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海外医療通信 2020年1月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2020年1月27日

 ※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院・渡航者医療センター

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海外医療通信 2020年1月号              東京医科大学病院 渡航者医療センター

 

海外感染症流行情報 2020年1月

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行

2019年12月中旬から中国・武漢で原因不明の肺炎患者が多発し、WHOは1月中旬にこの原因が新型コロナウイルスの流行であることを確認しました(WHO Outbreak news 2020-1-12)。流行の当初、患者の多くは武漢の某食品市場に出入りしており、この市場で販売されていた野生動物から感染したものとみられています。その後、患者発生は武漢のある湖北省を中心に中国全土に拡大し、1月27日までに患者数は2000人以上になりました。このうち56人が死亡しています。また、海外でも日本、台湾、韓国、タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ネパール、アメリカ、フランス、オーストラリアなどで患者が確認されています。WHOは1月23日に緊急会議を開き、今回の新型コロナウイルスの流行状況を検討しましたが、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」には至っていないとの結論を出しました(WHO Statement 2020-1-23)。この時点で、湖北省(武漢など)では新型コロナウイルスの持続的なヒトーヒト感染が発生しているものの、それ以外の地域では限定的な感染であるということが理由です。しかし、今後、湖北省以外でも流行が拡大した場合には、WHOが緊急事態宣言を行う可能性があります。なお、日本の外務省は湖北省への渡航中止勧告を1月24日に発令しました(外務省・海外安全センターHP 2020-1-24)。

(2)全世界:インフルエンザの流行状況

北米、ヨーロッパ、東アジアでインフルエンザが流行期に入っています(WHO Influenza 2020-1-20)。流行しているウイルスの種類は、北米でB型、ヨーロッパや中国ではA型(H3N2)、日本ではA型(H1N1)が多く検出されています(国立感染症研究所 2020-1-24)。いずれの地域でも流行は1月末になり鎮静化しつつあります。

(3)アジア:デング熱の流行状況

2020年1月に入りマレーシアやシンガポールではデング熱患者数が増加傾向にあります(WHO西太平洋 2020-1-16)。マレーシアでは6000人、シンガポールでも300人以上の患者が発生している模様です。赤道周囲の東南アジア地域ではデング熱の流行が1月から始まるため、滞在中は蚊に刺されない注意を心がけてください。

(4)アフリカ:コンゴのエボラ熱流行

コンゴ民主共和国で流行中のエボラ熱の患者発生数は最近、減少傾向にあります。1月の新しい患者数は毎週10人前後で、流行のピークは越えた模様です(WHO Outbreak news 2020-1-23)。昨年8月の流行発生以来、累積患者数は3416人(疑い含む)で、このうち2238人が死亡しました。

(5)南米:ブラジルで蚊媒介感染症が増加

ブラジルでは2019年にデング熱患者数が200万人を越え、サンパウロ市では過去最高の3万人の患者数を記録しました(Outbreak news today 2020-1-3)。ジカ熱の患者数も北部のペルナンブコ州で2019年は3800人となり、2018年に比べ150%増加しています(ProMED 2020-1-13)。また、今年1月からサンパウロ州などで黄熱の患者数が増加しており、300人以上の患者(疑いを含む)が発生している模様です(Outbreak news today 2020-1-19)。デング熱、ジカ熱、黄熱はネッタイシマカなど昼間吸血する蚊が媒介します。

 

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2019年12月9日~2020年1月12日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2020.html

(1)経口感染症:輸入例としては、コレラ1例、細菌性赤痢3例、腸管出血性大腸感染症4例、腸チフス・パラチフス5例、アメーバ赤痢6例、ジアルジア1例、A型肝炎1例、E型肝炎1例が報告されています。

(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱は19例で、前月(23例)とほぼ同数です。感染国はタイとフィリピンが各5例で多くなっています。今年のデング熱累積患者数(輸入例)は年間461例で、今まで最多だった2016年の38例を大幅に越えました。チクングニア熱は4例で、ミャンマーやラオスなどでの感染でした。マラリアは3例で、全てアフリカ(カメルーン、ウガンダ、ギニア)での感染でした。日本紅斑熱の患者が2例報告されています。感染国はマレーシアとインド/インドネシアでした。この感染症はリケッチアが原因で、マダニが媒介し発熱や発疹をおこします。

(3)その他:麻疹が1例でタイでの感染、風疹は4例でフィリピン、タイ、インドネシアでの感染でした。髄膜炎菌感染症の患者が1例報告されています。感染国はアルゼンチンでした。この病気は飛沫感染し、敗血症やショックなど重篤な症状をおこします。

 

・今月の海外医療トピックス

高山病に対する危機感はあるか?

海外が身近になり、海外高所に滞在する日本からの渡航者が増加しています。ボリビアのウユニ塩湖(3663m)、ハワイのマウナケア火山(4207m)、スイスのユングフラウヨッホ(3466m)など、海外には人気の高所観光地があり、そこで高山病を発症するケースも散見されます。高山病は標高2500ⅿ以上の高所で起こり、命に関わる場合もあります。そこで当センターでは、2019年9月に海外の高所(標高2500m以上)滞在を経験した渡航者600人を対象に、高山病に関する意識調査を行いました。「高山病を怖いと感じているか?」と聞いたところ、7割以上の人が「怖い」と回答しました。しかし、「渡航前に高山病に関する情報収集や対策をしたか?」と聞くと、5割以上が何も対策をしていませんでした。対策をしなかった理由を聞くと、「自分は心配ないと思ったから」、「添乗員がいるので気にしなかった」などが多い回答でした。

以上の調査結果から、多くの渡航者が高所には高山病の危険が潜んでいることを知っていても、対策が行われていない状況が明らかになりました。今後、海外の高所観光地への渡航者に効果的な高山病対策を提供していきたいと考えています(医師 栗田直)

 

・渡航者医療センターからのお知らせ

(1) 第24回渡航医学実用セミナー(当センター主催)

今回の渡航医学実用セミナーは「節足動物による病害」と「海外からの医療搬送」をテーマに、下記の日程で開催します。

・日時:2019年2月27日(木)午後2時~4時半  ・会場:東京医科大学病院9階 臨床講堂

・対象:職種は問いません(どなたでも参加できます) ・参加費:無料 ・定員:約200名

・申込方法:当センターのメールアドレス(travel@tokyo-med.ac.jp)まで、お名前と所属をお送りください。ご返信はいたしませんのでよろしくお願いします。

・プログラム(詳細は当センターHPをご参照ください) https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/seminar.html

 「海外渡航者が注意すべき節足動物の病害とそのリスク」  

東京慈恵会医科大学 熱帯医学教室 教授 嘉糠洋陸先生

    「海外赴任者への医療支援体制の構築について」

日本エマージェンシーアシスタンス株式会社 営業部 小山翔子様

    「海外からの医療搬送の実態」

東京医科大学病院 救命救急センター 講師 内田康太郎先生

(2) 第5回海外勤務者メンタルヘルス対応ワークショップ

当センターの松永兼任講師が企業の人事労務担当者を対象に、海外勤務者のメンタルヘルスに関するワークショップを開催します。

・テーマ:上海、ハノイの海外勤務者・家族の最新情報

・日時:2020年2月15日(土)午後2時半~

・会場:東京海上日動メディカルサービス会議室(港区赤坂)

お申し込みやプログラムの詳細は「めじろそらクリニック」の下記HPをご覧ください。http://solaclinic.blog.jp/archives/23181874.html