TRAVEL VISION 業界がわかる!日刊トラベルビジョン

(4)

ジェイズ・コミュニケーションの松崎です。
今回は日常業務の中で使われているPCに関して、個人情報保護の観点からどのような問題があるかについてお話しします。

前にも話しましたが、個人情報の流出経路としては、実はPCの比率はそれ程高くありません。 紙媒体の方が圧倒的に多いのです。でも、見方を変えると恐ろしい事実が潜んでいます。 紙媒体の場合、1枚の紙に書かれている個人情報の量はそんなに多くはありません。 表形式のものであったとしても1枚あたり50〜60件程度ではないでしょうか。そうすると新聞で 見かける100万件規模の流出であれば、2万枚の紙が必要になります。そんなに大量の紙を持ち 歩くことはまずないでしょう。紙媒体からの流出の可能性は、確かに高いのですが、1回当たりの 流出件数は必ずしも多くないのです。たまに廃棄するためにダンボール箱に入れた物を丸ごと紛失 したようなケースもありますが、一般的には数枚の流出です。
ところが、PCからの流出の場合は違います、1つのファイルに500万件の個人情報が 入っていることもあります。1台のPCで考えたとき、一体どれだけの個人情報が入っているか 分からないことの方が多いです。
PCからの情報流出は、1回当たりの件数が紙媒体のそれに比べて 非常に多いのが特徴になります。 このことは非常に重要で、PCだけでなくネットワーク機器やサーバ機器といった機材も含めて、 物理的、技術的対策を要求されるのは、この特徴に大きく関係しています。

日本のネットワーク環境は世界の中でもかなり高い位置に属します。日本中至る所で高速なネットワーク環境を使用することが出来ます。不正アクセスを行う人は、相手の傍にいる必要はありません。遠く離れた日本のどこかで犯行を企てている人が、密かにあなたの会社のネットワークに浸入しようとしているかもしれません。そして、一度会社のネットワークに浸入してしまえば、 あっという間に会社の情報を根こそぎ盗み出すことが出来てしまいます。危険は外からの不正アクセスだけではありません。最近では誰でも持っているUSBメモリも脅威の一つです。大容量で高速アクセスが可能なUSBメモリは、小型なため使用していることも分かりにくく、持ち歩いていることを認識するのはほとんど無理です。もし、社内にいる誰かが、適当なPCにUSBメモリを差し込んで、PCの データを丸ごとコピーしても、その事実に気がつく人は少ないでしょう。USBメモリは、128MBから2GBの容量のものが一般に売られています。フロッピーディスクの容量が1.44MBですから、約90枚〜1400枚分以上に相当します。CDの容量は640MBで、大きな差はありませんが、USBメモリはCDに比べてアクセスが高速で携帯性が高いのが特徴になります。

それでは、どんな対策を行えば良いのでしょうか、まずPC本体ですが、ログインの時のID/パスワードの設定とウィルス検知ソフトの導入は最低限行うべきです。ノートPCでもデスクトップPCでも、使用者を限定して、その人しか使えないようにID/パスワードの設定を行ってください。最近ではPCに指紋認証の機能がついた物がありますので、これも利用しましょう。窓口業務のように複数の担当者が1台のPCを共有する場合もありますが、ID/パスワードは必ず設定してください。また、担当者が一時的にPCから離れることもありますから、スクリーンセーバをパスワード付きで設定して下さい。
ノートPCを社外に持ち出す場合は、極力、PCの中に個人情報や社外秘のデータを入れないようにした方が良いでしょう。置き引きや車上荒らしで盗まれたり、どこかに置き忘れたりした場合に、PC自体の損害以外に情報流出が起きてしまいます。PCにID/パスワードの設定を行っていても、中のハードディスクを取り出して別のPCにつなげてしまえば、内容を見ることが出来ます。個人情報や社外秘の情報はUSBメモリーなど別の場所に入れて、別々にしておくと安全です。別々にすることが難しいのであれば、HDDを暗号化してしまうのも一つの方法です。ウィルスの被害にあわないよう、ウィルス検知ソフトを入れることが一般的な方法です、ただし、メーカーから提供されるパターンファイルのアップデートを忘れないようにしましょう。漏れがないように、PC起動時などに自動でアップデートを行う設定を施した上で、更に手動のアップデートも実施するようにしておくと、より安全だと思います。

最後に会社のネットワーク環境とサーバ保護についてお話します。 会社のネットワークと外のインターネットとの接続にはファイアーウォールを入れるなどして、外部からの不正 アクセスを防御しましょう。また、社内のネットワークの中で無線LANを使用している場合には、社外から勝手に 利用されないように設定しましょう。以前ニュースで流れていましたが、ちょっと性能のいいアンテナをPCに つないで、丸の内の官庁街やオフィス街を調査したところ、自由につなげる無線LANが多数あって、そこから ネットワークに入ると中の人のPCの中身まで見えてしまったという例もあります。さすがに最近は防御されている と思いますが、無線LANは小さな放送局です、半径100mの範囲に電波が届くことを忘れないでください。 そして、最後にサーバですが、どんな規模の会社であっても、サーバを使用している場合には、そのサーバに アクセスできるPCを限定し、接続するにはID/パスワードが必要なように設定して下さい。ネットワークに浸入されても、 その先につながっているPCやサーバにID/パスワードがきちんと設定されていれば、すぐには情報の流出は発生しない でしょう。盗もうとしている情報が明確であれば別ですが特に目的なく浸入した場合には、面倒なことはしたくない ものです。一般の空き巣と同じで、鍵が2つも3つもあるところは避けるようです。
次回は社員の教育についてお話します。
1 ] [ 2 ][ 3 ] [ 4 ][ 5 ][ 6 ]
copyright