回復の兆しと新たな脅威への対応-通訳案内士のインバウンド考・第7回
東日本大震災後、初のコラムです。なぜ今まで書けていなかったかというと、インバウンドの関係者なら誰しもが経験したように、通訳案内士にも震災、原発の影響が直撃したためガイド業務がなく、正直なところネタがなかったのです。逆に言うと、このコラムが復活したのは……そう、少しずつではありますが、お客様が戻ってきたからなのです!ガイドの主観にはなりますが、今回は私が現場で感じているインバウンド復活の兆しや旅行の傾向について書きたいと思います。
ブッキング復活は今秋、欧米系FITから
多くのガイドやインバウンド関連の旅行業界関係者の例に違わず、私も震災後、それまで入っていたお仕事のブッキングが100%キャンセルになりました。私は英語の通訳案内士で仕事の拠点は関東ですが、お客様の旅行先にあわせて関西や九州でもガイドをしています。震災後にガイド業務を承ったのは5月のことでしたが、知り合いの親戚のイギリス人カップルのガイドで、ごく個人的なお仕事でした。なので、2ヶ月ぶりの仕事でしたが「ようやく戻ってきた!」というより「本格的にお仕事がもらえるのはいつになるのだろう」と後ろ向きな気持ちで、先が全く見えない状態でした。
それ以降、8月まで全く動きがなかったものの、秋の観光シーズンに入ってからは少しずつお仕事をいただけるようになりました。ほかのガイド仲間も例年ほどではないまでも、秋は稼働日が増えてきたようで、10月の前半には某旅行会社から「ガイドがいなくて困った!助けて!」という声も聞かれたほどです。このうれしい悲鳴、私は「これぞ回復の兆しだなぁ」という旅行会社さんの言葉にホクホクと喜んでいました。
しかし、私の場合はブッキングの傾向が例年と様子が異なっています。震災後にFITを専門で取り扱う旅行会社とお取り引きを始めたのですが、今秋のブッキングのほとんどがその会社経由。従来は団体旅行が仕事の8割だったのですが、今年は空港送迎を含めても、FITの半分以下です。私のような極端な例でなくても、今までグループを扱うことが多かった欧米系言語ガイドの仲間がFITのお仕事を受けたという話を聞くことが増えました。
国・地域別でいうと、英語ガイドの私がこの秋にご一緒させていただいたのは欧米系ばかり。数少ない団体旅行でも同じでした。英語ガイドは確かに欧米系の旅行者のガイドがメインですが、実はタイや中東からのお客様も承っていました。それが現在、ゼロになってしまったのです。実は10月上旬にタイの富裕層FITの予約の話が来たものの、その時は「原発問題が不安」という理由で直前にキャンセルとなってしまいました。近い地域のほうが情報が伝わりやすく、戻りも早いのかと思っていたのですが…。
ただ、私にはお仕事のお話が来ないものの、9月に箱根で欧米系のお客様のガイドをしていた時に、東南アジア方面からの大人数のグループを見かけました。その時の芦ノ湖クルーズの様子は、半分が日本人、残り半分弱が東南アジアからの団体客、そして欧米系のFITがちらほら見られるという具合。欧米系はFIT、アジア系は団体、という傾向で復活しているのでしょうか。データがあれば是非傾向を知りたいところですが、個人的な感覚としてはそのような気がしています。