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旅行の高付加価値化と事業の多角展開に活路-KOKK小柳肇氏

コロナ禍は「良いこと7割」、危機をチャンスに変えて進化を目指す

-宙(そら)バスというのは?

小柳 4年前に観光需要を退役した古いバス車両の屋根を切ってオープントップに改装したのが宙バスです。市内観光や観光地巡りの「宙バスツアー」として2019年から旅行商品化しました。日本海側でオープントップバスを通年運行したのは宙バスが初めてです。

-新発田市にはホテルもお持ちですね。

小柳 月岡温泉で売りに出されたホテルでしたが、温泉の権利が付かない物件のため買い手がつかず安値でした。築20年と比較的新しいこともあって購入。インバウンド向け宿泊特化型和風ホテルとして2018年に開業しました。当時は新潟もインバウンドに火が付き始めた頃。新潟空港から30分と最も近い温泉街である月岡はインバウンド増加が見込めました。インバウンドなら温泉大浴場がなくても客室内にバスとトイレがあればニーズが見込めるので、泊食分離・朝食のみで営業してきました。大駐車場もあり、宿泊業が不調だった場合、バス営業所としての利用も想定していたので、インバウンド復活まではビジネス客向けやバス車庫として使っています。

-柱の旅行業は主催旅行に絞り込んでいるのですか。

小柳 旅行業界の第一印象は「なんと利幅の小さいビジネスか」でした。先輩に「旅行業界は10%商売だから」と言われたのを覚えています。当時はまだ10%あったからいいようなものの、現在は10%どころか航空券はゼロコミッション。鉄道切符はわずか2%から3%の手数料で、場合によっては切符1枚を売掛で届ける必要もあり、やるだけ損です。ですから自分で値付けできて高付加価値化が可能で利幅も大きくできる主催旅行商品を事業の柱にシフトしました。

 主催商品も最初は苦労しました。利幅が30%あっても宣伝費がべらぼうにかかる。最初の2年ほどで宣伝に約1億円費やしました。しかし体力勝負では大手に敵わないので、徹底した顧客囲い込み作戦に切り替えました。会員組織化し、会員だけを相手に商売をする。当初目標は1万人でしたが、現在は5万人近くまで増加しました。会員増にはイベント事業が効果的で、ミュージシャンや歌手のコンサートイベントに協賛し、会場でチラシを配布しました。コンサートの来場者はお金と時間と心に余裕があるお客様で、旅行市場でもバーゲンハンターにはならず優良顧客になります。また代金を前受けする主催旅行は信用が不可欠ですが、コンサートの協賛は信頼の獲得にもつながりました。

 100ページにもなる会員向け季刊誌「ハミングタイム」や登山やトレッキング好きな会員向け年刊誌「ハミングツアーで行く山旅」、ガーデニング愛好者向け「花旅」などの冊子は、印刷と製本だけ外注。記事作成や編集は社内で行いデザイナーも3人雇用しています。最近は広告も付くようになり、印刷費の8割ほどをカバーできています。周辺自治体や地元企業からも誌面タイアップの声がかかるようになり、相乗効果によりwin-winの関係ができつつあります。

 主催旅行については添乗員が強みです。派遣に頼らず、企画、仕入れ、営業のいずれかに何らかの形で携わったスタッフが添乗するので、商品への愛着や熱量が違います。

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