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ジェイズ・コミュニケーションの松崎です。
個人情報保護講座2回目は情報の流出経路について、お話しましょう。
個人情報の流出と聞くと、前回お話したWinnyによる流出のようにコンピュータ経由での流出を想像される方が多いと思います。たしかに情報処理推進機構セキュリティセンター(IPA)に届けられた不正アクセス件数は毎年600件以上と多く、世間の噂話でもコンピュータをインターネットに接続する場合には十分に注意しないと、不正にアクセスされて大事な情報が盗まれる危険性がある、と言われています。でも、実際には紙媒体経由での流出事件が全体の50%近くを占めているのです。
ちょっと信じられない話かもしれませんが、色々な調査でも同じような結果が報告されています。
もう少し詳しくお話しましょう、流出事件・事故のニュースや各種調査に出てくる個人情報の流出には、流出経路と流出原因があります。今回は流出経路のお話のつもりでしたが、これら2つのことが組み合わさって流出が発生しているため、両方のお話をします。

情報の流出経路について

個人の過失・ミスによる流出
個人の過失・ミスによる流出 流出事件・事故で一番多いのは、個人の過失、ミスによるものです。電車の中にかばんを置き忘れた、間違えて捨ててしまった、シュレッダーにかけてしまった、別の人にメールを 出してしまったなどがあります。これらは、社員が通常の業務の中で起こしてしまうものでいくら強固な防御策を講じても、個人の認識が低ければ何時でも発生しますし、現実に多数発生しています。今まではよほど重要な情報でなければ無造作に扱っていたことの証明でもあります。ニュースで多数取り上げられるのは、個人情報保護法が施行され マスコミ及び会社の意識が高まり、従来うやむやにされていたことが表に出てきただけで、過去を考えればいくらでも同じことが発生していたのではないでしょうか。 会社のオフィスを見たときに、プリンターやFAX、コピー機のところに書類が放置されていませんか、机の上に沢山の書類が積まれていませんか、これらは全部紛失予備軍だと思います。
盗難による流出

盗難による流出 二番目に多いのは、盗難です。駐車場に止めた自動車の中に置いてあったかばんやPCが車上荒らしによって盗まれた、ひったくり犯にかばんを持ってかれた、会社の事務所に泥棒が侵入してPCを盗まれた、これらの犯行は金銭目的で行われています。でも結果的に盗まれた物の中に個人情報が含まれていれば、個人情報の流出と表現されます。 最近ではコンビニの駐車場に車を止めて、タバコを買って帰るまでの数分間の内に車の鍵を開けられて中に置いてあったPCが盗まれるといった、短時間での犯行が多数発生しています。また、警備会社の警備システムを導入しているオフィスで、警報が鳴ってガードマンが現場に到着するまでの間に会社内のPCを全部持っていかれたなど、計画的な犯行も発生しています。従来の常識では通用しない世の中になっているのではないでしょうか。

ここまで読んでいて、「おや?」と思いませんか、全然個人情報保護の話じゃないですね。
そうなんです、流出した物が個人情報を含んでいるので、個人情報の流出事故・事件と言われていますが、本質は一般的な物の管理と同じです。最初から個人情報を狙っての事件・事故は実は少ないのです。従って、個人情報に限らずに会社の備品、資料、金品の管理をしっかり行っていれば、これらの問題は起きない可能性が高くなります。
ただ、四六時中注意をして仕事をするのは精神的にまいってしまいます、そこで重要な物を明確にして、メリハリをつけた管理体制を作り上げることによって効果的な対策を行うことができると思います。
その重要な物に個人情報を加えてください。お客様から預かった申込書や添付書類、住所録、ホテルや旅館への手配書、チケットの発行控えなどで、特に住所、氏名、電話番号、クレジットカード情報が載っているものは要注意です。

コンピュータへの不正侵入
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コンピュータへの不正侵入最後にコンピュータへの不正侵入についてお話しします。最近ではネットワーク機器の進歩もあり、会社外からの不正侵入は非常に難しくなっており、一部の高度な技術を持ったコンピュータ犯罪者以外が浸入することは少なくなっています、しかし会社内部の人間が他人のPCを操作したり会社のサーバーにアクセスすることは必ずしも難しくはありません。
実際私が担当した会社でも、PCのログインにパスワードを設定していない、設定していても誰でもすぐにわかる社員番号や名前を使っている、サーバーのアクセス制限は行っていない、もちろんアクセス記録は取られていないので誰がアクセスしたのか不明といった状況でした。
この状況は大企業でも中小企業でも官公庁でも変わりません。
このような状況の中で明らかに個人情報を狙った犯行が発生します。社内のサーバーにあるお客様の情報を名簿業者に売った、会社で持っているDM情報を競合会社に渡した、業務上で手に入れた多重債務者の情報を闇金業者に売ったなどなど、沢山の事例があります。
この場合、犯人は会社の社員または派遣社員、委託業者などで、内部の人間による犯行と言えます。これらを防止する対策は簡単には書けませんが、コンピュータおよびネットワークに対する技術的な対策を行うことにより可能になります。ただしどんなに厳しい対策を行っても、最後は人の問題になり、本人の認識が低ければ犯行は起こります。
まだまだ、書きたいことは一杯ありますが、今回はここまでとさせていただきます。
次回は、典型的な流出事件を元に詳しくお話したいと思います。
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