人力×テクノロジーで業務渡航に新風、「ハイブリッドTMC」が日本にも

ベアテイルTravel事業部長の阿部洸希氏 経費精算関連サービスを提供するベアテイルが、テクノロジーとヒューマンタッチを融合する出張手配・管理システム「Dr.Travel」の提供を開始した。現在はベータ版だが今秋には正式版を稼働し、11月には経費精算の「Dr.経費精算」と同一のIDとパスワードでサービスを利用できるようにする計画。

 ベアテイルの創業は2012年で当初は家計簿アプリを提供していたが、16年からは経費精算の事業を本格化。現在では経費精算を中核事業とし、リクルートマネジメントソリューションズや日本テレビ、川崎汽船など350社以上にサービスを提供している。

 請求書のデータ化は、約2000名のオペレーターが24時間365日の体制でマニュアル入力しており、それによりOCRでは実現不可能な99.9%超という精度を実現しているのが強みという。また、「時間革命を起こす企業グループ(Time Hack Company)」を標榜し、顧客の作業時間削減に資するよう領収書原本の取り扱いや申請書とデータの突合作業などをBPOで受託し、オペレーターが代行するサービスも提供している。

 ベアテイルでTravel事業部長を務める阿部洸希氏によると、このようにクラウドを活用して人間の労働力をシステムの要素として組み込むことを「ヒューマン・コンピュテーション(Human Computation)」と表現するといい、旅行事業でも同様の手法を活用する。

 旅行事業は、もともと経費精算事業のなかで出張経費が多いことからシステムを自社開発。第3種旅行業者として登録し、すでにベータ版のトライアルプランの利用が始まっている。

 阿部氏によるとDr.TravelはいわゆるOBTではなく、ユーザーが出張予定データを作成した後はユーザーとのやり取りや手配といった作業を社員やオペレーターが分担して実行し、出張規定やユーザーの希望に合ったプランを複数提示。また、経費精算で培った技術やノウハウを活用して手配などの作業を細分化し、その内容に応じて担当者を分けることでコスト削減を実現しているという。

 一方、顧客企業側に対しては、すべての出張データを、手配時のチャットによるやり取りや選ばれなかった選択肢などの記録とともに一元管理できること、出張規定を遵守させられること、出張者の所在地把握など安全管理を強化できることなどをメリットとして打ち出す。さらに、年間の想定出張者数に応じた年額の手数料契約とすることで、航空券やホテル、レンタカーなどすべての商材を原価で提供し相見積もりが不要となることもアピールしていく。

 阿部氏によると、もともとブッキングツールとしての機能の開発も済ませていたものの、出張者が比較検索する手間を考慮すると人間が介在する形の方が良いと判断したという。

 今後については、Dr.経費精算の顧客企業に採用を働きかけつつ、逆に将来的なDr.経費精算の導入を期待しDr.Travel単独での営業も積極的に推進していく。今年後半には年間の海外出張が500件、国内出張が7500件という企業も利用を開始する予定。現在は、社員2名のほか旅行業経験のある業務委託先や十数名のオペレーターが作業を担っているが、将来的には経費精算と同様、オペレーターを2000人規模まで拡大したい考えだ。

 なお、海外では出張手配においてヒューマンタッチとテクノロジーを融合しようとする企業は多く生まれており、例えば海外業界メディアのPhocuswireによると今年4月には米国のPanaが1000万米ドル(約10億5800万円)を調達。また、Skiftは2019年注目の旅行系スタートアップ25社のひとつとして、ドイツのComtravoを選んでいる