MICEケーススタディ:インセンティブ「株式会社エリナ」
インセンティブは経営理念を体現するひとつの場
100%ポジティブになる経験を提供
基礎化粧品・栄養補助食品などを販売するエリナでは毎年2回、同社の会員を対象に勉強会を兼ねた海外インセンティブツアーを実施している。1500名から2000名規模のツアーが中心で、昨年度実施の香港・マカオのツアーでは1800名が参加。「感謝を伝え、参加者によろこんでいただく」という目的に変わりはないが、時代とともにその実施内容に変化があるようだ。
インセンティブの実施目的は不変
エリナの研修旅行「アチーバーズセミナーツアー」は、キャンペーンで権利を獲得した会員を招待する。その権利は、キャンペーン期間中の実績に応じたポイント合計数で得られるものだが、自費参加も可能とし、会員なら誰でも参加できるようにしているのが特徴だ。
同社のインセンティブツアーは、顧客への感謝と同社の経営理念である「商品を通じてお客様の人生を本当に素晴らしく変えていきます」を体現するひとつの機会だ。インセンティブツアーに参加することで「チャレンジして目標を達成した結果、素晴らしい体験ができ」、ツアー中のセミナーで「自己啓発にもつながる」。「扱う商品だけでなく、会員が成長して成功することで豊かな人生となると考える」と、アーティス氏は話す。
例えば、ロサンゼルスでのツアーでは、コダックシアターを表彰式会場として貸し切り、受賞者はロールスロイス・リムジンで会場入りという華やかな雰囲気を演出。ディナーパーティではグラミー受賞者などを招聘し、一流のエンターテイメントを披露した。また、昨年の香港・マカオでは、シルク・ドゥ・ソレイユの「ZAIA」で日本企業では初となる貸し切り公演を実施。「仲間と一緒に新しい体験をすることで向上心が高まり、視野も広がる」とアーティス氏。参加者からは「ツアーに参加することで会社への理解と自信が深まる」との感想が多い。
また、セミナーでは意識を高められる企画を組み入れる。チームビルディングはもちろん、ハワイではロミロミマッサージを学び、同社の製品を使用して参加者同士でマッサージを実施するなど、体験的に学べるものを取り入れるようにしている。ツアー後はアンケートを実施し、その意見を参考に、次回の企画や旅行先を決めていくという。
サプライヤー、旅行会社へのコンペで手配先を選択
同社では、まとめ役となる担当役員を中心としてマーケティング部のMICE担当者が各取引先と企画していく。取引先は毎回、旅行会社やイベント会社などを集めてコンペを実施し、決定。旅行会社には仕入力のある輸送機関や現地コーディネーションの手配を依頼し、そのほかはホテルやイベントプランナー、エンターテイナーと直接交渉をする。コスト面でメリットがある上、「参加するお客様を一番よく知っているのは当社の社員。直接、発注先にお客様の志向や会社のビジョンを伝える方が、それに近いものを実現できる」からだ。
旅行会社については、「弊社を知ってもらっていることもあり、斬新なアイディアで活性化に繋がる提案をもらうことも多い」と評価。さらに、「エンターテイメント中、お客様の適切な誘導や食事時のケアなど、場合によってはオーダー以上のサポートがあり、クライアントとしてはうれしいこと」と話す。行程中、とっさの対応力と判断力でツアーを運営できることは、旅行会社ならではの強みだ。「何より重要なのが、お客様がツアーを終えて『一生の思い出になった』と思えるような、100%ポジティブな経験になること。それに貢献してくださるよう、お客様に喜ばれる対応を希望している」という。
また、このところのMICE市場では景気低迷を受け、グループ単位を縮小して全体の予算を抑える傾向が聞かれるが、同社では「より多くの人に来てもらえるようにしている」と話す。今夏は「今、世界が注目して活気があり、私たちもこの地のように発展していくイメージ」として、上海での開催を予定。万博期間中で「ホテルが強気の値段だった」というものの、参加権利のポイント数を過去最低の数値とし、「このような明るい話題が少ない世の中だからこそ、お客様に少しでも喜んでいただきたいと考えた」という。
プラスアルファの付加価値を提供
インセンティブツアーを38年以上続けるなか、内容の変化として「以前は、ただ楽しんでもらう旅行だったが、近年はセミナーを入れるようになった」という。セミナーは単に同社や商品の説明だけではない。例えば、前回の香港・マカオセミナーでは「エコセミナー」を開催。同社の洗剤に関連したもので、地球環境の講義をした上で同製品の成分の改正点を話し、どのように環境に貢献できるかを説明するという、広い視点で捉えられて一消費者として考えられる内容としたという。また、健康や美容への関心が高い会員が多いことから、気功やヨガのセミナーも実施し、好評を得た。
このほか環境への配慮として以前、利用ホテルに滞在中のタオルやシーツを交換しない「ノークリーニング」を提案し、参加者も喜んで応じたという。そのホテルは同社のツアー後、ノークリーニングを選択できる取組みを継続して実施しているという。
商品説明は「今は単に商品内容を伝えるだけでは響かない」と話し、ツアー全体でも「遊びだけでなく、プラスアルファの付加価値が求められている」という。インセンティブツアーに対して、単にもてなされるだけでは満足せず、何かを習得したり参加の意義が感じられたりするものを求める風潮が、参加者の意識にでてきているようだ。
100%ポジティブになる経験を提供
基礎化粧品・栄養補助食品などを販売するエリナでは毎年2回、同社の会員を対象に勉強会を兼ねた海外インセンティブツアーを実施している。1500名から2000名規模のツアーが中心で、昨年度実施の香港・マカオのツアーでは1800名が参加。「感謝を伝え、参加者によろこんでいただく」という目的に変わりはないが、時代とともにその実施内容に変化があるようだ。
