「MICEとは?」⑨「MICEを計画する~サイトとベニューの選択」
前回、「MICEのGOALを明確にする」の項で、実はMICEのそれぞれのセグメントである「Meeting, Incentive, Convention, Exhibition」は最初から決定しているのではなく、法人や組織が抱える課題を解決するための手段として、そのGOALに合ったMICEを選択することが前提である、ということを解説しました。
東京モーターショーなどのように定期的なものをはじめ、毎年開催されている国際会議が数多くある中で、MICEは経済、経営、社会の変化により、それらにフィットした形で計画されるようになってきました。さらに、それぞれのMICEに関わる予算と成果との関係=ROIを計測することも大切なことです。また、ミーティングを例に取れば、セミナー、ワークショップ、シンポジウム、パネルディスカッションなどのミーティング・フォーマットの中から、最も効率のよいフォーマットを選択する必要があります。MICEの原則である(1)目的 (2)コミュニケーションの場や機会 (3)情報が集まる場や機会 (4)アウトプット(成果あるいは変化)を考え、サイトを選択する必要があるのです。
◆サイトとべニューの選択のために必要な条件とは?
ここで一番フォーカスしなければならないのは、どのデスティネーション、また、施設・ベニュー(会場)がその目的を達成するのに一番適しているのか、十分に時間をかけて選択することと言えるでしょう。以下、サイト選択のための一般的なヒントをご紹介します。
<サイト・ベニュー選択の一般的なヒント>
(1)目的、目標を成功に導くのに最適なサイト・ベニューであるか?
(2)主催者の組織文化やポリシーにあっているか?
(3)そのサイト・ベニューは予算に見合っているか?
(4)主催者、参加者双方にフィットしているか?
(5)MICEのアジェンダを全て効率良く運営するために適しているか?
(6)サイト、施設の対応能力や運営マニュアルは柔軟か?
(7)そのサイト・ベニューへの交通手段(アクセス)は良いか?
― 移動費(航空運賃、鉄道運賃、バス運賃)などはどうか?
― 十分に参加者を運べるキャパシティがあるか?
― 空港や最寄りの駅からの距離はどうか?
(8)オンサイトではどのようなアクティビティが可能か?
(9)近隣にアトラクションの施設、レストラン、バーなどが充実しているか?営業日や営業時間はどうか?
(10)魅力あるショッピングのエリアが近くにあるか?
サイト・ベニューの選択は、MICEを計画していく中でも最も重要なことの一つです。特に、初めてのサイト・ベニューでMICEを開催する時には、十分な時間をかけ、綿密に計画を練る必要があります。
◆MICEの成功にはさまざまなネットワーキングが不可欠
米国ではプロフェッショナルなMeeting Planner(MP)が企業の内外に存在しています。組織内に自前のMPが存在しない場合、アウトソーシングを行ってこれらの経験あるプロを活用することは時間をセーブするという意味だけではなく、効果をあげるMICEを計画するための非常に良いオプションとなります。
また、それぞれのデスティネーションにはDMC (Destination Management Company)が多数存在しており、そのデスティネーションを知り尽くした上で、それぞれのMICEに応じた提案、計画、運営までを支援してくれるので、現在ではこれらのDMCを利用する機会も多くなっています。
さらに大規模なMICEになると、コンベンション・ビューローや政府観光局などの支援組織の力を借りる必要があるということは言うまでもありません。アフターコンベンション時の街の区画の貸し切りや、特別にユニークなベニューでのプログラムの開催には、これらの組織が行政との橋渡しを担ってくれます。最近ではオンラインでデスティネーションの調査や、サイト・ベニューのセレクションをサポートしてくれる会社も増えてきました。引き出しを多く持つことは、アウトプット(成果)を向上させるために非常に大切なことです。
サイト・ベニューの選択でも、いかに多くのプロフェッショナルな人材やシステムとネットワーキングができているのかが、もはや不可欠な要素となっています。
筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長
プロフィール
東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。