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現地レポート:カンボジア、増えるアンコール・ワット以外の魅力

  • 2016年6月28日

各地で観光素材の整備が進行
新たなターゲットの可能性も

シェムリアップから足を延ばして
密林に眠る巨大遺跡やピラミッド型寺院も

ジャングルのなかにあり、かなり崩れているベン・メリアは、それゆえに秘境感が漂う また、おなじみの遺跡めぐりでは、アンコール・ワット以外の楽しみも増えている。シェムリアップから北東へと車を走らせると、ところどころに遺跡が点在しており、近年じりじりと人気があがってきている。

 シェムリアップから約1時間、クーレン山南麓に位置するベン・メリアは長い間放置されていた巨大遺跡だ。完成はアンコール・ワットよりも20年早く、その造りが非常に似ていることから、アンコール・ワット建設のための練習台だったのではないかと言われている。

 密林の生い茂るなかに突如として現れる遺跡は神秘的で、特に1868年に嵐のため崩れ去ったままのがれきにガジュマルの木の根が絡みつき、年々姿を変える刹那的な美しさが特徴。かなり崩れているが修復はされておらず、木造の足場から見学する。

ガジュマルの根に押しつぶされそうなコー・ケー遺跡群のプラサット・プラム。生命の力強さを感じる そこから北上し、30分ほど車を走らせると、コー・ケー遺跡群がある。928年に王都が移されたが、王が没するとともに再びアンコールに王都が戻され、その後は放置されてしまった。王都として栄えたのはわずか15年ほどだが、アンコール遺跡群でも珍しいピラミッド型のプラサット・トム寺院をはじめ、30にものぼる建築物が一帯に点在しており、非常に見応えがある。

 特にピラミッド型寺院は高さ35メートル、7段という荘厳なもので、設置された階段で頂上まで登り、付近を見渡すことができる。また、それぞれ祀られている神が違う3つの祠が並ぶプラサット・プラム、ゾウの寺院プラサット・ドムライなど、それぞれに特徴があるのでじっくり見て回りたい。なお、ジャングルのなかにはまだ地雷が撤去されていないところもあるので、必ずガイドとともに出かけるのが望ましい。


プレア・ヴィヘア遺跡がついにお目見え
パスポートを忘れずに

プレア・ヴィヘアの展望台から、すそ野を見下ろす さらに北上し、タイの国境付近の山の頂上付近一帯に広がる、寺院遺跡のプレア・ヴィヘアへ。かねてよりタイとカンボジアの2国が所有を争っていたが、2008年にカンボジアが世界遺産に申請し、登録されてからはカンボジアの領土となっている。このことからタイとの間に軍事的な緊張が続いたものの、ここ数年でカンボジア軍が配置され安全が確保されたほか、カンボジア側からも安全に登っていける道が開かれ、観光客にも一般公開されるようになった。

 もともと地元の人々の篤い信仰の対象であり、訪れる人は観光客ばかりではない。タイ側の住民にも「カオ・プラ・ヴィハーン」と呼ばれ非常に人気があるが、残念ながら紛争の影響でタイ側への国境は封鎖されているばかりか、タイ人は入場することができない。そのため、入場の前にパスポートチェックがおこなわれており、日本人ももちろんパスポートを持っていく必要がある。当日は忘れないよう、ホテルを出発するときなどに案内するといいだろう。

 「天空の寺院」とも称されるプレア・ヴィヘアは山頂にあり、バスでは行けないため、チケットオフィスの前に待機しているバンに乗り換える。入口付近にチェックポイントがあり、ここでパスポートを掲示。このあたりは駐留している軍人とその家族が住む集落のようになっており、ローカルな雰囲気だ。

 ヒンドゥー寺院らしく入口から奥へとナーガの像に誘われ、本殿へと進んでいく。山の斜面に立てられているため、長い参道を抜けるとそれぞれ違う高さに大規模な神殿が点在。頂上は展望台になっており、眼下に広がる裾野を一望することができる。夕方になると雲海が出ることがあるそうで、その時間をねらっていくのもよさそうだ。

ベン・メリアには散策路も組まれており、比較的歩きやすいが、足場の悪いところもあるので注意  ベン・メリアなども含めてこれらの遺跡を1日でめぐるには、早朝にホテルを出発する必要がある。一番遠いプレア・ヴィヘアまでは約150キロメートルで、その大部分は舗装されていない道路をゆくため時間がかかるほか、車中にいても身体に負担がかかる。大型の車を使用する、途中にあるホテルで休憩を入れるなど、対策を講じたい。