明確なテーマ設定でより深い興味を喚起
アイルランド、3つの旅テーマ

テーマ素材になる、世界自然遺産のジャイアンツコーズウェイ

　アイルランドといえば緑の牧草地が広がるのどかな国。小さいながらその歴史は深く、また数多くの文豪を排出していることもあり、見どころには事欠かない。リピーターの根強いデスティネーションだ。しかし、一般的にはその観光的な魅力が知られておらず、何を目的に訪れるか、モチベーションに欠けるのではないか。そこで、アイルランド政府観光庁では「城」「自然」「世界遺産」の3つのテーマを設定した。テーマを軸にさまざまにルートを作成できるのでツアー造成がしやすいほか、明確なイメージを打ち出すことで、ファン層以外にもアイルランドへの興味を喚起するのにも役立ちそうだ。テーマにあわせて、7月に実施されたFAMツアーに参加した。

バラエティあふれる「城」の数々
セルフガイドよりもガイドツアーを

ブラーニー城の人気アトラクション、ブラーニーストーン

　アイルランドはロンドンのほか、ヨーロッパ主要都市で乗り継ぎ1時間から2時間、日本からも同日着が可能だ。今回はコークから入り、英国領北アイルランドのベルファストへ抜けつつ、それぞれのテーマに基づいた観光素材を視察してまわった。

毒草のガーデンにはマンドラゴラやケシ、イチイの木などの“毒草”があり、触ったり匂いをかぐのは禁止との注意書きも

　まずは「城」テーマでの視察。アイルランドではおそらく、世界で最もその名を知られていると思われるブラーニー城へ。キスすると饒舌になれるというブラーニーストーンはちょっとしたアクティビティ風で人気だ。数年前から城の裏手に併設された「毒草のガーデン」は、城の歴史とはあまり関係がないようだが、ドクロのマークとともに記載された説明は大変興味深い。

リズモア城は庭園のみの見学。咲き乱れる花々に心和む時間だ

　次はブラーニー城から車で約1時間の距離にあるリズモア城。現在も持ち主の居城であるため内部に入ることはできないが、城を借景に7エーカーもの美しい庭園とアートギャラリーが楽しめる（4月から9月まで）。聖カーセイジ大聖堂の鐘楼も見え、中世の雰囲気がたっぷり。ホテルとして宿泊することができ、執事など使用人ごと城を借り切り“お城生活体験”ができるという。

オーモンド城は14世紀初頭にはすでにこの地にあったとされる

　リズモア城からキャリック＝オン＝スールへは車で1時間ほどの移動だ。ひっそりとした小さな村のはずれにオーモンド城があり、こちらは国の管理下にあり無料で一般公開されている。館には、かつての城主の寝室やダイニングを再現してあり、同時代に使われていたものと同じアンティーク家具を設置。屋根裏の柱に残された無数の切り傷は、17世紀のクロムウェル侵攻の際に最後まで戦った兵士が残したものという逸話も残る。こぢんまりした城だが、スタッフの話を聞きながら見学すると大変奥深く、この地の歴史に深く根付いていることを実感する。

　キャリック＝オン＝スールから車で約1時間、最後に訪れたのはキルケニー城だ。年間20万人が訪れる人気の城で、歴史は13世紀初頭までさかのぼる。ガイドツアーは聞いていると城に対する愛情がひしひしと伝わってくる。英語のみだが通訳をつけてでも一聴に値するのでおすすめだ。

　南部コークからキルケニーへ、駆け足で4つの城を1日で巡った。実際のツアーではもっとじっくりまわるべきだが、「城」といってもそれぞれ違う雰囲気で、見どころや楽しみ方もさまざまであることを発見。アイルランドには全域にわたって数多くの城があり、幽霊が出ると評判だったりディナーショー付きのツアーがあったりと、特徴のあるものが多い。どの町から入っても、城好きな人を心行くまで満足させるプランの造成が可能だ。

