「MICEとは?」⑧「MICEの計画は、まずゴールを明確にすること」
いかなるMICEにも共通して言えるのは、「Goal」を持つということに他なりません。
どちらかというと一過性の「出来事」に近いような多くのイベントとMICEとの最も大きな違いは、この明確なGoal=目的を持っているかということです。端的に言えば、MICEは「主催目的」があるということに尽きるでしょう。
◆MICEの「Goal=目的」の重要性
MICEにおいては、一人または複数の人達がある明確な目的を持ち、アウトプット(成果)を上げるということが原則です。米国では、日本流に言えば「猿でも分かる○○○」というようなMICE Planningの入門書も出版されています。それらの入門書から高度な計画ガイドブックまで、すべてに共通で一貫しているのは最初に必ず「Goal=目的」の重要性が述べられていることです。
それではMICEの「目的」とはどんなものでしょうか?MICEは企業や組織の課題を解決するために開催されるものである、と考えると分かりやすくなります。「数値的な売り上げを伸ばす」「顧客サービスの質を高める」「従業員の満足度を高める」「組織の長期的ビジョンを説明する」「経営状態を説明する」「新しい商品を告知する」「長期戦略を決定する」「従業員の質を高める」…など枚挙に暇がありません。
MICEは実は「Meeting, Incentive, Convention, Exhibition」 と最初から決定しているのではなく、企業や組織がその課題を解決するために、どのフォーマットを採択したらよいのかという選択から始めることが、その本来の姿であると考えられます。
◆MICEのGoal決定までのプロセス
以下、MICEを計画するMeeting Plannerが、一般的なGoalを決定するまでのプロセスを参考としてご紹介します。
(1)MICEの背景にある情報をリサーチ、分析する
a.過去のMICEの分析
主催者の組織の機能や、組織文化に関わる情報を入手します。特に、組織の変化や過去に開催したMICEの情報を可能な限り収集します。過去の参加者のプロファイルや予算なども含まれます。何に重きを置き、何を主催者が期待しているのかを明確にしていきます。
b.トレンドや価格の動向を把握
c.価格やニーズを決定
主催者のニーズ、参加者の期待、スポンサーがある場合はスポンサーの期待などを決定します。さらに必要なコンセプトにプライオリティをつけます。
d.主催者の組織のポリシーを確認
(2)主催者のMICEのGoalを決定する
a.MICEの目的を決定
MICEを開催する目的を特定します。(例:教育、研修、モチベーション、インセンティブ、財務、新商品
の発表等) さらに、達成すべき目標を明確にします。
b.Goalと目標を記録
そのMICEはどのように評価されるのか、計測が可能か、全ての関係者が理解しやすいように記録を行います。
c.決定事項とGoalの整合
決定事項とGoal=目標が整合しているのかを常に確認します。
テーマ、演出、エンターテインメント、プログラムなどがGoalと調和しているかを確認します。
d.MICEのフォーマットを決定
Goalに最も適したフォーマットを選択します。(例:コンファレンス、コンベンション、コングレス、シンポジウム、セミナー、ワークショップ、インセンティブ、展示会等)
e.プロファイル
参加者の詳細を検討します。(例:年齢、性別、収入、職業、部署、興味等)
(3)言語や文化の問題を確認
海外での開催の場合の言語、文化、国際会議などではオフィシャル言語、その他、政治、宗教、カルチュアル・センシティビティなどの確認を行います。
(4)主催者のポリシーの再確認
コンプライアンス、CSRなどのポリシー、それに対する関心や責任の確認と開催地、会場がそれに適しているかを検証します。
筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長
プロフィール
東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。