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旅行の高付加価値化と事業の多角展開に活路-KOKK小柳肇氏

コロナ禍は「良いこと7割」、危機をチャンスに変えて進化を目指す

-KOKKは働き方も独特でマルチタスクを採用していますね。

小柳 入社時には1人3役をこなすよう告げます。3年経てば5役を担ってもらいます。宿泊、運輸、サービス業と業界違いの仕事になりますが、当社では全部やるのが普通。バスの運転手で添乗員もできる者は5、6人います。添乗員ができなくても整備や運行管理、あるいはホテル施設のメンテナンスなど、できる仕事を兼務してもらいます。導入当初は大不評で「運転手で入社したのだから他の仕事はできない」とそっぽを向く者もいました。しかし現在はマルチタスクだからこそコロナ禍でも給料がもらえて、業界では珍しくボーナス支給もあるのだと納得してくれています。

-新規採用は継続していますか。

小柳 一昨年2名、昨年は3名採用しました。今春も採用予定でしたが、できませんでした。人材が集まらないのです。コロナ前は200人以上のエントリーがありましたが、現在は10分の1の20人程度。旅行業界は若者の眼中にない。6人が選考段階まで進みましたが全員がパラパラと辞退。親が「旅行業界には行くもんじゃない」と思い止まらせたり、担当教授に「観光は向こう10年は地獄だから他を探せ」と助言された話も耳にして悔しい思いもしました。

-地域に根差す旅行会社として一番重要なのは何でしょうか。

小柳 やはり人です。そこはコロナ禍があってもなくても変わりません。昔は資本力があって看板のある旅行会社が有利でしたが、現在は完全に企画の力、人間の力の勝負です。

-大手旅行会社との関係については。

小柳 旅行事業を始めた最初の数年間は大手旅行会社の特約店の看板を掲げていましたが、主催旅行に舵を切った時点で契約をやめました。手元のキャッシュが厚ければ何も問題はありません。

-読者にメッセージをお願いいたします。

小柳 旅行業界は湾岸戦争や米同時多発テロ、東日本大震災など約10年に一度のペースで試練を迎えてきましたが、今回のコロナ禍はスペイン風邪以来となる100年に一度の大惨事です。しかし考えようによっては、こういうことでもないと変わらない構造やシステムを大きく変えるチャンス到来です。ですからコロナ禍を「悪いこと3割、良いこと7割」だと捉えています。

-悪いこと7割、良いこと3割ではなく。

小柳 はい。かつて大手との契約を切ってパケージの代売も航空券の販売もやめ、主軸を主催旅行に移した時は「頭がおかしくなったのか」と周りから言われました。旅行業の傍らバス事業に進出した際にはバス業界から大反発を食らい、「お前の会社のためには絶対にバスを走らせない」と宣告されました。何かを変えたり変わろうとすると、抵抗や困難さが甚だしい。しかしコロナ禍を機に旅行業界は嫌でも変わらざるを得ないし、異業種からの影響も大きくなるでしょう。状況は苦しくとも、それはライバルも同じこと。むしろ自らが変わるチャンスにしていかなくてはと考えています。

-ありがとうございました。