のんびり「自然」のなかをトレッキング
ひょっこり現れる“遺跡”も

ウォーキングルートへの看板。あまり目立たないが、アイルランド中にいくつもある ビューポイントにはちゃんと番号がつけられ案内がある

贅沢なリゾート滞在でゴルフ三昧の休暇
～ハワイ島のゴルフリゾートを紹介～

リゾート内にあるゴルフコースでゴルフ三昧に

　ハワイでのゴルフバケーションの楽しみ方には色々あるが、真っ青な海を背景に爽やかな気候の中でのんびりとゴルフを楽しむなら、ゴルフコースを併設した贅沢なリゾートホテルや高級コンドミニアムに宿泊するのが一番だろう。観光客で賑わうワイキキの雑踏を離れた静かな環境で、心ゆくまでゴルフをしたいという人には、隣島でのゴルフをすすめる手もある。今回はビッグ・アイランド（ハワイ島）のゴルフリゾートを紹介しよう。


宿泊の選択肢が豊富なワイコロア

ワイコロア・ビーチ・リゾートのビーチコース

　ビッグ・アイランド（ハワイ島）にはリゾートエリアが幾つかあるが、やはり中心となるのはコハラ・コーストだ。コハラ・コーストにはリゾートホテルやコンドミニアムなどの選択肢が豊富で、予算やグループのサイズに合わせて選択することができる。

キングコースの5番ホール

　その中でもゴルフ三昧の休暇が目的のゴルファーにすすめたいリゾートのひとつが、ビーチコースとキングコースの2つのゴルフコースを有するワイコロア・ビーチ・リゾートだ。コナ空港から車で北に約35分でワイコロアリゾートの入口に到着する。1200を超える客室数のヒルトン・ワイコロア・ビレッジ、541室のワイコロア・ビーチ・マリオット・リゾート＆スパなどのリゾートホテルをはじめ、家族や少人数のグループならコンドミニアムなど、利用者のタイプやサイズに応じて宿泊施設を選べるのもポイント。海辺に建てられた、落ち着いた雰囲気のハリイカイ・アット・ワイコロア、あるいはオーシャンビューの眺望にこだわらないゴルフ三昧の小グループなら、ゴルフコース沿いに建てられたアストン・ワイコロア・コロニーヴィラ、アウトリガー・フェアウェイ・ヴィラズ、ビスタ・ワイコロアなどが手頃な価格で満足できる。

キングコースの「キングスグリル」はダイニングスポットとしてもおすすめ

　ワイコロア・ビーチ・リゾートのゴルフコースは、リゾート内のホテルやコンドミニアムに滞在すれば、リゾートゲスト料金でプレーできる。また、午前11時30分以降のスタートならミッドデイ(日中)スペシャル、午後2時からはトワイライト料金等があるので、上手に利用すればかなりリーズナブルな料金でプレーを楽しめる。また、夏季限定（7月～8月）だが、17歳以下の子ども同伴の場合、午後3時30分以降なら9ホール限定でプレーできるお得なファミリー料金（大人50米ドル、ジュニア25米ドル）も設定されている。このほか時間に関係なくジュニア料金（50米ドル）が適用されるので、家族でのゴルフバケーションには最適だ。また、2回以上プレーをする場合は、2回分から～4回分がセットになっている各パッケージも販売されているので利用するとよい。

ダイナミックな自然の景観を採り入れたマウナラニのコース

　また、ビッグ・アイランド（ハワイ島）の西側は、ハワイ諸島の中では年間を通して雨の少ない島なので、その分夏の間は日差しも強くなる。芝生からの照り返しの光は想像以上に強いので日焼け対策は欠かせない。この時期ほとんどのゴルフコースは午前7時前からスタートできるため、日差しが強くなる前の早朝にスタートすれば昼前には終わる。プレー後、コース内のレストランでゆったりブランチを楽しむのもよい。キングコースには、ロサンゼルスタイムスに「20米ドル以下で美味しいものが食べられるレストラン」のカテゴリーでトップ20に選ばれた「キングスグリル」がある。プレー後にゴルフコースを眺めながら、帰りの時間を気にせずに仲間とその日のゴルフを語り合うのも、ゴルフリゾート滞在ならではの贅沢である。

