「MICEとは?」⑤ 「ROI(対費用効果)の明確化が求められる時代」
世界的なコンサルティング会社であるAberdeen Groupの最近のリポートによるとMICEに関わる支出が、大企業の収入の3%近くを占めると言われています。
MICEに関してのROI(対費用効果)は、今や大手企業の大きな問題となっています。
MICEにおけるROIの概念は、そのMICEに関わるStakeholders(利害関係者)に関しの価値をどのように計測していくのかというプロセスを意味します。MICEに関して一番大切なことは目的を明確にするということであることは先述しましたが、その目的をいかに達成出来たか、目指したアウトプット(成果物)を獲得出来たかが拠り所となることはいうまでもありません。
◆目的と目標を明確にする中でROIを評価
総てのMICEには、予算があって、財務的な観点で予算と実際の支出とのバランスにおいてプラスであったのかマイナスであったのかの評価はボトム・ラインでありますが、実際の成果は上がったのか、そうでなかったのかが一番大切なことなのです。
ROIの評価を可能とするためには、GOAL(目的)とOBJECTIVE(目標)を明確にすることが最初の一歩です。私達はともすると目的と目標を混同してしまう傾向があります。目的はそのMICEの意図する大きな意図であり、目標は明確で計測可能なアクションです。
例えばあるMICEのゴールは,「参加者に来年度に市場に投入される新しい商品に関して充分な理解をして貰う」であったなら目標は「参加した後に参加者は(1)商品の特徴を説明出来る。(2)商品の競合は何であるか説明出来る。(3)それぞれの販売ノルマを理解す、となります。ROIを明確にするためにも、計画の最初にそのMICEの目的と目標を書き留めることが一番大切なのです。
ROIの評価は勿論それぞれのMICEにより違いますが、一般的には以下が挙げられます。
◆ROIの評価項目
そのMICEの目的と目標を達成したか?
プログラムのクオリティと中身は目標と目的と整合していたか?
参加者の理解度は?
参加者の満足度は?
デスティネーションは最適であったか?
リピートするMICEであるのならば、次回も参加したいと思うか?
施設-ミーティング・スペース、パブリック・エリア、客室、リクリエーショナルはどうであったか?
スピーカーの質は?
エンターテイナーは?
F&Bの質は?
オーディオビジュアルの品質は?
ハンド・アウト等のマテリアルは最適であったか?
輸送(アクセス、地上輸送、航空輸送など)はスムースであったか?
◆ROIの計測方法
ROIを明確にするためにも、評価表を開催中、開催後に準備することは必要です。
ARS(Audience Response System)は米国では良く見られるケースです。例えばセッションの終了後に、そのスピーカーへの満足度の評価、そのセッションの理解度の踏査を直ちに デスクに備えられたキーボードで集計してしまうやり方です。いかにもITが発達し、スピードを重んじる米国らしい方法ですね。スピーカーなどもオーディエンスの評価によりギャラが上がったり下がったりすると聞いています。もちろんMICEイベントの終了までにアンケートに記入してもらったり、終了後WEBなどで参加者にアンケート調査を実施するということも盛んです。
「計測出来ないことは結果を出せない。」と言われているように、今後企業の支出の大きな割合を占めるMICEのROIを明確にする必要は益々必要な時代となりそうです。
筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長
プロフィール
東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。