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週間ランキング、1位はデルタの成田縮小-「傾斜配分」要望も

[総評] 今週は、デルタ航空(DL)が成田空港発着の3路線を運休する記事が1位でした。日米間では次の冬ダイヤから日中に羽田線を運航できるようになるわけですが、これによってDLが成田に構えるハブ機能の価値が低下するからキャパシティを減らす、ということのようです。

 日米間の航空市場では、この数年間で条件付きながらオープンスカイが実現したり羽田路線が開設されたりジョイントベンチャーが始まったり、あるいはDLがスカイマーク(BC)の再生支援に名乗りを上げたりと実に様々な出来事がありました。改めて振り返ると、DLにとってはそれらのかなりの部分が向かい風になったのかもしれません。

 日米間に限っていえば運休するのはニューヨークの1便だけで、羽田からロサンゼルスとミネアポリスに就航する計画ですので、DLの日米間の座席が減少するわけではありません。しかし、成田空港からしてみればすべて純減であり痛手です。

 成田と羽田の関係では、羽田の再国際化の際に「羽田に飛びたければ成田を維持せよ」という「成田縛り」のルールが日本の航空局によって航空会社に課されていました。しかしDLの決定はこれに真っ向から衝突するもので、他社でもこれまでに同じような動きが認められていることから、どうやら同ルールはすでに拘束力を失っているのかもしれません。

 かもしれない、というのはそもそもルールの存在が公にはなっていないからで、昨年の前半に一般メディアでも取りざたされた後は話題になることが少なくなってうやむやになっています。ただ、国内外のLCCが当初の予想以上に存在感を増しており、インバウンド需要も引き続き好調ですので、この辺りがルール形骸化の背景にある可能性を感じます。

 また、航空行政のルールという意味では、4位に入った記事も一筋縄ではいかない話題です。日本航空(JL)の経営再建時にほどこされた公的支援によって競争環境に歪みが生じたことについて、全日空(NH)が引き続き是正を求めたものです。先週の当欄でも触れましたが、確かに2社の決算の内容には隔たりがあり、NH側の言い分は十分すぎるほど理解できるものです。

 ただ、格差が是正されたと判断する基準がどこにもないことは問題でしょう。そしてそれは、大前提として政権交代のひずみがあるにせよ、そもそも最初の傾斜配分の際にロジックの組み立てが不十分であったからに違いありません。どのような事情があったとしても、屁理屈でもいいから一貫して正当性を主張できるようにしておくのは行政に限らず鉄則です。

 しかし実際にはほとんど恣意的といっていい判断がなされており、これまでの説明ではこれ以上の傾斜配分は不可能であったものの、このまま行けばいくらでもよく分からない理屈が登場してくるのではないかと勘ぐってしまいます。先述の通り、心情的には今一度の格差の是正があっても良いと感じていますが、あくまで重要なのはそれが先に決まっていて、関係者の理解が得られていることです。

 リオでの日本人選手の活躍が伝えられていますが、スポーツが面白いのは、人を熱中させ感動させるのはルールがあるからです。例えばラグビーにはシンビンといって、危険なプレーや反則をした選手を一時的にフィールドの外に出すルールがありますが、その時間は10分(7人制では2分)と決まっています。審判や主催者の都合によって際限なく変わっていくかもしれないペナルティなど、ペナルティの要件を満たしません。

 願わくばNHには、そうした制度側の悪癖とその問題点を踏まえた上で格差是正の条件を明示して要望を出してほしいところですし、そうすることによって真のフラッグキャリアとしての矜持を示し、航空業界を牽引していってほしいと感じています。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2016年08月05日0時~08月19日18時)
第1位
デルタ、今秋に成田3路線を運休、羽田昼間枠の開設受け(16/08/12)

第2位
デルタ航空、システム不具合で870便超が欠航、停電が影響(16/08/09)

第3位
エジプト航空、11月から定期チャーター、週1便で関空・成田発(16/08/16)

第4位
全日空、JLとの格差是正は「不完全」-羽田増枠分も傾斜配分要望(16/08/15)

第5位
茨城空港から国際線が減少、9月から春秋の1路線に(16/08/18)

第6位
キーパーソン:島根県邑南町観光振興係長の寺本氏(16/08/16)

第7位
楽天トラベル、予約から「マッチング」へ、人工知能活用も(16/08/08)

第8位
Vエアー、親会社のトランスアジアと合併、10月に運航停止(16/08/10)

第9位
Vエアー、羽田、茨城/台北線運休、9月20日から-中部減便も(16/08/08)

第10位
JTB、新興企業と事業開発へ、「旅行じゃないアイデア」募集(16/08/17)

第11位
エア・カナダ、10年以内に「世界のトップ10」に-旅行会社を表彰(16/08/07)

第12位
ラタム航空、日本での活動を本格化、収益増めざす(16/08/15)

第13位
日系2社、16年お盆の国際線予約は4.7%増、アジアが好調(16/08/07)

第14位
タイガーエア台湾、冬ダイヤで高雄/関空線増便、成田線は減(16/08/08)

第15位
日系2社、6月の国際線旅客は5.6%増、NHは全方面増加(16/08/08)

第16位
7月の旅行業倒産は1件減の1件、大阪の第3種が破産(16/08/09)

第17位
フォトニュース:成田、羽田のビジネスジェット専用ターミナル(2016/8/9)

第18位
日本航空、日本経済大学と連携協定、10月に記念講演も(16/08/09)

第19位
ガルーダ、ジャカルタ発着便を順次新タミに、MCT変更(16/08/07)

第20位
全日空、50機目のB787受領、羽田/アジア線に投入(16/08/16)


※夏の休刊期間を挟んだため、8月5日からの2週間の掲載分をランキング集計対象とし、順位も20位まで掲載しています