子どものコースデビューにも最適のマウナラニ

マウナラニのプロショップダイナミックな自然の景観を採り入れたマウナラニのコース

　次に紹介するのは、ワイコロアのすぐ北隣にあるマウナラニリゾート。リゾート内にはノースコースとサウスコースの2つのチャンピオンシップコースがあるが、サウスコースの15番ホール、海越えのパー3はハワイを訪れるゴルファーなら一度はプレーしてみたい、と望む名物ホールだ。とはいえ、コース全体のレイアウトに関しては、サウスコースよりノースコースを好むゴルファーも少なくない。料金はビジターが265米ドル、リゾートゲストは165米ドルだが、ワイコロア同様、ミッドデイスペシャルや午後2時からのトワイライトなどもあり、時間をずらせばかなり手頃な値段でプレーができる。

　マウナラニで注目したいのはジュニア向けのケイキゴルフコースだ。ケイキとはハワイ語で子供という意味で、チャンピオンシップコースに出るにはまだ早すぎる、という18歳以下のジュニアのために25米ドルでアプローチとパターの練習ができる9ホールコースが設けられている。同伴の大人も35米ドルで練習できるので、子どものコースデビューには絶好の場所といえるだろう。

ハワイの中でも常時、トップクラスの人気を誇るマウナケア

海越えで人気のマウナケア・ゴルフコースの3番ホール

　コハラ・コースト最北端にあるマウナケア・ビーチ・リゾートにも、ゴルファーには見逃せない36ホールのゴルフコースがある。リゾート内にあるマウナケア・ビーチ・ホテルとマウナケア・ゴルフコースは2007年後半に大々的に修復および改装工事に着手し、ゴルフコースは2008年11月に再オープンしている。リノベーションはオリジナルのデザイナーであるロバート・トレント・ジョーンズSr．の息子、リース・ジョーンズが担当。既存のレイアウトは変えずに、新種の芝を取り入れ、バンカーの手直しやボールをホールドしにくかったグリーンの表面を平らにするなど、プレーヤーにとって馴染みやすいコースとして生まれ変わらせている。

全米屈指のビーチでのリゾート体験も

　マウナケア・ゴルフコースはハワイでは常時、プレーしてみたいコース、再挑戦してみたいコースとしてトップに挙げられる人気コースのひとつである。リゾートゲスト料金は225米ドル、一方近接するハプナ・ゴルフコースの料金は125米ドル（ゲスト、ビジター共通）である。さらに午前11時からのAMトワイライト料金、午後1時30分からのトワイライト料金、ジュニア料金などの設定もある。リゾート内だけでゆっくりとゴルフを、という人には2つのコースを組み合わせた3日間のパッケージ（299米ドル）も利用する価値があるだろう。

　ハプナ・ゴルフコースは、コハラ・コーストの絶景を背景に、アーノルド・パーマーがデザインしたチャレンジングなコースだ。マウナケア・ゴルフコースとはまったくタイプの異なるコースなので、こちらもぜひトライしてみたい。リゾート内にはハワイでも最高に美しいビーチのひとつと賞賛されているビーチがあり、ラウンド終了後は砂浜に寝そべってビーチリゾート気分を十分に満喫するのもよい。

　ちなみに、リゾートには泊まらないがリゾートコースで気軽にプレーしてみたい人には、ハワイゴルフディールズが販売するハワイゴルフカードというものがある。このカードは、プログラムに参加しているコースでプレーをすると通常のビジター料金が40％から50％割引になるもの。ビッグ・アイランド（ハワイ島）ではワイコロア・ビーチ・リゾートとマウナケア・ゴルフコースのほかに、カイルア・コナにあるコナカントリークラブの2つのコースを含む9コースがプログラムに参加している。カードは1枚59.95米ドルで、事前に日本で申し込むことが可能だ。

　一見贅沢なリゾートゴルフバケーションも、パッケージやディスカウント料金をうまく利用すれば、手頃な価格で心ゆくまでプレーを楽しめるはずだ。貴重な休暇を100％有意義に使い、思い出に残るゴルフバケーションを提案してほしい。

　牧草地が広がるアイルランドは「緑の島」と称され、国のカラーも緑色。「自然」テーマは得意分野といえる。森林は少ないが、200メートルの崖が壮観なモハーの断崖や風光明媚なコネマラ国立公園でのトレッキング、ごつごつとした石の平原が広がるバレンなどアイルランド独特の自然景観があり、ダイナミックな自然体験ができる。それだけでなく、国立のウォーキングルートがところどころに設定されており、ガイドなしでも気軽に散策することが可能。ルート内にはコース案内があり、迷子にもなりにくいので安心だ。

