「MICEとは?」⑬「Communicationを高める力~発信する力」
今回はMICEビジネスを構成する2つのプレーヤー(ミーティング・プランナー
vs サプライヤー)のサプライヤーの「発信力」について考えてみたいと思います。
ホテル、コンファレンス施設、コンベンションセンター、宴会場と言ったMICEサプライヤーにとって一番大切な「力」は「発信力」と考えて良いでしょう。ITが発達し、
コミュニケーションツールとしてのインターネットの発達は、ますます急速に世界へフラット化を進行していくことでしょう。そして距離や時間をどんどん狭め、地球の裏側で起こった事も瞬時に知ることが可能です。ビジネスのスピードも過去に比べ、倍は言うには及ばす、時には4倍くらいのスピードで進んでいくことでしょう。
一番のメリットはマス・メディアに頼らず、しっかりとした仕組みを創れば、顧客に対し安価な発信が可能だということです。
このようなフラット化する世界でのMICEのキーワードは「先行・独自・区別」で、これらを圧縮して発信する必要があります。
ミクロとしてのそれぞれのMICEサプライヤーの施設、プロダクト、サービスなどは言うには及ばず、それらが存在しているマクロとしてのデスティネーションも圧縮して継続して発信する力が必要です。
例えばシンガポールの「Uniquely Singapore」、韓国の「Sparkling Korea」、マレーシアの「Truly Asia」のように、「核となる言葉」はそれぞれのデスティネーションのVISIONを統一する力を持っています。案外、外の世界の人達は、そのデスティネーションのことなど理解していないのが現状です。
また、一般の人達には魅力的なことも、現地の人達には案外当たりまえ過ぎて、リソースとして考えていないモノ・コトが多く存在します。残念ながら2バイトである日本語は、シンガポールのように公用語が1バイトの英語ではないので、カット&ペーストで、十分に日本の情報がグローバルに行き届かないことが競争力を弱めていると考えられます。確かに我が国ではシンガポールのようなMICE先進国と比べると、MICEという言葉自体の認識もされていませんが、全てのコラテラル(ブローシュア、パンフレット、WEB、DVD等)にMICEを盛り込んだり、それぞれのMeeting、 Incentive、Convention、Exhibitionなどのタームをどんどん盛り込んで行く必要性があると感じています。
全て「MICEは目的を持つ」が原則ですので、MICEサプライヤーはMeeting Planner=MP(主催者)のベネフィットを良く理解し、どうやってMICE主催者の課題を解決出来るのか、自分の強みは何なのかなどを圧縮してメッセージを創る必要があります。
ひとつの好例が最近、会議等を増設した東京の郊外にあるビジネスホテルです。
会議施設として10年以上の経験の蓄積により、箱ものと言うよりも、知恵と工夫が集大成された快適なミーティング・ベニューとなっています。
会議室もパーティションで何十通りに区切れるようになり、多様なサイズが提供可能で、壁も全てマグネットが組み込まれ、どこにでも模造紙が掲示可能です。さまざまな国からの参加者を想定し、ソケットやコネクターも多様なものを用意しています。最近米国では一般的になったCMP( Complete Meeting Package)などのAll-In-Oneのミーティング・パッケージも最初に取り入れました。これは主催者の準備の時間を飛躍的に短縮します。チェックインから24時間、3食、コーヒーブレイク、ミーティング・ルーム、備品、そして宿泊などが含まれています。つまりこのビジネスホテルは継続してMICEの(M)に焦点を当てて研修・会議を「発信」してきた訳です。
ホテルの客室、F&B、バンケット・ルームを販売しているのではなく、会議・研修としてのベニューの「発信力」で、結果として部屋、F&B、バンケット・ルームが売れていると言うことになります。
MICEサプライヤーは外部の有識者などの意見や、MICE顧客が発生する「発地」の意見を十分にリサーチし、「先行・独自・区別」を圧縮し発信することで、それを継続するアクション・プランを描くことは、ますます必要となるでしょう。
筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長
プロフィール
東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。