五輪や羽田枠拡大で飛躍、出国2000万人達成後は-年頭所感(1)

昨年に大阪で開催された「ツーリズムEXPOジャパン」の賑わい  令和の時代に入り初めて新年を迎えた2020年は、春に羽田の発着枠が拡大されて首都圏からの国際線ネットワークが大幅に拡充し、夏にはいよいよ東京オリンピック・パラリンピック大会が開催される。また、政府目標である年間訪日外国人旅行者数4000万人・出国者数2000万人の達成期限となる節目の年でもあり、旅行・観光関連業界のトップによる年頭所感は、いずれも例年に増して飛躍に向けた意気込みが感じられるものとなった。今年も業界団体や大手旅行会社、航空会社、観光庁などの年頭所感の要旨を紹介する。

※旅行会社と航空会社の掲載順は19年度上期の総旅行取扱額順

日本旅行業協会(JATA)会長 田川博己氏

 2019年の海外旅行は、2000万人の大台達成のレベルまで伸びた。インバウンドの伸長が航空路線拡大につながる相乗効果がもたらした結果と言えるが、双方向交流6000万人という次の高みをめざす環境が整ってきたと考えられる。今年の東京オリンピック・パラリンピックには200を超える国と地域からの参加が予定されており、25年には大阪・関西万博が開催されることから、2020年代は日本の「交流新時代」となるものと予測され、今年はその幕開けとなる。

 全世界の国際観光客数は14億人を突破し、観光市場は成熟化し、体験型への志向を強めるなど旅行の形態も変化を遂げている。さらにデジタルテクノロジーの発達により、情報収集・予約・決済など、旅行の形態もよりパーソナルに、かつ利便性も向上してきている。このような状況のもと「新しい旅のカタチ」を旅行業界が積極的に提案することにより、観光産業界における「ツーリズムの新しいカタチ」の構築を牽引していく。

 観光産業は今や、世界の雇用や経済の1割以上を占める規模となり、その社会的責任は大きい。旅行業界としてもSDGs(国連の掲げる持続可能な開発目標)の達成に対して貢献する所存で、特に近年、猛威を振るっている自然災害からの復興に貢献する。そして相互交流を促進し、国際理解を深めることで平和の実現の後押しをし、来たる「交流新時代」をリードしていきたい。

観光庁長官 田端浩氏

 2018年に訪日外国人旅行者数が初めて3000万人の大台に乗り、昨年は災害や日韓関係悪化などにより対前年比でマイナスとなった時期もあったが、1月から11月までの累計は2.8%増と過去最高で推移した。今年は東京オリンピック・パラリンピックの開催年であると同時に、訪日外国人旅行者数4000万人などの目標達成に向けた総仕上げの1年となるので、「当たり前」の受入環境の整備や、新たな体験型観光コンテンツの開拓などの取り組みをより一層推進する。

 アウトバウンドについては我が国の外交政策の観点からも極めて重要で、昨年1月から11月までの出国日本人数は、前年比6.0%増の1836万8000人と好調に推移した。今年は海外への修学旅行などを通じた青少年交流の一層の拡大に向け、1月を目途に官民連携の協議会を設置する。また、近年の直行便就航都市および運航便数の拡大を受け、旅行業界などと連携しつつ新たなディスティネーションに向けた旅行を促進する。

 観光産業の基幹産業化に向けては深刻化する人材不足の解消が喫緊の課題なので、女性・高齢者や就職氷河期世代の方々なども活躍できる環境を整備する。また、中核人材育成のため、観光産業従事者を対象としたプログラムを実施するなど、生産性向上の推進などを支援する。そのほか、各省庁や団体と連携し、初等中等教育における観光教育なども促進する。これらの重要施策については、昨年1月から徴収が開始された国際観光旅客税による税収も活用する。

日本政府観光局(JNTO)理事長 清野智氏

 今年は56年振りとなるオリンピック、そしてパラリンピックが日本で開催される。日本が世界中から注目を集める好機を一過性のものとして終わらせることなく、訪日客には日本ファンやインフルエンサーになっていただき、多数のメディア露出を通して旅行先としての認知度が高まる取り組みを進め、真の「観光先進国」の実現にむけた礎となるよう努める。

 そのためには日本各地の魅力のさらなる掘り起しが欠かせない。JNTOは新たに、訪日旅行者向けに体験型コンテンツ100件を掲載したパンフレットを作成したが、地域ごとのコンテンツを幅広く発信することで、その土地ならではの多様な魅力を楽しんでいただきたいと思う。このような考えのもと、今年も地域の皆様とのつながりをより一層強固にしていきたい。

 訪日旅行市場で大きなシェアを誇る東アジアへのプロモーションはこれまで同様に重要視する一方、今後は東南アジアや欧米豪市場からの誘客拡大に向けて市場別プロモーションに注力する。また、広州に続いてメキシコとドバイへの新規事務所を設置することにより、現地の業界機関などとネットワークを構築し、日本のプレゼンス向上に努める。

 年間訪日旅行者数4000万人の政府目標の達成と「観光先進国」の実現に向けて、リピーターやこれまで日本に関心を持っていなかった層にも戦略的にアプローチする。加えて、すでに人気のある伝統や文化、食などのコンテンツのみならず、自然やアドベンチャーなどの新しい体験型コンテンツなどについても情報を発信し、全方位型のプロモーションを強化していく。各省庁、自治体、民間企業などの関係者の皆様とはこれまで以上に連携し、オールジャパン体制で取り組みたい。

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