景色は変わり、森の中へ

　今回はアイルランド中部、スリーブブルーム山のウォーキングルートを歩いた。ふもとのカダムスタウン村を起点とし、茶色い水が流れるシルバー川に沿って8キロメートルのループコースで、レベルは「easy」。牧場、せせらぎの森、植林、そしてまた牧場で羊や牛を横目にと次々に景色が変わるが、ところどころに案内板が設置されており、ルートに沿って番号がふってあるのでわかりやすい。滝などのビューポイントや見どころの説明もあり、なかなか親切だ。

緑の牧場に“遺跡”はアイルランドでよくみかける風景

　アイルランドではよくある風景だが、牧場の中にぽつんと石造りの朽ちた建物があることがある。このウォーキングルートでもかなり古そうな“遺跡”があり、その詳細はわからないものの、教会遺跡だろうか、それともただの物置だろうかと想像を巡らせるのが楽しい。

　ルートの説明には目安として「1時間半から2時間」とあったが、実際には3時間以上もかかってじっくり楽しんだ。こうした気軽なウォーキングルートならアイルランド中にあり、ダブリン近郊のような都市圏でも楽しめるという。地味だがアイルランドの原風景に触れることができるので、ぜひともツアーに盛り込みたい。

独特な景観のジャイアンツコーズウェイ
「世界遺産」を中心にツアー造成を

コースタルドライブ経由ならデリーまでの道すがら“不落の城”ダンルース城が見える

　アイルランドの世界遺産は全部で3つある。スケリッグマイケル、ニューグレンジ、そしてジャイアンツコーズウェイだ。宗教遺跡、古代墳墓、自然景観とそれぞれ違う素材であり、互いに場所も離れている。すべて巡る周遊プランを造成するのもいいが、世界遺産をハイライトに近郊のエリアを周遊すればバラエティに富んだツアーを揃えることができそうだ。中でも北アイルランドに位置するジャイアンツコーズウェイは、ベルファストやロンドンデリーなど魅力的な都市を拠点に要領よく、アイルランドらしい観光旅行の造成が可能だ。

駐車場から徒歩10分でジャイアンツコーズウェイに着く。自然の不思議を目の当りに

　ジャイアンツコーズウェイは火山活動によってできた6角形の石柱がびっしりと海に向かって敷き詰められた、不思議な景観で知られる。ロンドンデリーからは車で約1時間半、ベルファストからも2時間ほどで来られる距離だ。どちらもコースタル・ドライブ（湾岸道路）を通ってくれば車窓の景色も美しく、楽しめることはうけあいだ。

老舗オールドブッシュミルズの工場は今でも稼働中

　ジャイアンツコーズウェイまで行ったなら、ぜひとも寄りたいのが車で15分程度の距離にあるブッシュミルズ蒸留所だ。数あるアイリッシュウィスキーの中でも最も歴史が古く、1608年にはライセンスをとってウィスキー販売を始めていた老舗のウィスキー工場である。近くにはブッシュミルズ・インという古いB＆Bもあり、このあたりで一泊するのもよさそうだ。

デリー観光は地元出身のガイドを。名物ガイドのマーティン・マックロッサン氏

　アイルランドで一番古い都市といわれるロンドンデリーは、ベルファストとともに複雑な歴史に翻弄されたことでも知られ、17世紀に築かれた城壁が特徴。その歴史を知るには、まずタワー博物館を訪れるのがいい。ロンドンデリーはその名からも推測できるように英国とアイルランドの長い確執を象徴する町だが、その理由や変遷がよくわかり、アイルランドへの親しみがぐっと強くなることは間違いない。

　観光のハイライトは城壁のツアー。地元出身のガイドとともに歩けばその悲しい歴史と平和までの道のりを情感たっぷりに話して聞かせてくれる。また、城壁内にある「デリークラフトビレッジ」は、カフェやレストラン、小さなクラフトショップが集中し、街並みもかわいらしいので女性のFITにもおすすめ。アイルランド最古のデパートで180年の歴史があるオースティンズ、シティホールなど、自由時間を設けてゆっくり見てまわるプランもよさそうだ。