JTB、11年度から新中計、現計画繰り上げ−7月に基本方針、10年度は基盤整備

  • 2010年5月31日
 ジェイティービー(JTB)は、市場環境の変化に対応するため、2009年度から実施してきた3ヶ年の中期経営計画を繰り上げ、2011年度から次期計画に移行する。2009年度(2010年3月期、2009年4月1日〜2010年3月31日)の連結業績で最終損失が146億円と過去最大の赤字になったことを受けたもの。5月28日の決算会見でJTB代表取締役社長の田川博己氏は、「構造改革と成長戦略の大きなテーマを抱えてやってきたが、残念ながら市場の変化に十分についていけなかった」と語り、新計画では2012年の創立100周年に向けて「復活」をめざす方針を示した。

 新中期経営計画「JTB New Departure 2011」の対象年度は2011年度と2012年度。旅行事業の収益性強化のほか、旅行周辺事業や「人財力」の強化に取り組む。このうち旅行事業の収益性については、グローバル戦略やオンライン販売、チャーターの活用、国内宿泊販売の改革、製販一体型ビジネスモデルの強化などに取り組む。

 例えばグローバルでは、「アジアの中でどれだけJTBグループのポジションを作れるか」が課題とし、アジア、特に中国でのDMC(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)の展開をねらう。ウェブも「JTBの強みは、店頭や団体など多様な販売チャンネルを持っていること。インターネットもJTBとしてしっかりやることで強みを示していく必要がある」との考えで、「先行する2社になんとしても追いつきたい」と語った。

 なお、次期中期経営計画の基本方針は夏までに決定する予定だ。



▽10年度は分社化の「次のステップ」

 2010年度は、次期中期経営計画に向けた基盤整備を進める。田川氏は分社化の結果として「遠心力」は高まった一方で、「求心力」が追いついていないと現状を説明。その上で、「構造改革は成長戦略を進めるための手段」とし、「目的をしっかり決めながら進めていく流れを、分社化の原点に立ち返ってしっかりやっていきたい」と語った。

 このため、旅行営業の戦略に関しては、経営会議のあり方を変更して各事業会社の社長を集めて会議を開催し、田川氏自身が直接指揮、指導することで求心力を高める方針。これにより決断も迅速化し、市場環境の素早い変化に対応していく考え。これは本社機能の明確化につながるもので、田川氏は分社化を振り出しに戻すものではないと強調。むしろ「次のステップ」であるとし、新たな再編も考えていないと断言した。


▽チャーター、ウェブなど新中計に先駆けて取り組み

 営業戦略の一本化以外にも、2010年度は国内・海外商品力の強化、積極的なチャーター戦略、ウェブ事業の強化、製販一体型ビジネスの成長加速、地域交流ビジネス活性化、店舗事業の見直しの6点に取り組む。

 このうち、チャーター戦略に関しては、販売目標を前年比20%増の12万人強に設定。地方空港でも積極化してレジャー需要を取り込む方針だ。日系航空会社が経営の効率化を進める中で、チャーター用機材の調達が難しくなることが予想されるが、今後はトーマス・クックのような旅行会社が所有するチャーター機材の共同利用や、格安航空会社(LCC)のチャーター機の利用なども模索しているという。

 ウェブ事業では、国内宿泊券販売を強化する。契約宿泊施設数は2万件をめざし、宿泊プランの質で他社との差別化をはかる。ウェブ関連の売り上げは906億円だが、2014年度までに2000億円へと増やす目標だ。

 さらに、店頭事業に関しては機能を見直し、地域の特性に応じて店舗再編を実施する。店舗ネットワークの最適化をねらって「店舗の機能が地域に認められているかをもう一度検証している」といい、「認められていなければ撤退する」と断言した。

 このほか、国内商品の強化では、今期中に客室の買い取りを本格化。エースJTBで取り扱う約1000軒のうち、500軒から600軒の客室を買い取っていく方針だという。