株式会社エリナ
代表取締役社長
アラン・K.アーティス氏
■株式会社エリナhttp://www.erina.co.jp/
1970年設立。パンティストッキングとソックスの直輸入販売か
ら商品ラインナップを拡充し、現在では美と健康をコンセプト
に基礎化粧品や栄養補助食品、万能濃縮洗剤などを会員システ
ム方式で販売する。現在の会員数は約50万人で、全国に約1100
軒の販売店を展開。38年以上海外インセンティブツアーを実施
しており、最大3000名規模で参加したケースもあった。
インセンティブの実施目的は不変
エリナの研修旅行「アチーバーズセミナーツアー」は、キャンペーンで権利を獲得した会員を招待する。その権利は、キャンペーン期間中の実績に応じたポイント合計数で得られるものだが、自費参加も可能とし、会員なら誰でも参加できるようにしているのが特徴だ。
同社のインセンティブツアーは、顧客への感謝と同社の経営理念である「商品を通じてお客様の人生を本当に素晴らしく変えていきます」を体現するひとつの機会だ。インセンティブツアーに参加することで「チャレンジして目標を達成した結果、素晴らしい体験ができ」、ツアー中のセミナーで「自己啓発にもつながる」。「扱う商品だけでなく、会員が成長して成功することで豊かな人生となると考える」と、アーティス氏は話す。
例えば、ロサンゼルスでのツアーでは、コダックシアターを表彰式会場として貸し切り、受賞者はロールスロイス・リムジンで会場入りという華やかな雰囲気を演出。ディナーパーティではグラミー受賞者などを招聘し、一流のエンターテイメントを披露した。また、昨年の香港・マカオでは、シルク・ドゥ・ソレイユの「ZAIA」で日本企業では初となる貸し切り公演を実施。「仲間と一緒に新しい体験をすることで向上心が高まり、視野も広がる」とアーティス氏。参加者からは「ツアーに参加することで会社への理解と自信が深まる」との感想が多い。
また、セミナーでは意識を高められる企画を組み入れる。チームビルディングはもちろん、ハワイではロミロミマッサージを学び、同社の製品を使用して参加者同士でマッサージを実施するなど、体験的に学べるものを取り入れるようにしている。ツアー後はアンケートを実施し、その意見を参考に、次回の企画や旅行先を決めていくという。
これまでの主な開催地
ハワイ 香港・マカオ シンガポール タイ ロサンゼルス フロリダ
ゴールドコースト シドニー パリ モナコ ロンドン
サプライヤー、旅行会社へのコンペで手配先を選択
同社では、まとめ役となる担当役員を中心としてマーケティング部のMICE担当者が各取引先と企画していく。取引先は毎回、旅行会社やイベント会社などを集めてコンペを実施し、決定。旅行会社には仕入力のある輸送機関や現地コーディネーションの手配を依頼し、そのほかはホテルやイベントプランナー、エンターテイナーと直接交渉をする。コスト面でメリットがある上、「参加するお客様を一番よく知っているのは当社の社員。直接、発注先にお客様の志向や会社のビジョンを伝える方が、それに近いものを実現できる」からだ。
旅行会社については、「弊社を知ってもらっていることもあり、斬新なアイディアで活性化に繋がる提案をもらうことも多い」と評価。さらに、「エンターテイメント中、お客様の適切な誘導や食事時のケアなど、場合によってはオーダー以上のサポートがあり、クライアントとしてはうれしいこと」と話す。行程中、とっさの対応力と判断力でツアーを運営できることは、旅行会社ならではの強みだ。「何より重要なのが、お客様がツアーを終えて『一生の思い出になった』と思えるような、100%ポジティブな経験になること。それに貢献してくださるよう、お客様に喜ばれる対応を希望している」という。
また、このところのMICE市場では景気低迷を受け、グループ単位を縮小して全体の予算を抑える傾向が聞かれるが、同社では「より多くの人に来てもらえるようにしている」と話す。今夏は「今、世界が注目して活気があり、私たちもこの地のように発展していくイメージ」として、上海での開催を予定。万博期間中で「ホテルが強気の値段だった」というものの、参加権利のポイント数を過去最低の数値とし、「このような明るい話題が少ない世の中だからこそ、お客様に少しでも喜んでいただきたいと考えた」という。
プラスアルファの付加価値を提供
インセンティブツアーを38年以上続けるなか、内容の変化として「以前は、ただ楽しんでもらう旅行だったが、近年はセミナーを入れるようになった」という。セミナーは単に同社や商品の説明だけではない。例えば、前回の香港・マカオセミナーでは「エコセミナー」を開催。同社の洗剤に関連したもので、地球環境の講義をした上で同製品の成分の改正点を話し、どのように環境に貢献できるかを説明するという、広い視点で捉えられて一消費者として考えられる内容としたという。また、健康や美容への関心が高い会員が多いことから、気功やヨガのセミナーも実施し、好評を得た。
このほか環境への配慮として以前、利用ホテルに滞在中のタオルやシーツを交換しない「ノークリーニング」を提案し、参加者も喜んで応じたという。そのホテルは同社のツアー後、ノークリーニングを選択できる取組みを継続して実施しているという。
商品説明は「今は単に商品内容を伝えるだけでは響かない」と話し、ツアー全体でも「遊びだけでなく、プラスアルファの付加価値が求められている」という。インセンティブツアーに対して、単にもてなされるだけでは満足せず、何かを習得したり参加の意義が感じられたりするものを求める風潮が、参加者の意識にでてきているようだ。
取材:本誌 山田紀子