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海外医療通信2016年2月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院・渡航者医療センター

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・海外感染症流行情報(2016年2月)

(1)中南米でジカ熱の流行が拡大

中南米でジカ熱の流行が拡大しています。2月中旬までに流行が確認されている国と地域は28にのぼっています(WHO 2016-2/19)。とくにブラジルでの患者発生が多く、2015年からの累積患者数は約150万人に達しました。またブラジルでは小頭症の新生児が2015年11月以来、5000人以上確認されており、ジカ熱感染との関連が強く疑われています。また、流行地域ではギランバレー症候群という神経疾患も増加しており、ジカ熱による合併症の可能性があります。

こうした事態を憂慮して、WHOは2月1日にジカ熱の流行が公衆衛生上の緊急事態であるとの宣言を発しました(WHO 2016-2/1)。また、日本の厚生労働省は2月にジカ熱を感染症法の四類感染症に指定し、医療機関で診断された患者は直ちに保健所に届け出る扱いにしました。

ジカ熱は蚊に媒介される感染症であり、流行地域では蚊に刺されない注意をすることが大切です。発病しても軽度の発熱や発疹が出る程度で回復しますが、妊娠中に感染すると胎児に小頭症をおこす可能性があります。このため、妊娠中の女性は出来るだけ流行地域に渡航しないようにしましょう。流行地域は下記の厚労省のホームページをご参照ください。http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000113142.html

なお、ジカ熱のウイルスは感染した男性の精液にも存在し、性行為で女性に感染させる可能性があります。米国ではこうした経路で感染した女性が14人確認されました(米国CDC 2016-2/24)。このため、流行地域から帰国した男性は、症状の有無にかかわらず、帰国後1カ月間は妊婦との性行為の際にコンドームを着用することが推奨されています。

(2)北半球での季節性インフルエンザの流行状況

北半球の国々では季節性インフルエンザの流行がピークを迎えています(WHO 2016-2/22)。ウイルスの種類はA(H1N1)型が主に流行していますが、B型ウイルスの検出も増えてきました。今季は世界的に流行の始まりが遅かったため、3月に入っても流行が続くものとみられています。

(3)中国での鳥インフルエンザの流行状況

中国では毎年冬の時期にH7N9型の鳥インフルエンザの流行が発生しています。今冬は2015年12月末~2016年1月末に28人の患者が確認され、うち5人が死亡しました(WHO  2016-2/10)。地域別では浙江省(13人)、江蘇省(5人)、広東省(4人)など南部の沿岸地帯が多くなっています。患者の約90%は発病前に生きたニワトリとの接触が確認されています。流行地域では、生きたニワトリが販売されている市場などに立ち入らないようにしましょう。

(4)東南アジアのデング熱流行状況

シンガポールでは今年になりデング熱の患者数が増加しています。1月末の1週間で630人の患者が確認されました(WHO西太平洋 2016-2/9)。マレーシアでも昨年より患者数が増えている模様です。今年は東南アジアでのデング熱流行に注意が必要です。

(5)アフリカ南部のアンゴラで黄熱が流行

アンゴラでは首都ルアンダを中心に2015年12月中旬から黄熱の流行が発生しています(WHO 2016-2/12)。患者数は2月中旬までに300人にのぼっており、このうち75人が死亡しました(米国CDC 2016-2/22)。アフリカでは黄熱の流行がジャングルなどで頻繁におきていますが、今回のように都市部で流行が拡大するのは久しぶりのことです。なお、アンゴラでは入国者全員に黄熱ワクチンの接種を要求しています。

(6)中南米の蚊媒介感染症

中南米ではジカ熱以外にも蚊に媒介される感染症が流行しています。今年はブラジルでデング熱の患者が増加しており、1月上旬だけで7万人の患者が発生しました(ProMED 2016-2/17)。チクングニア熱も2014年から中南米各地で流行がみられていますが、2015年は全体で68万人の患者が確認されました。この中でもコロンビアでは患者数が38万人と多くなっています(米州保健機関 2016-2/19)。これらの感染症を媒介するネッタイシマカは昼間に吸血する習性があり、中南米に滞在する際には昼間、蚊に刺されない対策をこころがけましょう。


・日本国内での輸入感染症の発生状況(2016年1 月11 日~2016年2月7日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.htmll

(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢3例、腸管出血性大腸菌感染症2例、腸・パラチフス6例、アメーバ赤痢7例、A型肝炎2例、E型肝炎1例、ジアルジア1例が報告されています。腸・パラチフスがやや増加しており、ネパールやインドなど南アジアでの感染がほとんどでした。また、E型肝炎はインドネシアでの感染でした。

(2)蚊が媒介する感染症:デング熱は輸入例が17例で、前月(26例)から減少しました。このうち1例はデング出血熱として報告されています。感染国はほとんどが東南アジアの国々ですが、ブラジルでの感染も2例報告されています。マラリアの報告はパプア・ニューギニアでの感染が1例で、前月(1例)に続いて少なくなっています。

(3)その他の感染症:風疹のフィリピンでの感染が1例報告されています。


・今月の海外医療トピックス

4月24-30日は世界予防接種週間

昨年もご紹介しましたが、WHO(世界保健機関)は毎年4月の最終週を世界予防接種週間とし、世界各国に向けて予防接種のキャンペーンや啓発活動を行っています。今年は昨年に引き続き“Close the Immunization Gap”をテーマに開催されます。

世界的な小児への予防接種状況では、B型肝炎ワクチンが2012年末までに181国で小児に接種されており、ムンプスワクチンも同様に120国で導入されています。日本国内でも今年より小児に対するB型肝炎ワクチンの定期接種化が予定されていますが、多数のワクチンを接種しなければならない子どもや小児科医の負担軽減からも、コンビネーションワクチンの導入が望まれます。 兼任講師 古賀才博  参考 http://www.who.int/campaigns/immunization-week/2016/event/en/


・渡航者医療センターからのお知らせ

(1)ジカ熱最新情報掲載のお知らせ

当センター部長の濱田が管理しているホームページ「海外旅行と病気」にジカ熱最新情報を掲載しました。下記になりますので、ご参考にしてください。

http://www.tra-dis.org/zika/index.html

(2)レジリエンス外来(海外勤務者のメンタルヘルス外来)のお知らせ

当センターでは海外勤務者のメンタルヘルスに対応するレジリエンス外来を設置しています。「レジリエンス」とは、環境の変化に対し「しなやかに」「したたかに」適応していく力のこと。様々な変化が一度に起きる海外赴任では、このレジリエンスが健康な生活を送る鍵となります。当外来では、精神科専門医が海外勤務者のメンタルヘルス対策のご相談にのり、レジリエンスを高めるお手伝いをいたします。詳細は当外来のHP(リンク先)をご参照ください。

http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/resilience.html

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