トルコ・エスキシェヒル、新たな観光デスティネーションとして高い潜在力

  • 2019年10月8日

隈研吾氏設計「OMM」もオープン
フリギア渓谷の商品開発で日本人分散化を

町に溶け込む木造建築が印象的なOMM

 トルコの首都アンカラと世界有数の観光都市イスタンブールのほぼ中間にエスキシェヒルという町がある。紀元前10世紀頃にフリギア人によって造られたと言われる古い町で、今では中央アナトリア地方の文化都市として観光でも注目されている。この町に今年9月8日、「オドゥンパザル・モダン・ミュージアム(OMM)」がオープンした。設計は新国立競技場も手がける隈研吾氏と、このプロジェクトでパートナーを務めた隈研吾都市設計事務所の池口由紀氏で、現地では日本とトルコの交流がさらに発展する機会として期待されている。日本に近くなるエスキシェヒルとその周辺地域。観光デスティネーションとしてのその潜在性を探った。

隈氏設計のOMM、新たな日本/トルコの交流の出発点に

OMMのオープニングセレモニーに出席したタバンジャ氏(左)と隈氏

 エスキシェヒルの旧市街オドゥンパザル地区の大通りと昔から残る路地との間に、水平に組み上げられた3層構造の木造の建築が異彩を放つ。日本の伝統家屋の梁を思い起こさせる隈氏らしいデザインだ。モダンな建築だが、意外と周辺との不調和は感じない。この建築物こそOMMで、トルコの建設大手ポリメックスが運営し、創業社長でアートコレクターでもあるエロル・タバンジャ氏がこれまで収集したコンテンポラリーアートのコレクションを展示する。

 オープニングセレモニーに出席した隈氏は、2016年に初めてエスキシェヒルを訪れたときの印象について「日本の山間にある街道沿いの町のような感じを受けた。優しく、懐かしい気分になった」と話し、設計インスピレーションの一旦を明かした。

オープニングのテープカットを行うエルドアン大統領(中央)

 また、オープニングセレモニーには、トルコが国をあげて芸術などの文化活動に力を入れていることからエルドアン大統領も出席し、「OMMの場所として、文化芸術の発信地となっているエスキシェヒルは理想的なところ」と評価。OMM設立に携わった日本人芸術家に謝意を表するとともに、来春には羽田/トルコ線が開設されることにも触れ、「エスキシェヒルが日本人にとって観光デスティネーションとなり、トルコへの日本人観光客が増えることを願う」と述べた。オドゥンパザル歴史地区はユネスコ世界遺産の暫定リストにも登録されているため、その観光の潜在性に大きな期待を寄せる。

OMMの隣にOMM INN、街歩きも楽しいオドゥンパザル

趣のある街並みのオドゥンパザル エスキシェヒルはその昔、木場として栄えた歴史があり、オドゥンパザルもトルコ語で「ウッドマーケット」という意味。そのオドゥンパザル地区は、石畳の路地が入り組んでいて歩いて楽しい場所だ。カラフルな家屋が並び、その脇から猫が顔を出す。レストランやカフェも多く、オープンテラスでは地元の人たちがチャイを飲みながらおしゃべりを楽しんでいた。

OMMと同様にスタイリッシュなデザインのOMM INN

 OMMの隣には今年5月に「OMM INN」がオープンした。OMMのデザインと統一性を持つおしゃれなブティックホテルだ。部屋数は12室で、OMM関連のホテルとあってホテル内にはアート作品も並ぶ。エントランスにはモダンな空間デザインのレストラン&カフェ。エスキシェヒルの最先端スポットとして、トレンドに敏感な地元の若者たちが集まる。

 一方、この地区にはエスキシェヒルの歴史と文化を垣間見られる場所もある。そのひとつが、1525年に創建されたクリュヌル・ジャーミーと呼ばれるモスクで、内部に入るとイスラム文様のドームが美しい。イスタンブールのアヤソフィアやブルーモスクと比べると小規模で荘厳さも劣るが、観光化されていないため、六信五行の教えを守る熱心なイスラム教徒の敬虔さが伝わってくるようだ。

イスラム文様が美しいクリュヌル・ジャーミー

 さらに、このモスクの敷地内には、エスキシェヒルが一大産地である「海泡石」のギャラリーとショップも。白い海泡石は柔らかいため、さまざまなアクセサリーに加工しやすく、その昔はその多孔質性から煙草パイプの材料として重宝されていた。ショップには多彩なアクセサリーが並び、軽く、値段もイスタンブールなどよりもかなり安いため、お土産に喜ばれている。