itt TOKYO2024

ロイヤル・カリビアン、日本市場への投資額34%増で23年の収益2割増へ、新市場はミレニアル世代

  • 2022年11月17日
シンガポールから来日したRCIリージョナルディレクター・アジアパシフィックのケネス・ヤオ氏

 ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)はこのほど業界関係者を対象にした「パートナーズパーティー」を開催。アジア太平洋地域におけるクルーズ市場の展望や日本市場の動向について説明があった。

 来日したRCIのリージョナルディレクター(セールス)・アジアパシフィックのケネス・ヤオ氏は冒頭の挨拶でアジア太平洋地域におけるクルーズ需要が回復していることを明言した。2019年に19万人だった乗船客は2022年に30万人以上となり、2022年の予約数も第2四半期から上昇を続けている。好調な需要を支えるのがシンガポールはじめ、インド、マレーシア、インドネシアで、韓国、日本がそれに次ぐ。新規客が75%いることにも触れた。

 さらにヤオ氏は、日本市場への投資額を34%増加することを発表。8月だけで38万人以上が海外に出国したなど日本市場に回復の兆候が現れ、旅行出費を控えていた反動への見込みなど、かつてはシェアが高かった日本市場回復への期待を示した。実際に動きのあるセグメントとして、MICEや3世代家族に加え、ミレニアル世代を挙げ、2023年は2019年比で23%の増収を見込むとした。

コロナ後はクルーズ未経験者が増加

ミキ・ツーリスト クルーズカンパニー マーケティング課マネージャー橋本行彦氏

 ミキ・ツーリストのクルーズカンパニーマーケティング課マネージャー橋本行彦氏はコロナ前後での日本市場の変化について解説した。日本語公式サイトの予約数は6月以降上昇傾向にあり、10月は2019年対比で7割程度まで回復。8〜10月は2019年の月間平均値の6割程度まで戻っており、「RCIに対する強い需要を感じ、日本のクルーズ需要がすぐそこまで来ている」との見方を示した。

 コロナ後に変化がみられたのは、20歳以下と0〜6歳の未就学児、30代、ヘビーリピーターとなる70〜80代の増加で、20代と40〜60代は減少したという。コロナ後はクルーズ初心者が半数近くまでシェアを伸ばし、予約のきっかけは口コミ、インターネット検索で、SNSではTwitterとYouTubeが増加。これらを踏まえ、既存顧客とのエンゲージメントを高めるだけでなく、ファミリー層、若年層への施策に力を入れ、登録者100万人以上のYouTubeチャンネルのサンサンキッズTV、InstagramやTikTokのインフルエンサーとのコラボも実施した。

 さらに、橋本氏は2024年1月に就航する新造船の「アイコン・オブ・ザ・シーズ」を紹介。同船は世界最大となる25万トン級で9950名を収容、LNG(液化天然ガス)を用いたクリーンエネルギー客船で、6つのウォータースライダー、3階建てのファミリースイート、バルコニーと客室が一体化した新タイプの部屋など最新設備が備わり、西カリブ海と東カリブ海を通年運航する。加えて、RCIは「ユートピア・オブ・ザ・シーズ」はじめとする新造船も建造中で、通年配船のシンガポール発着便、オアシスクラスの地中海クルーズ、日本クルーズが実施されるスペクトラム・オブ・ザ・シーズなど多様な商品があり、橋本氏はアフターコロナの「新たなステージで戦うには皆様のご協力が不可欠」と呼びかけた。



円高、物価高のなかでのクルーズの商品価値訴求へ

ミキ・ツーリスト クルーズカンパニー カンパニー長百武達也氏

 ミキ・ツーリストのクルーズカンパニー・カンパニー長の百武達也氏は世界のクルーズの潮流について説明。2020年12月の無寄港運航、2021年5月からは発着地や寄港地のガイドラインに沿ったヨーロッパ・カリブ海の運航、今年7月の米国疾病予防管理センター(CDC)の規制解除を経て、現在は船会社ごとの安全対策がスタンダードになったと説く。「現在、ロシアに寄港するバルト海、ウクライナに接する黒海、東アジアの海域以外のクルーズ船は運航されており、乗船の条件制限もほぼなくなっていることを伝えていきたい」と力を込めた。

 さらに、パンデミック後の世界のクルーズ市場は年平均11%の成長率とされ、新たにZ世代市場の成長、高級ホテルのクルーズ市場参入、好調なMICEを例に、世界ではクルーズは成長市場と見られていることを示した。円高、海外の物価高のなか、宿泊と食事が含まれるクルーズがいかに価格価値が高いかを旅行会社と訴えたいとした。

 百武氏は、来年7〜8月の日本/シンガポール間のクルーズに日本以外からの予約が多数あり、訪日需要が非常に大きく、世界では旅行が動き、クルーズの流れが来ていることを実感しているとし、「これまで海外商品の端にあったクルーズ商品は、コロナ後は海外旅行を引っ張っていく大きなチャンスになる」と主張した。