市場動向

「MICEとは?」⑫「Communicationを高める力~聴く力」


MICE 第1回で解説しましたように全てのMICEに共通する基本には、下記の項目が挙げられます。


(1)目的を持つ
(2)コミュニケーションの機会・場
(3)情報が集まる機会・場
(4)変化ももたらす



 その中でも人と人をコネクトする、ビジネスとビジネスをコネクトする、思想と思想をコネクトする等を最大限に完成させる為に、ミーティング・プランナーはコミュニケーションを科学的に考える必要があります。


 MICE顧客(主催者)のイメージしているMICEを獲得・創出するために一番大切なのが「聴く力(ヒアリング能力)」です。ミーティング・プランナーの仕事は、MICEイベントの達成したいゴールを明確にすることから始まります。「聴く」は「ただ聞いている事」ではなく、科学的に「こちらが聴きたい事」を「相手に語らせる」という目的を持って臨む必要があります。「聴く事」はMICE顧客に「効く」提案やMICEの企画を創出する原点です。聴くと言うのは対面的なコミュニケーションに関わらず、そのMICEを形成する全ての関係者へのヒアリングや、過去の参加者などからのリサーチも含まれます。


 どのようにMICE顧客から効率的に話しを聴きだすかと言う前に、下記の2つの例はミーティング・プランナーが「聴く」と言う事に関して、考え直す良い機会を与えてくれます。


MICE ●私の顧客の殆どは一流企業のトップです。常に相手に90%、私が10%ぐらいのコミュニケーションを心がけています。面談が終わり、辞去する時に必ず相手は「今日はいろいろためになる事を沢山お聞きした。」と言ってくれるのです。(ある一流コンサルタントの談話より)




●「相手の言う事にコメントを挟まず、ただ頷くだけで相手の問題を語らせて事を続ける。そうした状態を続けていると、相手は自分で問題解決を整理し、語り始める。」(実践コーチング MPI Japan会員)


 書店には多くの書籍が並び、その中には「ヒアリングの大切さ」あるいは「ヒアリング・スキル」が含まれている章が多く、上記の2つの例は「本当だろうか?」と思ったミーティング・プランナーの皆さんは多いと思います。MICEは目的をもった人達の集まりです。


 その成功のロードマップを書くには「コミュニケーション・スキル」「ネゴシエーション・スキル」「ファシリテーション・スキル」「プレゼンテーション・スキル」「リーダーシップ」などの多岐に渡る「ヒューマン・スキル」が求められます。そしてこれらの多岐に渡るスキルの基本となるのは「聴くこと」、「質問する」、「話すこと」なのです。 

「聴く」ことを常に意識してこそ、ビジネス獲得に必要な精度の高い「仮説」を構築する事が可能となるのです。「聴く」ことに関して「これで良い」「これで充分である」と言う事はないのです。


 実際にMICEが開催されるベニューであるホテル、コンベンション・センター、コンファレンス・センターなどのMICEサプライヤーとのコミュニケーションは、シームレスな運営、不測の事態の回避、バランスの良いスケジュール、つまりは精度の高いMICEのロードマップを描くのに最も不可欠な要素の一つです。特にサプライヤーの皆さんの多くが「箱貸し」「スペース貸し」と言った対応より一歩脱却して、ミーティング・プランナーを支援し、それぞれのMICEがどのようなアウト・プット(成果)をゴールとしているのか必ず質問をして明確にする必要があります。


 サプライヤーの多くが(1)日にち(2)スペース(3)プライス(価格)の3点セットの対応から、MICE顧客とミーティング・プランナーが目指している成果をフォーカスすることにより、「箱貸し」より「提案型」の対応で収益やイールドを上げることも可能となります。



 全てのMICEの成功はコミュニケーション、そして聴く事から開始されます。神様が人間に口が一つ、耳を二つ与えてくれたことは、最低限話す事より2倍は聴く必要があると言うことを自然に教えてくれているのかも知れませんね。

筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長

プロフィール
MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。