半かかるという  京畿道には韓流ドラマのロケ地以外にも、歴史を感じさせる多くの観光地がある。その代表が1997年にユネスコの世界文化遺産に登録された「水原華城(スウォンファソン)」だ。ソウルからは約1時間の距離にある18世紀後半に築かれた城で、城壁は高さ6メートル、全長は5.7キロメートルに及ぶ。「華城行宮(ファソンヘングン)」という王の別邸を中心に、櫓、砲台、軍事司令塔、訓練場などがある。

 日本では城といえば大名などが住んでいた天守閣をイメージするが、韓国では城壁で囲まれた都市全体を指す。現地ガイドによると、天守閣のように分かりやすく「城だ」と認識できる建物があるわけではないため、日本人観光客はよく「お城はどこ?」と聞いてくるという。日本との文化の違いをも感じられるスポットとして楽しめるだろう。

華虹門の様子。都市を囲む城壁は学生の通学路にもなっている  水原華城の総面積は約130万平方メートルで、東京ドーム28個分の広さがある。今回のFAMツアーでは訪問した時刻が遅かったため、残念ながら華城行宮の見学はできなかったが、敵の目に付かない奥まった場所に造られた「東暗門(トンアンムン)」から城壁沿いに、兵士の見張り場所だった「東北舗楼(トンブクポル)」、軍事司令塔と東屋の機能を兼ね備えた「水原訪花随柳亭(スウォンパンファスリュジョン)」、水原川の水門「華虹門(ファホンムン)」を巡る40分程度のコースを歩くことができた。

 城内には徒歩以外の移動手段として、主要な見学ポイントを巡る観光列車「華城列車」が走っている。竜の頭を模した動力車と王の神輿を模した3両の客車からなる列車で、城内西部にある華城行宮から徒歩5分の「八達山(パルタルサン)」と、東部にある錬武台(ヨンムデ)観光案内所の目の前の「東将台(トンジャンデ)」が乗車場所となっている。毎日10時から17時50分まで運行しており、所要時間は片道30分程度。料金は大人1名1500ウォンで、20人以上の団体は1名あたり1200ウォンになる。

水原華城には、海抜500メートル以上の稜線に全長8キロメートル以上の城壁が建てられている  平らな土地に築かれた水原華城とは異なる趣を持つのが、広州にあるもう1つの世界遺産「南漢山城(ナマンサンソン)」だ。4世紀頃の百済時代から朝鮮時代までの長きに渡り、漢江流域と首都ソウルを守ってきた城として14年に登録された。ソウルからは1時間強で行くことができる。

 南漢山城はトレッキングコースとしても人気で、2.9キロメートルから7.7キロメートルまで、5つのコースが設けられている。コースにはハードな場所も多いが、紅葉の季節には国内外から観光客が訪れる。FAMツアーの際にも、登山用の装備に身を包んだ観光客を多く見かけた。

南漢山城行宮の正門「漢南楼(ハンナムル)」。行宮内部は20分程度で見て回れる  南漢山城でも王の別宅「南漢山城行宮(ナマンサンソンヘングン)」が復元されている。他の城にある行宮とは異なり、戦争などが起こった時に宗廟から歴代の王と王妃の位牌を移せる「左殿(チャジョン)」と、土地と穀物の神を祀る祭壇「右室(ウシル)」が設けられた唯一の行宮で、南漢山城は有事の際の臨時都市としての役割を果たしたという。

 今回のFAMツアーで訪れた観光地には体力が必要な場所が多く、参加者からは「若い人はいいが、中高年はアクティブ派でないと厳しそうだ」との声も聞かれたが、ソウルとは違う郊外ならではの魅力を楽しむことができた。京畿観光公社は日本からの団体の誘致に向け、旅行会社の商品造成の支援や最新情報の提供などに励んでいる。旅行会社が「ソウル+α」のポテンシャルを持つ京畿道に目を向けることで、韓国旅行の新たな需要が獲得できるのではないだろうか。

取材協力:京畿観光公社、アシアナ航空
取材:本誌 大野舞