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トップインタビュー:JATA会長 田川博己氏

海外・訪日の2000万人市場形成に注力
国内は地域との密着で強化

-訪日旅行については、JATAでも認証制度などの取り組みを進めています

田川 訪日外国人に向けて安全で公正なツアーを提供すべく、昨年には「ツアーオペレーター品質認証制度」を立ち上げており、内外にアピールしていきたい。今年と来年が正念場になると思うので、ダボス会議など世界の大舞台でアピールしたいと考えている。できれば中国やアセアン諸国などで説明会も開きたい。

 今のところ、訪日旅行に関しては旅行業法でカバーされていないが、我々は海外・国内・訪日の三位一体で業界の発展に取り組む所存で、法律も三位一体で作られるべきと考えている。JATAとしては認証制度を確立しながらフォローしていくつもりだ。


-認証の取得は、中小企業にとっては難しい部分もありますが

田川 現在の訪日旅行の規模では、中小企業にとってはビジネスにならないと思う。しかも訪日外国人の3分の1は、外交関係の不安定な中国と韓国から来ている。ただし今後はアセアン諸国からの旅行者が圧倒的に増えるので、ビジネスとしての現実性は増す。

 もしも中小企業が訪日旅行に取り組むのなら、年間1500万人規模に拡大するまでは待った方がいいのではないか。海外旅行も年間1000万人を超えた辺りで、初めて中小企業のビジネスが成り立つようになり、旅行会社も急増し始めた。訪日旅行とは早い話が国内旅行のことなので、それまでは国内旅行の商品の造成にしっかり取り組んでおく必要があるだろう。


-国内旅行について、これまでの評価と今後の展望は

田川 JATAの取り組みの歴史はまだまだ浅いが、東日本大震災によって目覚めたところがある。観光地の疲弊を目の当たりにしたことで、旅行会社は「我々に何ができるのか」と自問したはずだ。震災に限らずとも、疲弊した観光地の再生のために旅行会社が協力するのは当たり前のことで、この3年間でようやくその考えが定着してきたと思う。

 旅行会社による地域づくりなどへの参画も、ここ1、2年で活発化し始めた。自らイベントを開催したり、地域発のパッケージツアーを造成したりと、努力している旅行会社は多い。しかし中途半端になっている会社も多いので、奮起を促したい。そのことが訪日旅行の活性化にもつながる。

 かつての旅行会社では日程表を作ることを価値と見なしていたが、今求められているのは「その日程の中で何をするか」だ。旅行会社がコンテンツをしっかりと開発し、提案することこそが旅行業界の「価値創造」に繋がる。


-具体的にどのような価値を創造していくべきですか

田川 JTBで取り組んでいたDMC(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)などが1つの例で、難しいことではない。旅行会社が今後、自らの手で新たな価値を作り出すためには、「我々の仕事は何か」を自問していく必要があるだろう。販売業なのか、開発業なのか、斡旋業なのか。自らの価値がどこにあるのかを知らなくてはいけない。

 そのためには大企業も中小企業も、それぞれの体力をしっかり分析する必要がある。無闇に全国区をめざすのではなく、例えば鉄道系の会社であれば、その地域にしっかりと根付き、全国区の大企業を跳ね返す気概があってもいい。地域への密着は旅行会社の最重要課題の1つだ。意欲のある地域の会合には、もっと旅行会社が出席しなくてはいけない。地域に密着して良い商品をつくることさえできれば、今では販売方法の選択肢は多い。