市場動向

「MICEとは?」④ 「精度の高いMICEを考える~ 3つのキーワード」

MICEMeeting, Incentive, Convention, Exhibitionと広範なミーティングビジネスを扱うMICEを分かりやすく表現するために、私は時々「MICEは経済、経営、社会、文化、歴史を映す鏡」と使います。つまりMICEはその時代時代のモノ・コトを織り込んだタペストリーのようなものだと考えると理解しやすいかも知れません。

MICEのそれぞれの計画・運営には基本としてのフォーマットはありますが、「鏡」を理解し、積極的にトレンドを取り込まないことにはマンネリ化したり、活力のないMICEとなってしまうことが多いのです。今回は3つのキーワードを中心に現在と未来のMICEの精度を高めることを中心に皆さんと考えてみたいと思います。

 

◆一つ目のキーワード「World Is Flat」

最初に、昨年世界的にベストセラーとなった「World Is Flat(邦題:フラット化する世界=トーマス・フリードマン著)」からは「アップロード」と言うキーワードをMICEに則して考えて見ます。

「アップロード」の反対の言葉は勿論「ダウンロード」です。「ダウンロード」で最初に頭に浮かぶのが、我が国の教育です。

画一した人間を作るような仕組みで、知識とテクニックなどをただダウンロードしてきたのが、我が国の教育とはいえないでしょうか。

MICEで言えば、そのコンテンツとしての講演会やレクチャーなどがこれに該当します。 つまり参加者や聴衆が一方的に何かをダウンロードされている機会・場といった状況です。これに反して「アップロード」とは参加者の考え、思い、感情などを発散したり引き出したりする機会・場を創ると言うことを考えることです。

あるいは参加者の望んでいるモノ・コトをアップロードしたプログラムを準備することがこれに当たります。(M)のミーティングで言えば、一方的な講義形式のスタイルよりも、インターアクティブなワークショップを増やす工夫、(I)のインセンティブであるならモチベーションを高める機会としてのチーム・ビルディングなどの導入、(C)のコンベンションであるならネットワーキングの機会を随所に導入する工夫、(E)の展示会などは展示と併設してその業界の興味ある学習の機会を展示者、参加者の双方に提供するなどが考えられます。MICEの大切な考え方のひとつは「コミュニケーションの場・機会」であるということを意識し、コミュニケーションの基本である、「共有」「共感」を常に考えてアップロードを演出することはMICEの精度を高めるキーのひとつだと考えます。

 

◆二つ目のキーワード「PEOPLE=人間」

MICE二つ目のキーワードはずばり「PEOPLE=人間」そのものに他なりません。2006年の経済同友会の調査によると2050年には日本の人口が25%も減少するとの予測がありました。単純に考えても日本の人口が2,500万人近く減少することを意味します。 さらに人口の年齢構成のピラミッドを見れば、圧倒的に若い年齢層は減少して、高齢者が多い未来となります。

前述の「鏡」の思考で考えるならば、「MICE」もこの傾とシンクロして今後変化をして行くことが必定です。経済と言う視点から見れば、消費が25%減少することを意味し、あるいは現在と同じ経済力を維持するとするためには25%の労働力をどこかから補填する必要があることを意味します。必然的に単一民族で、金太郎飴的な思考は通用しなくなるはずです。組織も他民族・多国籍の環境を実現しない限りはその継続も危ぶまれる未来になると想像が出来ます。この大変化が予測される我が国の未来を良い方向へ向かわすエンジンの役割をするのがMICE役目だと考えられます。「ミーティング」であるならば多国籍の環境で企業・組織のベクトルをひとつにする。「インセンティブ」であるならばさらにモチベーションを高め、少なくなった人口を補う生産性を高める。「コンベンション」であるならば各地域における魅力ある産業の創造、展示会では今までの工業社会ではなく精神的なコトを中心としたテーマが中心となって行くと思います。

 

◆三つ目のキーワード「BLUE&GREEN」

MICE三つ目のキーワードは「BLUE&GREEN」です。世界中で「Green Meeting」の必要性が叫ばれるようになりました。環境問題は地球上に住む我々一人一人が避けて通れない問題となりました。今後「環境」を強く意識して計画と運営をして行くことが必要です。米国とアジアにリゾートを含む多くのMICEの施設を運営しているBenchmark Hospitality International’sが最近発表した"2008 Top Ten Meeting Trends"によるとこの1年でMICE顧客よりの「環境に対する問い合わせ」が飛躍的に増加したことを一番に挙げています。特に製薬、医療、政府から多くなっていることが報告されています。

MICEの会期中は、ミーティング・ルームには各自がラップ・トップを持ち込む、事前のアジェンダなどもWEBよりダウンロードして紙を極力出さない努力がされるようになりました。

MICEのテーマも勿論「環境」を中心としたものが多くなってくるのは当然ですが、それぞれのMICEに「環境に対する配慮」を盛り込む「Green Meeting」の考え方は法人MICE顧客の関心も高まり、今後の全てのMICEの精度を増すキーワードとなるでしょう。

Ocean Blue Foundationより身近にGreen Meetingを実現する「10のヒント」が下記URLで公開されています。是非参考にして下さい。

http://www.bluegreenmeetings.org/

筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長

プロフィール
MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。