外務省が危険情報の表記変更-JATA、要望で「一定の成果」

  • 2015年8月6日

 外務省は9月1日から、「海外安全ホームページ」で提供中の「渡航情報」について、名称を「海外安全情報」に変更し、「危険情報」のカテゴリー表記と説明を変更する。イスラム過激派組織ISILによるシリアの邦人殺害事件を契機とした国際情勢の変化を踏まえおこなうもの。渡航情報の表現が変更されるのは2002年以来13年ぶりで、外務省では「わかりやすい表現に改める」としている。

 新たな表記では、危険情報の従来の4段階のカテゴリーは維持。レベル1の「十分注意してください」に変更はないが、レベル2は「渡航の是非を検討してください」を「不要不急の渡航は止めてください」に、レベル3は「渡航の延期をお勧めします」を「渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」に、レベル4の「退避を勧告します。渡航は延期して下さい」は「退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)」に変更する。また、危険情報カテゴリーの説明についても、以下の表のように変更した。

 外務省によると、2月3日に外務大臣の岸田文雄氏による指示のもと「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」を設置。計11回の会合の後、5月26日に提言を取りまとめており、今回の変更はその提言に沿っておこなう。

 日本旅行業協会(JATA)では、5月26日の提言が発表された時点で、海外旅行需要への影響に対する懸念を広く表明し、旅行会社の安心安全に関する取り組みに配慮してもらえるよう要望してきた。7月には全国旅行業協会(ANTA)と連携し、各会長名で要望書を提出している。8月6日の定例会見で、JATA事務局長の越智良典氏は変更案について「全体のトーンが『海外旅行は危ないから行くな』という雰囲気で、海外旅行需要が減退するのでは、と懸念を抱いた」と語り、外務省と十数回に渡り協議を重ねてきたと振り返った。

 外務省との主な論点は、危険情報のレベル2の表記。越智氏はレベル2の発出で自動的にツアーの催行を中止する旅行会社が多いが、一部の大手旅行会社や各地域の専門旅行会社は、十分な安全対策を取ることができる場合はツアーを催行していると説明。「不要不急の渡航は止めてください」という表現はこうした旅行会社の集客に大きな影響を及ぼすとし、変更を要望していた。

 JATAがレベル2でツアーを催行する専門旅行会社3社におこなったアンケートによると、合わせて年間2000名の影響があるという。また、大手旅行会社を始め、レベル2に指定された地域で乗り継ぎするツアーもあることや、出張などのビジネスへの影響も挙げ、「もう少し断定調でなく、検討の余地のあるような表現に変えて欲しい」と訴えていた。さらに、旅行会社が安全管理をおこなっている点についての言及も要望していたという。

 越智氏は今回の発表について、外務省との協議の結果、一定の意見は反映できたとし、「100点満点は取れなかったが、お客様の安全を守りながら、旅行会社のツアー催行についてもある程度担保できた」と語った。要望による変更点としては、危険情報の表記の横に、同じ文字フォントで各カテゴリーに関する詳細な説明を掲載。レベル2については「渡航する場合には特別な注意を払うとともに、十分な安全対策をとってください」という文言が付加されることで、消費者に与えるネガティブな印象の軽減がはかれる見込みだ。

 また、危険情報について説明する項目では、「危険情報の発出の目安」の項目で「発出は一般的な個人旅行者を対象したものと想定しており、安全対策を講じている旅行会社による企画旅行とは異なる」という主旨の記述を加えることとなった。さらに、「危険情報が出ても自動的に旅行会社の企画旅行が中止になることは ありません」の項目では、旅行会社が自己の責任において企画旅行の実施を判断している点をより明確にした。加えて、取消料は各社の規定によること、旅行会社を選ぶ際の安全対策を判断基準に入れることなどを今までと同様に盛り込む。

 さらに、今回は新たに「旅行業界では観光庁の指導のもと旅行安全マネジメントを推進しており、JATAでは海外旅行の安心安全な実施のためのガイドラインを策定している」と明記。ガイドラインにリンクを貼って紹介する。

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